仕掛けられたオシリス
数日後、いよいよアルウの制作したオシリス像がオシレイオンに奉納されることになった。
神官と巫女によるオシリス神復活の儀式を行うために、オシリス像は十四のパーツに分解されて運び込まれるのだ。
ところがその過程で、コンスとマーネとその手下は、パロイに制作させていた偽のオシリス像の頭部パーツを、本物のパーツとすり替えた。
何も知らない運び手達は、渡された十四個のオシリス像のパーツを一個ずつ牛が牽く木のそりに載せてオシレイオンに運んだ。
オシリス像の十四個のパーツがオシレイオンに運び込まれると、大神官や巫女達によるオシリス復活の儀式が厳かに行われ、その儀式も無事に終わると、いよいよオシリス像の組み立てが始まった。
組み立てにはアルウの工房の職人が総出であたり、アルウの指示に従いながら、オシリス像を完成させていった。
「見事なオシリス像だ」
完成した像を見上げ大神官ブテハメンは唸り声をあげる。
「……」
セバヌフェルは無言で見つめた。
「どうですか?」
アルウは黙ったままオシリス像を見上げるセバヌフェルに近づく。
「アルウ様」
セバヌフェルは神秘的な青い目でアルウ見る。
「やっと子供の頃の約束を果たすことができました」
アルウが額の汗を拭う。
「オシリス神もさぞ喜んでいることでしょう」
セバヌフェルが微笑む。
「あなたにそう言っていただけると嬉しいです」
アルウも笑顔でこたえる。
「ただ」
セバヌフェルの表情がにわかに曇った。
「ただ、なんですか」
アルウはセバヌフェルの横顔を見つめる。
「気のせいなら良いのですが、なぜか嫌な予感がします」
そう言ってセバヌフェルは口をかたく閉じた。
「嫌な予感……」
セバヌフェルの言葉に、アルウは改めて完成したばかりのオシリス像を見上げた。
その時、二人の様子を遠くから眺めていたコンスとマーネがやってきて、恭しくアルウに声をかけた。
「アルウ、おめでとう」
コンスが大げさに言って握手をもとめる。
「ありがとう」
アルウは笑顔で握手した。
「素晴らしいオシリスだ!」
続けてマーネがわざとらしく賛美する。
「あなたの協力があったからこそ完成することができました」
アルウは年長の大先輩でもあるマーネを労った。
「俺もお前の神の手が欲しいくらいだ」
コンスもわざと褒めちぎる。
「みんなのお陰です」
なにも知らないアルウは二人の言葉を有り難いと感謝した。




