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4.リード

大雑把なルール説明

・一本(3ポイント):顔面への蹴り(上段回し蹴り等)

・技有り(2ポイント):胴への蹴り(中段回し蹴り等)

・有効(1ポイント):顔面への突き(上段突き)、胴への突き(中段突き)

 諏藤(すどう) 2ー2 其倉(そのくら)


 試合開始から30秒程が過ぎていた。

 最初の1ポイントこそ其倉の上段突きで先取されたものの、その後ポイントを互いに奪い合い現時点では同ポイントだ。

 しかし、10センチ程も背が高く、昨年のベスト4選手でもある其倉に対して自分が試合のペースを握りつつあることを諏藤は感じていた。

 

 バアン!

「エヤアアア!」

「止め!」


 今も其倉が大きく踏み込んで右腕で上段突きを繰り出したが、開始線に戻って主審は


「はい始め!」


 と試合の再開を宣言する。

 つまり今の其倉の上段突きは無効だったというわけだ。

 ここまでで其倉は突き2本、上段回し蹴り1本を無効とされていた。

 前回までの大会なら有効だった打撃が、相手に当たってしまったことによって『強打無効』と判定されてしまうのだ。

 其倉にしても審判の判定基準が変わったことは第1~第3試合を見て分かっていた。

 しかし分かったからといってはいそうですかと、身体に染み付いた距離感やタイミングを変えられるものではない。

 サウスポーを構えの基軸にしている諏藤に対しては余計に調整が難しい。


 一方、諏藤は今日のルール基準変更に馴染んでいた。

 実は以前から諏藤は寸止ルール空手の判定基準に苦しんでいた。

 これまでは、強く打てば『強打反則』を取られ、それならばと寸止してもポイントを取ってもらえなかった。

 「正直どのくらいの強さで『当てる』のが正解なんですかね……」

 と悩んでいたのだ。

 しかし今日の基準ならいつも取ってもらえない諏藤の寸止でポイントが入る。

 今日のルール基準変更は最大のチャンスと諏藤は捉えていた。


「エアアア!」

「セヤアア!」


 ほぼ真正面から諏藤の左拳と其倉の左拳が交錯する。

 開始線に戻っての判定は


「赤、上段突き有効!」


 当ててしまった其倉の攻撃はやはり強打無効と判断されてしまい、諏藤の左上段突き(ストレート)だけがポイントを得る。


 諏藤 3ー2 其倉


 主審の「始め!」の掛け声で試合が再会する。


 勝負所はここでしょうかね……


 そう判断した諏藤はポイント逆転されて迷いが生じているらしい其倉に、右突きのフェイントを掛けると右斜め前に踏み込み左中段回し蹴り(ミドル)を放つ。

 判定は


「赤、中段回し蹴り技有り!」


 これで更に2ポイントを奪取した。


 しかしまあ、上段回し蹴り(ハイ)一発で追いつかれるポイント差ですからね。


 と、諏藤は気を引き締めるのであった。


◇◆◇


 諏藤 5ー2 其倉


「うおおっ!マジッすか!俺、諏藤さんがこんな大量リードしてるの初めて見たっすよ!つーかリードしてるとこ初めて見たっすよ!」

「上手く自分の寸止の距離にアジャストさせたんだろうが……ここまで(はま)るとはね。驚いた」


 2ポイントを取った左中段回し蹴り(ミドル)は、諏藤が麻岐部からコツを聞いて練習に励んでいたキック風の中段回し蹴り(ミドル)だった。

 斜めに踏み込むので相手もカウンターを合わせにくかったのだろう。


「結構モノにしてるじゃないか……このまま押し切れればいいんだが」


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