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08 神様、ダンジョン攻略をする

「ダンジョン?なんでいきなりそんな所に行きたくなったの?」

「夏休みにローレンス領に戻った時に言われたんだ。お前も男なんだからダンジョン攻略くらいしとけってな。」

夏休みが終わってすぐ、アルディックがダンジョンに行きたいと言い出した。なんでアルディックをそんな死地に向かわせないといけないんだろう。

「それで、アルディックは1人で行くつもりなの?」

「ああ、そのつもりだが。何かダメだったか?」

「ダメに決まってるでしょ、なんで1人でそんな危ない所に行こうとしているのよ。」

「危ないって、初級のダンジョンだぞ?」

「だとしてもダメよ、行く時は私も一緒に着いて行くから。」

「それでセリアナが満足するなら構わないが、お前はあんまり余計なことはするなよ。」

「うん、それくらいわかってる。」

そうだ、これはアルディックの晴れ舞台なのだ。私はそれを引き立てて見守る役に徹するとしよう。

「珍しいな、お前がそんなに興味を持つなんて。」

「そんなに珍しい?私って気になることあったら結構聞くタイプのはずなんだけど。」

「いや、それでもここまで関わろうとするのは初めてじゃないか?」

「確かに、言われてみればそうかも。」

今まで私は面倒ごとを避けるためにあまり他人の事情に関わらないようにしていた、だけど今回は話が別だ。

ダンジョン、つまり侵入者を本気で出迎える様な所へアルディックを1人で送るのは私が許さない。

「まぁセリアナが本気で着いて行きたいのは伝わったから大丈夫だぞ。」

「そう、ありがとう。邪魔はしないから大丈夫よ。」

私が邪魔をしてしまうのは良くないからな、今回はほとんど手出しをしないでおこう。


にしてもダンジョンか、楽しみだな。

見たこともないような魔物に、未知の仕掛け。想像すればするほど色々なイメージが浮き上がってくる。

ただ一つあげるとするなら、人生初ダンジョンをアルディックに任せないといけないことだろう。

アルディックには強くなってもらう予定なので関係ないが。

頑張ってくれよアルディック、私は応援してるぞ。

「何を楽しそうにしてるんだ、なんか変なことでも考えていたのか?」

「変なことなんて考えてないわよ、強いて言うならダンジョンが楽しみってことくらいよ。」

「最近ダンジョンなんかよりセリアナのほうがよっぽど凄いんじゃないかと思えてきたんだが。

ほんとに1人で大陸くらいならまとめ上げれるんじゃないか?」

「冗談でもそんなこと言わないでよ、私はこの力を悪用するつもりはないの。」

「わかってるさ。俺は安心している、力を手に入れたのがセリアナみたいな優しいやつでな。」

「優しい?私が?」

「優しいだろ?いつも俺のことを気にかけてくれるし、周りから嫌われても力を悪い方に使わないんだから。」

「あ、ありがとう?」

優しいなんて言われたのは何年ぶりだろうか、こんな時どんな反応をしたらいいのか分からない私は思わず顔をそらしてしまう。

アルディック、最近私の反応を見て楽しんでるよね。

恥ずかしいのでやめてほしい限りである。

ダンジョンの詳細を聞き出すことはできなかったが、とりあえず一緒に行く約束を取り付けられただけでも及第点だろう。



あれからアルディックとダンジョンへ潜る約束をした日はすぐに訪れた。違うか、楽しみすぎて時間の流れが早かったといったほうがいいだろう。

そんなわけで私たちはダンジョンの入り口にたどり着いていた。

「ダンジョンってこんなに素っ気ないものなの?」

「ここが初級ダンジョンだからじゃないか?多分上級とかだともっと豪華なんだろうな。」

「へぇ、でもこういう所のほうがいいものが落ちてることもあるんだよね。」

「セリアナはダンジョンにどんな期待をしてるんだ、落ちてるものは普通に初級よりも上級のほうがいいぞ。」

あれ、ダンジョンって入った人の強さに応じて魔物の強さが変わるんじゃなかったかな。多分初級には弱い人がよく行くから弱い魔物しか出ないと勘違いされているんだろう。

私は魔法とか使えないし弱いって判断されるよね。

「よし、それじゃあ入るぞ。ちゃんとついて来い」

「うん。わかってる。」

心の準備ができたのか歩き出したアルディックの後ろを私も歩く。

危なくなったら私が手を出そう、うん。

そう考えながら私たちはダンジョンの中へ入って行く。

雰囲気は悪くない、ただ内部の力はそこまで濃くないな。

ダンジョンの内部は空気が逃げないので魔物から発せられた力が滞留(たいりゅう)する。つまりその濃さでどの程度のダンジョンなのかわかるのだ。

「気をつけろ、早速魔物が出てきた。」

奥から5匹程度のスライムが現れた。なんだろう最初にスライムが現れるのは鉄板なのだろうか。

多分アルディックならスライム(ごと)きならいくらでも倒せるだろう、ほらもう1匹倒してるし。

そんな感じで観察をしていると、足元に感覚がした。見れば戦いから逃げ出したスライムが1匹いた。

「もしかして戦いたくないの?」

私がそう問うと、スライムが頷いたような気がする。変わったスライムだ。

「戦いたくないんだったら逃げればいいんじゃない?え、それだとアルディックが格好をつけられない?」

このスライム賢いな。てかなんで私は魔物と話せているんだ。

そんな事を話している間にアルディックと戦っているスライムは3匹倒されてしまった。スライムは焦ったのか大きくなって私に近づいて来た。

「待って、大きくなるのは聞いてない。」

大きくなったらスライムから逃げようとするが、時すでに遅く。私はスライムに飲み込まれてしまった。



「これで、終わりだ!」

俺は持っている剣をスライムに突き刺す。するとスライムは形を維持できずドロドロと溶けて蒸発した。

初級ダンジョンと言うだけあって敵も弱い。スライムからは素材も取れないしあまりいい魔物とは言えないだろう。

「セリアナ、終わったぞ。」

俺は後ろで待機しているであろうセリアナに声をかける。しかし反応がない。

おかしいな、いつものセリアナは俺の後ろをピッタリと着いてくるようなやつなんだが。何か良くないことでも起こっているのか?

いつもと違う状況に焦りながら後ろを向く、そこにセリアナがいるはずだ。

「セリアナ?どうしたん、だ?」

そこには何故かスライムに飲み込まれているセリアナの姿があった。

「たーすーけーてー(棒)」

「何をやってるんだ?」

「見て分からない?スライムに捕まってるの。」

「抜け出さないのか?お前ならそれくらい簡単に振り解けるだろ。」

俺がそう言うとセリアナは俺から目を逸らした、図星らしい。

仕方ない、助けてやるか。

ため息をつきながら俺は剣を握り直してスライムと向き合う。セリアナが飲み込まれているのでセリアナと対峙しているような気分で少し複雑だ。

「私のことは気にしないでそのまま行っちゃってー(棒)」

珍しくセリアナがノリノリなんだ、付き合ってやろう。

俺は覚悟を決めて走り出す。剣を前に突き出してスライムを貫けば終わりだ。

「そんな簡単なことができなかったら俺は、セリアナの隣に立つ資格なんてない!」

そして俺は、スライムを貫いた。



「私の隣に立つ資格がない、か。アルディックもかっこいいあるな。」

無意識だったんだろうが、アルディックはそんな事を言っていた。なんだろう、ふざけていた私が馬鹿馬鹿しく思えてきた。

ありがとう。私たちの茶番に付き合ってもらって。

私は心の中でお礼をして、スライムを四散させるように見せかけながらしまう。

「よっと。」

いきなりスライムが消えて私は空中から落下するが、ふわりと着地する。

「大丈夫だったか?」

アルディックが私に駆け寄って来た。

「うん、大丈夫。この通りピンピンしてるから。」

私はジャンプをしたり火を出したりして見せた。

「無事でよかった、まだ行けそうか?」

「当たり前じゃない、というか暇だから私も手伝っていい?」

「ダンジョンを壊さないんだったらいいぞ。」

「それくらいわかってるって。」

やった、ようやく魔物を倒せそうだ。あ、でも武器持って来てないからあんまり派手にはできないな。

「行くぞ、時間をかけると魔物が増えるかもしれないからな。」

私はアルディックの言葉に頷く、それ見たアルディックは奥へ歩き始めた。

多分もう魔物はかなり増えている。だって最初に入った時より圧倒的に滞留(たいりゅう)している力が濃くなっている。逆に魔物と出会わない方が難しいだろう。

ほら、少し歩いただけなのにもう魔物の大群が出て来た。

「なんでこんなに魔物が増えているんだ?」

「そんなの気にしてても仕方ないでしょ。ほら、やるよアルディック。」

「そうだな。」

疑問を浮かべるアルディックを差し置いて、私は前へ飛び出す。

私に気づいた魔物たちは戦闘体制を取る、どうやら狼型の魔物のようだ。

「あんまり無茶したらダメだぞ。」

魔物を観察しているうちにアルディックが追いついてきた。

2対多数の睨み合いは続く、狼って自分たちより弱い相手には容赦なく襲いかかるはずなんだが。

3分くらい睨み合いをしたが、相手はもう待ちきれないらしい。1匹飛び出してきた。

遅いな、その程度の速度じゃ簡単に避けれるぞ。

いつのまにか目の前まで来ていた狼を体を逸らして避け、お返しの拳をあげた。

狼は恐ろしい速度で吹き飛ばされバウンドして止まった。多分事切れている。

狼たちは心配そうにその狼に寄って行った。そして事切れた事を確認したのだろう。

それ見た狼たちは、目の色を変えて襲ってきた。


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