第三十七話 神星ノ魔術
「準備オッケーかアンドロメダ?」
「もちろん!いつでもいけるよ!」
俺は左手、アンドロメダは右手を互いに繋ぎ
魔力、いやもはや''神星闘気''となった二人のエネルギーを集中させる。
「いいぜェ!受けてたってやる!」
アストラは上空にて待機し俺たちを見下ろす。
この世に一つしか存在しないはずの''神星闘気''が新たに出現したことにより大地はイレギュラーを許容しきれずにあらゆる場所にて天変地異が巻き起こる。
激震させる雷を轟かせ、竜巻が大木を小枝のように宙に舞わせ、山は地面からもぎ取られている一方、空は一部青く澄んだ輝きを放っていた。
空気が読めないのかは分からない。
太陽は燦々と両者の姿を温かく、鼓舞するかのように照らし続けている…
—————
「よし…!」
準備は整った。
アンドロメダと力を練り合わせ、極限までオーラを高める。
「来い!!マナアア!!アンドロメダアア!!!」
「知ってるかアストラ、この世界はでっけえ宇宙の中の一つなんだ。」
唐突な言葉にアストラは少々面食らったようで驚いた顔をしている。
「…なんの話だ?」
「要するに。」
俺は隣にいるアンドロメダの顔を見る。
すると優しく微笑みかけてくれた。
「俺はただのマナじゃない、‘’マナ・マドカ‘’だ!!」
シュウウウウウ……!!
言葉と共に俺の髪色がアンドロメダと同じく、ダイヤモンドのような銀色となり"神聖闘気"を反射し薄く水色に輝きを放っている。
不思議と今から力の全てが手に取るように分かる。
感じる…星と星のつながりの力、''神星ノ魔術''を!
「"土星''」
ズッ…
突然、アストラの体の周りに大きな青く光るリングが出現。
青い光は周囲を照らし、中心にいるアストラを無機質に捕らえていた。
そう、それはまるで土星にある輪のような…
「な、なんだこれッ!?」
キュイイイイン!
アストラとリングの間に膨大な大きさの魔法陣が描かれ、紫に光だす。
「…クソッ!''神星闘気''で中和出来ねえ!」
俺とアンドロメダが放った技、''土星''はアストラの''太古の魔術''である''神星ノ覇気''と同一のエネルギーが使用されているため、''神星闘気''で打ち消す事はできない。
故に完全に動きを封じられてしまったのだ。
「アンドロメダ!」
「うん!準備出来てるよ!」
俺たちは空いている方の手を天へとかざす。
「''火星''!!」
すると青く照らされた空に異質な一筋の光が灯る。
やがてそれは大きくなり、紅蓮に燃え盛る巨大な火球、いや一つの星といっていいほどの業火が一気に地上を緋色に染め上げた。
「す、すげえ…!!すげえぞお前らァ!!」
アストラはこの状況さえも楽しんでいるかのような表情で急激に強くなった俺とアンドロメダに感嘆さえしてるようにも見える。
ゆっくりと降下し始めた空気さえも焦がす灼熱の星はアストラへと猛威を振るう。
ゴオオオオオ!!!
「これだ…!これだぜ…!しばらく味わえなかった感覚…!このワクワク!!」
顔を嬉々として喜ばせるアストラ。
体は絶対的な''土星''の封印によって身動き一つ取れないはずだが本人は喜んでいるようだ…。
''火星''はアストラをどんどん飲み込んでいき、やがてその姿は見えなくなった。
「アンドロメダ…!」
「うん…まだだね…。」
ゴゴゴゴゴ………
そろそろ業火の火星がアストラを燃やし尽くしていてもおかしくはない。
しかし時折炎の緋色に混ざって銀河の如く深い青色が現れるのがなんとも不穏だったがついに…この時は訪れた。
ドゴオオオオン!!!
一気に赤く染まっていた空は蒼天を取り戻し、澄み渡る青空に染め直した。
「ハッハッハ!!!お前らいいぞ!最高だ!!」
ドンッ!!
空へ登ったアストラが俺たちにまるでジェット機のように急接近する。
「ッ!''流星''!!」
向かってくるアストラに突然、隕石が衝突し
大きく吹き飛ぶ。
「いいじゃねえか…!いいじゃねえか!!」
地面に叩きつけられて尚、再びアストラはこちらへと猛スピードで向かう。
クソ…!こいつ不死身かよ…!?
「マナ!」
「わかってる!!」
アンドロメダが腕を向け発動の構えをとる。
俺もオーラを練り、集中。
「''スターバースト''!!」
キイイイン…ドゴオオオオン!!
アストラと俺たちの狭間で大爆発が巻き起こる。
「くっ…!」
爆風がすげえ…!
吹き飛ばされねえように堪えなきゃ…!
「チッ…直撃っちまった…!流石にきちいな。」
砂埃が吹き飛び、アストラの姿が見える。
腕をクロスにしガードしたようだが思ったよりダメージが入ってそうだ。
「だが!まだまだだぜえ!!」
更に向かいくるアストラ。
「アンドロメダ!走れ!」
「了解!」
できる限りあいつと距離を開き、ある程度まできたところで振り返る。
「''超新星''!!」
先ほど''スターバースト''で爆発と共に形成され散り散りとなった隕石が一気に収縮し、アストラがきたところで核爆発のような破壊エネルギーを生んだ。
ドゴオオ…ドッゴオオオオオオン!!!
「''木星''!」
俺とアンドロメダの体を''神星闘気''で生み出された木が覆う。
絶対防御魔法が俺たちを爆発から守るもアストラは反応しきれずにエネルギーの大爆発をもろに食らったようだ…!
「…退いたほうが良いね。」
「…だな。」
ここまでは奴を圧倒し、押せているように見えた。
しかしあそこまでやってもアストラに致命傷はおろか、大きなダメージすらも与えられている気がしない。
しかもアストラは自分から俺たちの魔法を受けにいっている気さえする。
まだだ…ここまで強くなってもアストラには勝てる気がしない…!
「''空間''」
俺たちの前に空間の歪みが発生する。
「とりあえず今は…聖女様の元へ向かおう。」
俺とアンドロメダが歪みへと入ると、空間は元に戻った。歪みの中は俺たちしか入ることの出来ない空間となっており、ここなら他の追随を心配する必要はない。
一気に静けさを取り戻した世界。
こうしてアストラと俺たちの戦いは一つの区切りがついたのだった。
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