トーナメント試合4
「つむぎちゃ~ん、お待たせ~~~!」
「陛下、ご一緒できて嬉しいです!」
「ふわぁあああああ!可愛いいいぃぃ!!魔王に今日だけは許されて嬉しいいぃぃぃ!!!」
「ぽんこつ……俺はこうはならない!」
「陛下、ははうえと近い、離れて」
「男どもは可愛くない!!」
とか言いつつも、兄弟としてちゃんとクロム君も身内扱いしてくれるのが彼の優しい所だと思う。
「二人の試合見たよ~~伯父さんがご褒美に刀贈るからね~!つむぎちゃんにいいとこ見せたいし!!!」
動機が不純だけれどまぁいいか。
「今日は親父達の試合だから俺達もここで見ろって」
「そうだね~~~、ここなら結界はってあるしいざとなれば僕が助けると思ってるんじゃない?」
「伯父上よりも俺と兄上の方が強いだろ!!!」
レスターの失礼な台詞に大笑いしながら王席に座る。
昨日までの一般部の試合で残ったのは黒豹のルーファス王子、ルース君と獅子の王様。
リヒト様は前回優勝者らしく決勝戦からの参加。
ユアンさんとクロードさんは対戦相手としてぶつかってしまって、二時間ぶっ通しで戦かって決着がつかなかったので二人とも失格になった。
「今日は誰と誰が戦うことになるんですか?」
「四人いっぺんに戦うよ~~~その方が楽しいでしょ?」
えぇ……楽しいの基準がよく分からない……。
四人とも天馬所有者だけれど、シーラフがまだ小さいため天馬無しで戦うらしい。
レスターとクロム君ががっかりしている。
リヒト様、またユリウス様との戦いみたいになるのかなと不安だったけれど、闘技場でルース君と楽しそうに話してるしリラックスしている感じで安心する。
「リヒト様、大丈夫かな、怪我しないといいけど……」
来る時に移転装置を一度通っているので、ルルリエさんから癒しの力を使うのを禁止されている。
それでもリヒト様が怪我をしたら力を使ってしまうと思う。
「魔王の心配より、他三人の心配した方が良いんじゃないかな~~~。特にあの若い獅子族の王ね」
ガタイのいい、ライオンの尻尾がある赤髪の男の人。
「あの方ですか?ムキムキで、すごく強そうですけど」
「まぁ、魔力量も強さも申し分ないけどね~~」
その時はじまりの銅鑼ドラの音が響き、ルース君がルーファス王子に突っ込んで行った。
刀と剣の攻防に周りに風が起こる。
ルーファス王子はすっごい跳躍で高く飛ぶけれど、ルース君が翼を出して追いかけて行く。
リヒト様はダルそうにそれを見ていて、獅子の王様は二人の隙を狙ってるみたいだった。
二人が鍔迫つばぜり合いをしながら落ちてくる所に獅子の王様が突っ込んで行き、ルーファス王子の背中を切付けた。
ルーファス王子が剣を落として失格となった。
「あのぐらいの傷はすぐ塞がるから気にしないでいいよ~~~つむぎちゃんはここをはなれないようにね」
「は、はい……」
駆けつけて行こうとしたのを先読みされてしまった。
「ははうえ、こわい、ない、みんな、強い」
クロム君が腕の中に来てくれたので、遠慮なく抱きしめて安心をもらう。
レスターもいつのまにか陛下の膝の上にいて、陛下に抱かれている。
「なんでみんなリヒト様には切り掛かっていかないの?」
「主、つよい、みんな、てあわせ、したい」
なるほど、リヒト様と一対一になりたいのか。
リヒト様めっちゃダルそう。
今度はルース君と獅子の王様の対決になる。
ルース君は腰を低く落として右側面に構えてる。
今多分人格変わってるな。
獅子の王様が突っ込んで行くのをルース君も迎えて動く。ルース君が剣技で押しているのは素人でも分かった。
「しゃらくせぇなあぁぁぁ!!!!」
獅子の王が大声で叫び、力技でルース君の刀を抑えてねじこもうとする。
体格差と力の差で押し込まれ、ルース君の足元がどんどん崩れていく。
力負けしたルース君が刀を叩き落とされて失格となった。
「ルースの方が上手かったのに!!!」
レスターが残念がって叫ぶ。
「まぁね~完全な力負けだね~~天馬がいれば勝ってたね~」
闘技場に残ったのはダルそうなリヒト様と、ニヤニヤ笑った獅子の王様。
「あ~やっぱりかぁ。さぁクロムとレスター、風魔法の応用、魔法壁。ちょっと頑張って魔球壁まきゅうへき。我らを取り囲み構築」
一瞬キョトンとした二人がそれでも言うことを聞いて右手をかざすと、私達の周りに半球のドームの様な透明な膜が出来た。
「うーん、これだとちょっとだけ足りないね。伯父さんが助けてあげよう」
そう言ってぱちんと指を鳴らすと、ズシンと重たい分厚いドームが内側に構築された。二人の作った透明の膜とは別物の様な重さと厚みを感じる透明なドーム。
二人とも唖然としている。
闘技場ではリヒト様と獅子の王様が何か話しをしている。
内容までは聞こえないけれど、リヒト様の機嫌がどんどん悪くなるのが見て取れる。
獅子の王様がくるりとこちらに振り返り、闘技場からひたと私にまっすぐ剣を向けた。
目が合って、痺れた様に体が動かない。
————私を見据える金色の瞳。
「こっちくるよ。クロム、レスター、出力上げなさい」
二人が真剣な顔になるのを目の端で認めるけれど、金色の視線から目を逸せない。
獅子の王は一瞬で跳躍して三階席まで来ると、ドンっと手摺りにしゃがんだ。
その場に立ち上がりザンっと剣を振ると、三階席に施されていた結界と、子供達二人の結界がかき消された。
————「俺の番だろ、あんた」
「え…………?」
ハスキーな低い声、燃える様な赤髪に金の瞳。そこにいるだけで威圧感があって皆がひれ伏す様な体躯。
「俺らは感だけは獣人一いい。あんたは俺の国に来れば必ず俺の番になる女だ」
怖い。足がすくんで動かない。逃げたいのに目を逸らすのさえ怖い。
「チッ……ガキがニ匹もいんのか。全部始末して新しく仕込むから安心しろ」
「君、後ろ。僕の弟怒らせると怖いよ?」
「俺はこのトーナメントは初めてだしな。楽しみたい。極上の女も手に入れたいし、合法的に目障りな男も始末したい。俺が勝ったらその女、もらいうける」
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▶︎▶︎【あとがき】
フォルド (どやぁ!!)
レスター 「伯父上の防御魔法すげえ!」
クロム 「へーか、しごい」
陛下の侍従たち (言えない……へたれだから防御魔法が一番得意だなんて言えない)




