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天転星生〜異世界本の虫(ブックワーム)〜  作者: キノ
第一章 村防衛編
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本を拾った 転生した



 俺は本を拾った。


 コンビニ帰りの道端に落ちてた分厚い本。

 表紙は燦々と照り続ける日差しで黒い表紙が光を放ち俺の目へと飛び込んできた。


 (だ、誰もいない…よな?)


 周りに誰もいないことを確認し、恐る恐る本を拾ってみる。

 考えてみればこんなとこでキョロキョロしてる方がヤバいな…見たら早く帰ろ…。


 中を開いてみるとどうやらファンタジー系の本だったらしく、魔法についての事や魔物の倒し方だとかアイテムのあれこれがぎっしりと載っている。


 俺はなぜだかその本に興味を持ち、一度持ち帰ってみる事にした。


—————————


 部屋には机とキーボードが置いてあり、床にはゲームが散乱している。

 見る人が見れば汚いと口うるさく言われそうだが、生憎俺にそんな事を言ってくれるような人間は存在しないのでずっとこのままである。


 「ま、配信で話すネタになるしな。」


 俺は細々とゲーム実況者をやっていた。

 高校生までは上手くいっていたと思う。

 どこから堕落していったんだろうな…今じゃ一日中ゲーム三昧、かといって配信者として成功を収めたわけでもない。


 だけどこの生活は好きだ。

 俺は何事も楽しむことをモットーとしてる。

 なのでこういった本は話す話題にもなるし、ゲームが好きな俺にとっては魅力的なのだ。


 本の内容は先程も言った通り呪文の詠唱文、魔物の種類と倒し方や様々なアイテムの在り処と言った攻略本のような内容である。

 しかし、驚くべきはその完成度。


 「すげえ…!誰が書いたか知らねえけどとんでもない作り込みだぞこれ…。」


 一瞬で世界観に引き込まれ、読み耽った。


 「ふむふむ。この''体内魔力循環''ってやつと''魔力生成''、''詠唱破棄''ってのは便利そうだな。魔術との組み合わせが良さそうだ…。」


 ここでゲーマーのサガってやつが出てしまい、''攻略''しようとしている自分がいる。


 しかし突然本が眩い光を放ち始める。


 「なっ…!!なんだあ!?」


 本は光るのをやめず、その輝きを増していく。

 突風が巻き起こりページはバサバサと荒れ狂う。机の上で暴れ回っていた。


 「う、うわあああああああ!!!??」


 まるでこの世の終わりかなような水色の光を放ち、俺は呑み込まれてしまった。

 そこで俺の姿は部屋から消える。


 最後に見た光景…。

 それは本が開いていたあるページである…。


 そこに記されていたのは、''異界からの召喚魔術''について書かれたページだった。


———————



 目が覚めた。

 だが、さっきの光は収まっているというのに部屋が明るいぞ…。

 電気をつけた覚えはないがいつの間についたんだ?


 「グスッ…うう……。」


 「ああ、ようやく……。」



 なにやら周りで鼻を啜る音や、誰かの泣く声が一斉に聞こえてくる。


 なんだ?

 周りを見渡してみると…。


 「なっ…!!だ、誰だ!?あんた達!!??」


 俺の周りにいたのは見知らぬ大人達。

 あまりの驚きで後ろに飛び退き、手を前に出した。

 できる限り己の身を守ろうとしたのだが…。


 「あ、あれ?なんだこれ。俺こんな手、小っちゃかったっけ…?」


 突き出した手は俺のものより明らかに小さく、まるで子供の手だった。


 「まさか…。手だけじゃない、足も、体も、全部おかしい…。うわっ!髪、赤色じゃねえかよ!?お、俺は誰なんだ…!?」


 「ああ…マナ!!ついに目が覚めたんだね…!!」


 「母さん…!!やったな!俺たちのマナが…マナが目を覚ました!」


 自分の体の違和感について考えていると、比較的若そうな二人の男女が俺を前にして喜び、感動でお互いの体を抱き合っている。

 二人とも俺と同じような燃えるような赤髪である。


 (は…?マナってもしかして俺の事じゃないよな…?)


 瞬間、俺の頭に先程の光景がフラッシュバックする。

 あの時本が開いていたページは…。


 「異界からの…召喚魔術…!!!」


 自分(?)の体を触ってみた。


 「め、めちゃくちゃ小さいし、痩せてもいる。

それに髪もクソ長い…。そして一番は髪が赤色…?」


 俺の体は明らかに元の二十代後半のものではなかった。

 今この瞬間、俺の体はわずか十歳程度の肉体となってしまっているらしい…。


 「マナ、寒くねえか?」


 きっと父であろうと思われる人物に話しかけられる。


 するとその男は何やらブツブツと呟くと、空の暖炉へと手をむける。


 なんと、手を向けた時男の手からは小さな炎の玉が放たれ冷たかった暖炉に温もりを与えた。


 さっきまでついていなかった暖炉がパチパチと心地よい音を立てて燃えるさまを見てしまってはいくら俺でも何が起こったか理解してしまった。


 「うん…。これは異世界転生だ……………」


 「敵だあー!!!魔物が攻めてきたぞ!」


 こうして俺の異世界生活は、村人の雄叫びによって開幕したのだった。




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