表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天転星生〜異世界本の虫(ブックワーム)〜  作者: キノ
第二章 王国編
24/39

第二十三話 ''本の虫''


 「聖女…様?」


 目に入ったのは老人と話す聖女様の姿。

 その顔は…今までに見た事ないぐらい活き活きとしていて幸せそうだ…。


 「マナ君!みんな!」


 「お父さん!」「おとうさん!」


 聖女様も俺に気付き何か喋ろうとしていたが後ろから入ってきたベラクレスとオシリス、アルルに遮られた。


 良かった…みんな無事だったんだ…!


 「やぁベラクレスサマ。」


 「ジャック…!良かったよみんなが生きてて…!」

 

 「大袈裟だなあ。でも何回か死にそうだったね。」


 「にゃははは!たのしかったにゃ!」


 ベラクレスはジャックら一行と話している。


 「お父さん!お父さん!ぼくたちだよ!オシリスとアルルだよ!」


 「おとうさん、大丈夫!?」


 オシリスとアルルは心配そうにアルゴーの元へ駆け寄った。

 回復魔術をかけたとはいえ、普通では死んでるかもしれないぐらいの重傷。

 生きているのが奇跡なほどだ…。


 「おお…お前らか…!無事で良かったぞ。」


 「マナさんと聖女様が守ってくれたんだよ…!」


 「そうだよ!オシリスおにいちゃんもアルの事守ってくれたんだ…!」


 二人の言葉を聞き聖女様の方をチラと一目するアルゴー。


 「マナとステラーには改めて礼を言わねばいかんなぁ…。」


 各自再開を果たしている中、奥ではイタイタスが腹をさすりながら老人を見ていた。

 片腕はカーフェにやられたためなくなっている。


 「チッ…。アンタもう来たのか。」


 老人はずっと聖女様の方を見ている。

 まるでイタイタスなどいないかのように振り返りもしない。


 「お前が手間取っているからではないか。なんだねそのザマは。それに…」


 老人は俺の方を凝視してきた。


 「ッッ…!?」


 鋭い金色の瞳に俺は体が動かなくなってしまう。

 なんだこの寒気…。

 初めて会ったはずなのに体の内からみるみると滲み出す怒りと憎しみ。


 手に握られる本、''神の書物(アンドロメダ)''も呼応し赤くチカチカと光を灯している。


 体の中を激しい憎悪が渦巻く中、聖女様がついに口を開いた。


 「マナ…!!無事で何よりです!あなたなら絶対に大丈夫だと思っていましたよ!あ、こちら紹介しますね。以前話した私の父で魔術の師でもある賢者ケトス様です。」


 「…賢者?」


 ''賢者''。旅立つ時に村長と交わした約束が頭の中を流れた。


 『賢者と出会ったら必ず殺せ。』


 俺が感じた感覚は間違ってなかった。

 目の前にいる老人から感じるのは邪悪そのもの。

 人ではなく魔物に似た気配。

 人の皮を被った化物…!!


 「うおおおおおお!!!」


 ''奴を殺す''そう決意すると異常なまでの力が俺に溢れてくる。

 まるで本からエネルギーがどんどん流れ込んでくるかのようで…


 いや、今までもそうだった。

 しかし今はより一層本との繋がりを強く感じる。


 「マナ…!?何をしてるのですか!?」


 「おいガキィ!テメェなにしやがる!?」


 周りも困惑し始めるが構わない。


 さっきの聖女様の笑顔が見れなくなってでも俺は…彼女を守るためにこの男を殺す…!

 恨まれても良い…何がなんでも殺す…!


 「あの光…!あれまるでホシの勇者の…!?」


 アルゴーが何かに気付き小さく呟く。


 俺が発するエネルギーは水色に輝き、体の周りを走り続けている。


 心当たりは…もちろんある。

 あの時村長より授かった勇者の力が今、俺の心に呼応して現れたのだろう。


 腕を賢者へと向ける。

 万が一聖女様に当たらないように的を一点に集中。


 「お前がマナか。私の本につく虫。本の虫(ブックワーム)め。」


 老人もとい賢者ケトスは俺の事をまるでゴミを見るかのような目で一瞥する。


 力は溜まった。

 あとはやるだけだ…!


 「聖女様…すみません…!!開放!!」


 刹那、俺の腕から青い閃光が走る。

 光が消えた後に音が追いついてやってくるまさしく光速の魔術は以前ロックスに放ったものと酷似していた。


 しかし威力は段違い。

 閃光が城内全ての人間の目を眩ます。


 そして…一瞬にして賢者に直撃した。


—————


 キイイイイイイン!!


 魔術が直撃した衝撃で高い音が鳴り響く。

 

 「け、賢者様ああ!!!」


 聖女様の嘆く声が俺の耳にこだまする…。

 ああ…心が痛いなあ…。

 これで俺は聖女様の中で親殺しのクズとして認定されてしまう。

 これが終わったら一人で旅でもしてみよう…。


 だが奴もこれには耐えられないだろ。

 村長との約束は果たせた…か?


 「こんなもので私を殺したつもりになったか?」


 巻き起こる煙の中から…声がした。


 「なっ…!?」


 視界が晴れてくる。

 そこに見えたのは…防御魔法を使い容易く俺の攻撃を防いでいた奴の姿だった。


 「さあ、''神の書物(アンドロメダ)''は私のものだ。返してもらおうか。」


 ゆっくり、ゆっくりと俺の方へと賢者はやってくる。

 何事もなかったかのように服についた汚れをはたきながらだ。


 なんで…あれで生きてる…?

 俺、殺されるのか?


 「マナ君!ボクたちの後ろにいろ!」


 ジャックたちが俺と賢者の間に立ち塞がる。

 俺は…体が震えていたんだ…。

 目の前のどうしようもない恐怖に。


 「マ…ナ…。奴から逃げるんだ…。」


 「アルゴーさん…?」


 アルゴーが俺の肩を掴み立ち上がる。


 「おおっと!俺様を忘れるんじゃねえぞ!?」


 イタイタスが突然そこに現れた。

 アルゴーは俺を突き飛ばし自分が身代わりとなったため、壁へと蹴飛ばされてしまった。


 「ガハッ……!!」


 「お父さん!!」


 「おとうさん!!」


 オシリスとアルルに気付き鬱陶しそうな表情を浮かべるイタイタス。

 まずい…!二人を守らなくちゃ……


 「チッ…うるせぇガキどもだ。すっこんでろゴミ!」


 イタイタスはアルルを軽く蹴り遠くへと吹っ飛ばした。


 「きさまあああ!!!」


 俺がイタイタスに向け魔術を撃とうとした時、オシリスが凄まじい力を放ち始める。


 「アルルを…お父さんをよくも…!!」


 こうして戦場は混沌(カオス)としていく…。


 


 


 

二十四話は二十時あたり投稿です!

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ