美咲灯台
初投稿でございます。誤字脱字、文章の不可解な点等ありましたらぜひご報告お願いします。
今の私にはなにもない、地位も名誉も幸せすらない。
だが昔、私にはささやかな幸せがあった。
私が高校生の時に「美咲」という女の子と知り合った、柔らかい雰囲気のよく笑う子だったのを今でも覚えている。
そんな彼女と私は付き合うことになった。告白した理由はよく覚えてないけど、きっと私らしい単純な理由だろう。
私と彼女が当時住んでいた街は海に近く日の出が見える灯台があった。私はその場所が好きで、朝早くに出て朝焼けを見てから学校に行くというちょっとした趣味があった、週末の夕方には彼女を連れて夕日をダラダラと眺めたりもした。
そんな日々も過ぎ去り私と彼女は高校を卒業した。就職、進学先も無事決まり私は大阪の大学に、彼女は東京の大手企業に就職したため離れる事になっていたが、付き合いはまだ続いていた。
それから四年後の冬の事だった、美咲が足を骨折し、うつ病になったと共通の友人から連絡があった。なんでも職場で嫌がらせをされたり、パワハラが日常的に行われていたそうだ。
しかも最悪なことに彼女は身内に立て続けに不幸が起こり頼れる親族はいなくなっていた。
だからいち早く彼女のお見舞いに行こうと大学を休み地元の病院へと向かった。久しぶりにみた地元の景色を懐かしみながら病院向かっていると、あの灯台が見えてきた。
しかし今はそんな場合ではないと思い直し、急ぎ足で病院に向かった。
病室にたどり着くとベッドの上には、少しげっそりした美咲が窓の外を虚ろな目で見ていた。私が来たとわかると途端に笑顔になったが私はその顔が少し不安に感じてしまった。
それから少し会話をした後、去り際にこう言われた。
「またあの灯台に行きたい」と。
なんだか嫌な予感もしたが、退院後に連れて行くと約束し、美咲を灯台に連れて行くことにした。
退院後、約束どおり灯台へ二人で向かった。ついた頃にはもう夕方で太陽は海に沈もうとしていた。灯台前のベンチに二人で座り、思い出話に花を咲かせた。
しかし次に美咲が切り出した言葉に私は凍り付いてしまった。
「私ね、もう死にたいの…」
一瞬意味が分からず困惑したが、それを脳がそれをすぐに理解してしまった。急に涙が出てきた。
美咲もそれは同じでボロボロ泣きはじめた。彼女は何も悪くないのに、そんな言葉を言わせてしまった自分を心底憎んだ。
美咲が泣きながら持っていたカバンに手を入れたと思ったら、カバンから液体が入ったペットボトルが出てきた。
液体は透明だったが直感で水ではないと感じた。おそらく大量の睡眠薬が溶け込んだ物だろう。
「二人で飲もう」と美咲が言い、美咲はそれを飲んだが私は逃げてしまった。
でも、美咲は何も合わなかった。氷のように冷たくなった美咲を抱き寄せ、不甲斐なく大声で泣いてしまった。
波の音が大きく聞こえた。
ここまでが私の昔の話だ、今私はあの灯台にいる。
なんの因果かこの灯台の名前は御崎灯台だった。
あの日の液体はまだ持っていた、私はそれを呷った。
まるで雨樋を伝う水のように液体は喉を流れた。
狭まりゆく視界の中でぼんやりとした淡い光が見える。
朝焼けだ。
淡い光に包まれながら、体から力が抜けるのを感じた…
上記の通り本日が初投稿となります。
小説を執筆するのってかなり難しいですね。
至らぬ点もありますがこれからも読んでくれると嬉しいです。