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02 神様、学園へ行く

図書室を見つけるまで何故か問題を起こしまくった私だが、図書室を見つけてからは至って問題を起こすことはなかった。当然だ、だってただ勉強をしているだけだからね



そんな勉強のお陰で私の置かれている状況をある程度把握することができた。まずこの国は前世の私がよく知っているシルバーベール王国であること、イルスヴェル家は伯爵だが中央には介入できないので地位が低いことなど色々だ。

ただ、いくら探しても私の名前が乗っている書物はない。

おかしいな、私は前世は偉い神様だったのに。

それよりも驚いたことがある、それは魔法があるということだ。

魔法、言わば属性の結晶とも言えるようなものだ。それを使ってこの世界は発展を遂げたようだ。

あちゃー、科学じゃなくてそっちが発展しちゃったか。と思ってみるののもこれはこれで悪くない気がする。

とりあえず知りたいことはわかった、明日からは色々試してみることにしよう。

私は読んでいた本を片付けて図書室から足早に立ち去るのだった。



「やっぱり、避けられてるよね。」

自室に戻ってベッドにダイブしたあと、私はそんなことをつぶやいていた。

図書室からの帰りにも何度かメイドと遭遇したが、ものの見事に避けられてしまった。

ここまで嫌われてるとなるといっそ清々しいと思えてくるほどだ。

その嫌われている原因もわかりきっているしそこまで気に病む必要はない。

「ってメイドとかそんなことはどうでもいいの、とにかくに今は神の力がどの程度使えるかだよね。」

私は変な方向にずれていた思考を元に戻す、神の力さえ使えれば人生イージーゲーム。

メイドたちに気を使う余裕だって湧いてくる。でも逆に全く使えなかったら人生ハードモード待ったなしだ。

「あーやばい、明日まで待てないかも。」

一度気になってしまっては仕方がない、その力を確かめるために私は手を上に向ける。

「えい」

そんな掛け声と共に手にまばゆい光が集まっている。

どうやら成功のようだ。よかった。

あれ、なんだか眠くなってきた。

辺に力を使ったせいなのか私の体にとんでもない隙間が襲いかかる。

まだ幼い私にはそれを防ぐすべは当然無い。だからすぐに眠ってしまった。



私って、記憶が戻る前は何か悪いことをしたのだろうか。じゃなかったらここまで疎まれる理由に説明がつかない。

「よっと、体が軽いから動きやすいね」

私はベッドから起き上がる。前世では到底できなかっただろう。

「やっぱり、夢じゃないんだよね。」

右手を前に出してみる、そして引っ込めて次に左手を前に出してみる。

うん、確かに空を切る感覚がある。これは夢じゃない。

そうやって私が色々確かめていると外から騒がしい足音がした。

その音を聞いて私は慌てて布団に戻り、寝たふりをする。



寝たふりをしてすぐ、いつもの日常が始まった。

まあここは面倒くさいので割愛しておくとしよう。ただ一つだけ変わったことがあった。

なんと、今日はメイドの1人が私から逃げずにお話してくれたのだ。

少し嬉しかったのは内緒である。

あーあ、みんなこんな感じに話してくれるといいんだけどなぁ。



時間が経つのは思った以上に早い。それはもう私が記憶を取り戻してから一瞬(体感)で10歳になったくらいだ。

この国では10歳になると家を上げて祝い事をする風習があるようだが、私には一切なかった。

別に全然悲しいとも思ってないよ?でもちょっとだけ期待しちゃったじゃん。返してよこの期待。

そんな文句を言っていると、部屋に家庭教師が入ってくる。どうやら私は王立魔法学園という所に通わされるらしい、そのための勉強ということだ。

両親よ、実の娘の育児放棄をしておきながらそれはどうなんだ。



「セリアナお嬢様はすごいですね。勉強の才能があるみたいだわ。」

「それはどうも、ありがとうございます。」

まずい、昔の癖でつい完璧に解いてしまった。流石にこんなに賢い子供は怪しまれるだろうか。

「これならもっと難しくしても良さそうね。」

ああ、この人が馬鹿で助かった。てか少しは怪しめよ、私はまだ成長途中の10歳なんだぞ。

これからもこの人と勉強か、想像しただけでも頭が痛くなる。面倒くさいが自由のためには仕方のないことだと割り切っておこう。



この人と2年間も学ぶことになるなんて、その時は私は考えもしなかった。

それでも私はかなり早く終わったほうらしい、普通の貴族なら10歳から15歳までの5年間でギリギリできるかどうかというところらしい。

とにかく今だけは前世の癖に感謝しよう。お陰でかなり時間を作ることができた。

というわけでこれからは魔法の練習だ、貴族以外も使える人はいるらしいが、使えないと貴族としてアウトらしい。

図書室から勝手に持ち出した本を見て、真似をしてみる。

「ふぁいあぼぉる」

あれ、何も出ない。やっぱり独学でやるのは厳しかったかな。

もしかしたら炎属性の才能がなかっただけなのかもしれない、そう考えた私はほかの魔法も試してみることにした。

「うぉたぁぼぉる」「うぃんどらんす」「ぐらんどうぉる」「さんだぁ」「うっどすらっしゅ」

初級と言われている魔法を全部試してみたのだが、どれも発動しなかった。どうやら私には魔法の才能がないらしい。

どうしよう、こんなことになるなら家庭教師の人に聞いておけばよかった。

はぁ。とため息をつく、神の力を使って代用とかできないのかな。



試してみることにした。

私は目を閉じて集中する。手の先に何かが集まるような感覚を感じ、目を開ける。

よし、感覚は鈍ってない。さぁ、やってみよう。

『ふぁいあぼぉる』

私がその言葉を唱えると同時に青白い炎が生まれた。これ温度上げすぎたやつだ。

まずいまずい、熱すぎて地面が溶け始めている。こんなの人前に絶対に出せない。

てか絶対この炎って聖属性ついてるじゃん、魔物とか本当に燃やし尽くせちゃうやつだよ。

『消火』

とりあえず神の力で生み出した炎は神の力で消しておくことにした。何かと便利で助かっている。

魔法は結局使えなかったが、今の課題を知れたので良しとしよう。



あれから私の努力が実を結ぶことはなかった。

両親はいないので見よう見まねで使うこともできないので、本で読んだことや想像でなんとかするしかない。



そんな絶望的なことになりつつ、私は馬車に揺られていた。正直言って気持ち悪い。

私の両親からの疎まれ具合が半端じゃないのだ、それはもう屋敷の敷地外に出させないほどに。

そんなわけで人生初の馬車体験のわけだが、道が整備されていないせいかものすごく揺れる。

そこまで酷いわけじゃないが馬車で酔ってしまったようだ。ちょっと楽しみにしていただけに悲しい。

王都までの道のりは約2日ほどかかるらしい、はっきり言って地獄だ。

こんなことなら貴族になんて生まれなければよかった、そう思ってしまうほどだ。

これならきっと私が走った方が早い、きっと両親も私のためにいい馬なんて用意しなかっただろう。

王都に行ってもきっと両親と会うことはない、きっと向こうから断られるだろう、もちろん私もごめんだ。



「本当に予定通りね。」

王都にある学園に着いて私が最初に喋った言葉はそれだった。馬車というのは馬を使う都合上予定の時間に間に合わないことだって多々あるだろう。そんな中で馬車は時間通りに走ってみせた。

「ああ、時間通りにつかないと貴族としての面子が保てないからか。」

全てを察した私は両親に良いように使われたようで内心イラついた。

とりあえず生徒でも見て落ち着こう、そう考えて校門の方に目をやる。

数はそこまで多くはない、だがそのほとんど全てが貴族の子供であるということを考えると恐ろしい。

「変に関わるつもりもないんだけどね。」

それだけ呟いた私は自身の割り当てられたクラスを見て、寮へと向かった。



「おかえりなさいませ、セリアナお嬢様。」

私が扉を開けてすぐ、そんな言葉が耳に入った。

事前に聞かされていた通り、イルスヴェル家からメイドが派遣されていた。

確か名前はセイだっけ、まあ面識もないし覚えていないが。

「ただいま、早速で悪いけれど自己紹介してもらっていい?」

「はい、私はイルスヴェル家からセリアナ様に仕えるように派遣されたメイド、名前をセイと申します。」

「そう、自己紹介ありがとう。」

やってしまった、なんとか返そうとした結果なんとも冷たい感じになってしまった。

「とりあえずこのあとは入学式があるので服を着替えてホールに行ってください」

ふう、なんとか避けられなかったようだ。一安心。

そんな安心を胸に、私は素早く着替える。

「それじゃあ行ってくるから。」

「はい、いってらっしゃいませ。」

その言葉が背中から聞こえてくる。

誰かに見送られたのは生まれて初めてかもしれない。



しばらく歩いて私はホールに着いた。

ホールは教会のように椅子が並べられ、着々と生徒たちが椅子に座っている真っ最中だ。

私もしれっと生徒たちに混ざり、事前に張り出されていた席に座る。座り心地は普通といったところだろうか。欲を言うならクッションくらい引いて欲しかった。

そんな文句を心の中で言っているうちに生徒全員が座り終わったようだ。今は学園長らしき人物が何か喋っている。

あ、もう喋り終わったんだ。早くて助かる、誰1人としてお経を聞き続けたい人なんていないだろうし。

短い学園長の次は何故か生徒の名前が呼ばれた、もしかして代表生徒とかそんなものだろうか。

呼ばれた生徒は前に出てきて、喋り始めた。

「エリック・シルバーベールです。私はここにいる皆様と共に入学できたことを誇りに思います。共に高みを目指していきましょう。」

彼の言葉が終わると同時に拍手が巻き起こる。シルバーベール、名前からしてこの国の王族だ、だから呼ばれたのか。

だが本来なら止まるはずの生徒を呼ぶ声は止まらない。

え、これってもしかして自己紹介ってやつ!?しかもこんな大勢の前で!?

そのことに気づいた時、私は生まれて初めてパニックに陥った。

大急ぎで自己紹介を考える、だが無情なもので刻一刻と私の番は迫ってくる。

考えろ、考えろ私。無難であまり人から注目されないような内容を。

そうだ!得意なことを言えば良いんだ!

ナイス私、これでこの地獄のようなイベントを乗り切ることができる。

「セリアナ・イルスヴェル、前へ。」

「はい。」

私は返事をして立ち上がる。ついに来た、私の番だ。

チャンスは一度キリ、失敗は許されない。この全てに私のこれからの学園生活がかかっている。

そんなのしかかる心の重さのせいで私は緊張しながら前へと向かう。動きがぎこちないような気がするが、きっと気のせいだろう。

そして前についた私は一度軽くお辞儀をして生徒たちを見る。仕方ない、意を決しよう。

私は口を開く、のちに自分を苦しめる爆弾発言となるその言葉を。


「セリアナ・イルスヴェルです、私は火属性の魔法が得意です。ですが一応水属性と風属性も使えます。」

私がそう言った瞬間ホールにざわめきが起こる。

「おい、今炎と水と風って」

「ああ、確かに聞こえた」

「そんな人間いるのかよ」

反応を見る限りどうやら疑っているようだ、とんでもない間違えをしてしまったらしい。

この世界は3属性使いとかいないのかな?

そんな騒ぎを起こした私を見ながら学園長が話しかけて来る。

「セリアナ嬢、嘘は言っちゃいけないよ。」

「いえ、嘘ではありません。」

「いいかい?ここは見栄を張る場所じゃないんだ。嘘は貴族としてふさわしくないよ。」

そうか、学園長まで嘘というか。なら見せてやる事にしよう、神の御技を。

「危ないので離れててくださいね。」

その言葉まさに神の放つ言葉に等しい圧が込められている。もちろん学園長が耐えられるはずもなく後退る。

それを確認した私は右手を上に向ける。

『ふぁいあぼぉる』

小さく呟くと私の手の上に1番後ろの席でも見えるくらいの大きさの炎が生まれる。

『うぉたぁぼぉる』

続けて呟き炎を囲むように水の玉ができた、だがまだまだ終わらない。

『うぃんどらんす』

炎を包みこむ水の玉にかなりの風を送り込む。

本来ならそんなに風はいらないが、分かりやすくするためにはこれくらいしないと。

空気が送り込まれた炎は大きくなり、水と接触する。その瞬間爆発が起こった。

ここにいる生徒たち全員が唖然としているなか、私はこう言う。

「火と水と風、全部使えてましたよね?」

それだけ言った私は席へと戻る。



やってしまった。平穏な私の学生生活完全終了のお知らせだ。

そんな私のショックなど気にも止めずに、どこか落ち着かない入学式は続いていった。

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