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04 神様、運命の出会いをする

私、セリアナ・イルスヴェルは悩んでいる。初日にとんでもないことをしてしまったため、クラスで寄って来る人が誰1人としていないのだ。

私が声をかけようとしても皆離れていってしまうし、相手の方から近づいて来ることは一切ない。これがぼっちというものか。

ぼっち生活も楽かもしれないが、流石に3年間ずっと一人というのも悲しい。さて、どうしたものか。

とりあえず野外訓練までにはなんとしてでも友達を作ろう、そう決めた私はプランを考える。

まずは普通に友達を作ることだ、これは気が合う人さえ見つけられれば話し相手には困らないくらいにはなるだろう。

そしてもう一つ、運命の相手と出会うことだ。これはかなり可能性は低いが不可能というわけじゃない。

なにせ私は腐っても女だ、それに貴族令嬢でもある。その2つの要素だけでも可能性は跳ね上がる。

よし、早速やってみよう。とりあえず私は近くにいた女の子に声をかけてみる。

「あ、あの」

「きゃぁ!?ち、近づかないで!」

反応がどこぞのメイドとほぼ同じである。どうやら私はどこでも怖がられる運命らしい。

「はぁ、友達を作るってこんなに難しいことなのね。」

私はこの日、はじめて自分の無力さを痛感する。

ちなみに私の努力は実ることなく野外訓練の日となってしまった。

これが1人でやるようなものだったらよかったのだが、事前に教師はこう言った。『当日は二人組を作ってください』と、その言葉は私のようなぼっちには死を意味する。



当日、なぜか人から避けられている私が誰かとペアを作れるわけもなく、私はペア作りの時間誰からも話しかけることはなかった。

別に寂しくなんてないもん、1人でなんとかできるもん。

心の中で虚勢(きょせい)を張って見たが、やっぱり寂しいものは寂しい。

「セリアナ嬢」

でもこんな私に声をかけてくる人なんていないよね、周りからの評判も落ちちゃうし。

「聞いているのか?セリアナ嬢」

本当にどうしよう、このままじゃもしかしたら参加すらさせてもらえないのかもしれない。

「そろそろ話をだな…」

「さっきから話しかけてきているのは誰…えっ?」

私はそこでようやく声をかけられていることに気づいた。

「やっと気づいてくれたか、セリアナ嬢」

「ごめんなさい、少し考え事をしていました。それであなたは?」

「自己紹介がまだだったな、俺はアルディック・ローレンスだ」

ローレンス、その家名は聞いたことがある。確か伯爵家の中でもかなり優秀なんだっけ。

「それで、アルディックさんはなんで私に声をかけたんですか?」

「なんでって、そりゃセリアナ嬢が1人になってたからだが。」

その言葉を聞いた瞬間私はアルディックに向き治る。

「なら、一緒にペアを組まない?」

「セリアナ嬢がいいなら俺は構わないぞ。」

「それじゃあ決まりね。」

セリアナブロック、アルディックは誰にも取らせまいと私は警戒する。

「なあセリアナ嬢、そんなに警戒しなくてもいいんじゃないか?」

「だめよ、せっかくできたペアを奪われるわけにはいけないもの。」

「そうか、ならいいが。」

アルディックはどこか呆れたような目を私に向けてくる。許してくれアルディック、私にはこうするしかないんだ。

そんなこんなで私はなんとかペアをゲットすることに成功した。



全員のペアが決まったところで野外訓練が始まった。

訓練と言っても魔法や剣を使って弱い魔物を討伐する程度のことしかない、私からしたらなんともやりがいがないものだ。

そして暇を持て余した私は初めてできた話しかけていた。

「ねえアルディック、この訓練物足りなくない?」

「確かにいいたいことはわかるが、どうしようもなくないか?」

「たしかにそうね。」

どうやらアルディックも物足りないと感じていたらしい、ならあれをやっていいだろうか。

「ねえアルディック。」

「今度は何だ?」

「魔物を呼んでもいい?」

「できるのか?」

「うん。」

よし、許可はとれた。早速やろう。

『魔物呼び』

私が小さくつぶやくと、奥の方から大きな音が近づいてくる。早速来たようだ。

音のする方に目をやると、魔物の大群が地ならしをするようにこちらへ迫ってきていた。

「おいおい嘘だろ!?」

それを見て慌てたアルディックは私の腕を掴む。

「行くぞセリアナ!」

「ちょっとアルディック、どこへ行くの。」

「決まってるだろ!味方のところにだ!」

腕を掴まれている私は抵抗できずにアルディックに連れられ後ろへと戻ってきた。アルディックって結構力強いんだね。

後ろでは教師たちが慌てて連携を取り、生徒たちに指示を出している。

即興にしては悪くないじゃないか。私が感心しているとアルディックの声が聞こえてきた。

「セリアナ嬢、俺の背後を任せてもいいか?」

切羽詰まった様子の彼に対して、私は余裕の笑みを浮かべた。

「ええ、もちろん。」

彼が軽くうなずいたのを確認すると私たちは前へ飛び出す。

アルディックが剣で近くの魔物を斬り伏せ、私が奇襲をしてくる魔物を貫く。割と相性のいいペアだと思う、アルディックがどう思っているかは知らないが。



そして連携を続けること5分、魔物の勢いは収まっていた。

最前線で魔物と戦い続けたアルディックは疲れてその場に座り込んでいた。

「お疲れさまです、見事な剣術でしたよ。」

「そっちこそ見事な魔法だったぞ。」

「ありがとうございます。」

「本当にセリアナ嬢は規格外なんだな。」

私が息を切らすどころか疲れすら顔に出さなかったので、私のことを見たアルディックは苦笑いをしながら言ってくる。

「セリアナでいいですよ、嬢と付けられるのは少し慣れないので。」

「そうか、なら俺のこともアルディックで構わない。」

「うん、じゃあそうする。」

やった。名前で呼び合える知り合いができた。

「それで、セリアナ。さっきのはなんだったんだ?」

「あれ?たまたま魔物の群れが近づいてきていたから私が呼んだことにしようかなって。」

嘘です、本当は私が呼びました。

だけどそんなこと知らないアルディックはため息をつく。

「なんでわざわざセリアナは自分のせいにしようとしてるんだ、魔物の群れが近づいているなら普通に言えばいいのに。」

「あ、いやそれはね。ほら、私のせいにした方が受け入れやすいかなぁって思ったの。」

「魔物が出てくるところでは何が起こるかわからないと言われている、だからセリアナが自分から嫌われに行く必要はないんだぞ?」

やばい、少し罪悪感がしてきた。

「なら、さっきこのことは言わないでもらえると助かるんだけど。」

「言うわけないだろ、セリアナは3属性が使えるちょっと変なだけの女の子なんだからな。」

「ちょっと変って、私のどの辺りが変なのよ。」

「それは、言動とか行動とかだな。」

「嘘、でしょ。」

私はアルディックの言葉を受けてかなりのダメージを受けてしまう。それはもうショックのあまり膝を地面につけてしまうくらいに。

「おい、セリアナ?」

「だめ、しばらく立ち直れないかも。」

「違うそう言うことじゃない、前を見てみろ。」

「え?」

アルディックに言われて私は前を見る。すると一匹の魔物が私の方へ向かって走ってきていた。

なんと、魔物まで私とアルディックを引き離そうとするか、許さん。

私は立ち上がろうとしたが、アルディックが私の前に出てきた。

そしてそのまま私に向かってきた魔物を一刀両断した。やだかっこいい。

「大丈夫か?」

「うん、アルディックが守ってくれたから大丈夫よ。」

「それならよかった。立てるか?」

「あー、ちょっと手を貸してほしいかもー(棒)」

自分で立つことができるがたまには他の人の手を借りるのもいいだろう。

「わかった、ほら。」

そう言ってアルディックは私に手を貸してくれる。

その手を掴んで私は立ち上がる。

「ありがとう。」

「いいんだ、気にしないでくれ。」

さっきから思うんだけど、アルディックって性格イケメン過ぎない?

とりあえず、そんなイケメンに私がやってしまったと知られなくてよかったと私は胸をなでおろす。

「あ、まだ訓練するみたいよ。」

「あんな数の魔物が襲ってきたのによく続けられるな。」

「大丈夫よ、また来たら全部私が焼き払うから。」

「やるなよ?」

「冗談に決まってるじゃない。」

「いや、お前が言うと冗談に聞こえない。」

「そう。」

ひどいじゃないかアルディックよ、流石の私でも環境破壊は好まないぞ。

「とりあえず任せて、一発で仕留めるから。」

「流石にだめそうなら止めるからな?」

釘を刺されてしまった、流石に自重するべきだろうか。

私は悩みながらしれっと近づいてきていた魔物を焼き払う。

「これくらいならいい?」

「ああ、それくらいなら大丈夫だ。」

よし、なんとなく力加減はわかった。あとはこれを続けるだけだ。

奥に行けば行くほど強い魔物が出るらしいが、なんとかなるだろう。

奥に進んだ私はなんとかその力加減を続けて、その日の野外訓練は幕を閉じた。

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