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22.ネコ

「ラングドシャって猫の舌って意味なんですか?」


「そうそう、楕円形でザラザラしてるのが猫の舌っぽいからそう名付けられたらしいよ」


「へえ!」


 猫を抱っこしてギルドへ帰る途中、ネコスキーの由来を聞いてからいつの間にか猫についての豆知識の話になる。

 さすがネコスキーと名前につけているだけあって、すごく猫の豆知識が多い、それに話すのが上手で聞いていてとても楽しい。


「そう言えば、ロゼくんって関西住み?」


「えっ……と、生まれたところは近畿なんですけど、今は親戚のお家にいるので関東、かな?」


「そうなの、関東なら“トムのおみやげ屋さん”って言うクッキー専門店が美味しいんだけど、行ったことある?」


「あんまり、お出かけとかしてなくて……どんなお店なんです?」


 少し言葉に詰まりながら、()()()そう聞き返せば、クロさんは空中で何か操作をした後、目の前にお魚型の看板がついたお店の画像が浮かび、その横にはそこで売られてるクッキーの詰め合わせの一覧が出ていた。


「チューチュークッキー、ピヨピヨクッキー、モザイクッキー」


 名前や写真を見る感じネズミやヒヨコ、あとはよく見るチェック柄のモザイ()クッキーばかりで、猫モチーフは見あたらない。


「これね、トムって言う猫がおみやげで持って帰ってきたって設定の生き物をクッキーにしてるんだ。このモザイクのやつは元々虫モチーフだったけど、食べにくいってことでこうなったんだよね。

 蝶々と蛾の時はフルーツ味とココア味で好きだったんだけどなー」


 そう言いながら、また操作するとお店ではなく自分で撮った写真らしいのが表示された。

 そこには赤やオレンジ色のジャムが乗ったオシャレなクッキーと、たしかにリアルで食べにくそうな茶色いクッキー、見切れているけどネコスキーさんの手が写っていた。


「美味しそう!」


「でしょー? ここのラングドシャが好きなんだ、間にビターチョコが挟まってるやつ」


「食べてみたいな~。あ、ギルドだ! 報告してきますね!」



 

 急いで依頼報告を終わらせてギルドの外へと出るとクロさんは待っていてくれたようで、近くの建物の壁にもたれて手を振っていた。


「クロさん、ありがとうございました!」


「良いよ良いよ、可愛い子には優しくするものだし」


 ウインクしながらまるでドラマみたいな言葉を言うクロさん。普通なら似合わないようなセリフと行動なのに、顔が良いからかすごくかっこよく見えちゃう。

 のんちゃん達もそうだけど顔が良い人ってそれだけで決まっちゃうから羨ましい。


「せっかくだし、このまま一緒に遊ばない?」


「一緒に、ですか?」


「うん、ダメ?」


 そう聞かれて断る理由もないしと頷けば、クロさんも嬉しそうに笑顔を浮かべた。


「同じ召喚士だし、可愛いモンスター探しに行く?」


「行きたいです!」


「んー、まずはどこに行こっか。

 そう言えば、ロゼくん、アスリーとフレンドになったんだよね?」


「…………え」


 どうして、それを知ってるんだろう。


「ん……んん? あ! 私、アスリーとリア友でそれで聞いたんよ」


「そ、そうなんですね」


 私が固まっていたからか慌てて教えてくれるクロさんに少し笑いそうになったけど安心した。

 二人のテンションと言うか、空気が違うから友達と言われると少し不思議な気はするけど、クロさんなら友達がたくさん居そうともすんなり思えるの不思議。


「それで、ね。私もロゼから聞いてスライムを進化させてみたんだ」


 どんなのか聞く前に、クロさんは進化させたスライムを召喚し始める。キラキラと光のエフェクトから現れたのは――火の塊?


「火の玉?」


「そうそう、ヒノタマ。名前はタマ!」


 クロさんがそう呼ぶと目の前に現れた大きな火の玉は形を変えて、猫の形になって地面に着地した。

 耳や尻尾はあるけれど、足はなくて炎の形がそう見えるような……独特な見た目をしてる。赤く燃えるタマちゃん?をじっと見つめれば、金色の目らしきものがこちらを見返してゆっくりと瞬きをした。


「燃えている……猫?」


「そう、猫。だから火の(たま)何だって、タマちゃん少し火力弱めてー」


「わあ、猫になった!」


 言われてみたら猫に見えなくもないと首をかしげていれば、クロさんがこうすれば見やすくなるのとタマちゃんに火を弱めてもらうようにお願いすれば、メラメラと燃え上がっていた赤い炎が少し収まると耳の中や尻尾の先、体の所々に火が付いた黒猫になった。つまり、猫のタマとかけて、燃えているタマでヒノタマ?


「一応、くくりで言うとゾンビ系かなー。復讐に燃える猫って説明だったから」


「……物理的に燃えてるんですね」


「えっと、たしか、魔女狩りで一緒に狩られた黒猫が恨んだ姿ってあったかな? 懐くとこう猫に近い姿になって触らせてくれるよ」


 そう言いながら抱き上げているけど、タマちゃん、前足をピーンと伸ばしてだっこ拒否してる。


『ギャーーー』


 なんか、めちゃくちゃ鳴いてる。


「可愛いね~嫌なんだね~」


「……攻撃されてません?」


「懐きにくい子だからね、まあ、いずれなづっ!!? ヤバッ、クリッた……」


 ジタバタと暴れるタマちゃんを抱き締めていると、何やらダメージのエフェクトが出てる。心配して声をかけたら、その瞬間を狙ったかのようにタマちゃんのネコパンチがクロさんの顔面にクリーンヒットして、やけどの状態異常になっていた。


「やけど……って大丈夫なんですか!?」


「うっわ、そうだった、クロは属性違うんだった……」


「属性によって状態異常と何か関係あるんですか?」


「そうだよ。赤なら火、つまり、やけどに耐性があるって感じで、メインの属性と同じ状態異常は無効、サブなら半減するんだよ」


「へー! 私はメインが赤だからやけどが無効で、サブが青だから……」


「青は眠りだから眠さ半減だね」


 そう言って、いつの間にか表示していた状態異常一覧と属性一覧の関係図を見せてくれた。

 毒は奇数、やけどは偶数のターンでダメージ、麻痺は奇数、眠りは偶数のターンで行動ができなくなる。呪いは単体ではなにもないけど、状態異常無効をなくす……っと。


「これって、それぞれ治す方法ってあるんですか?」


「薬とか回復魔法とかで治るけど呪いは治せないね、これは特定のモンスターを倒したことで付くデバフみたいなやつで、そのエリアを抜けない限りそのまま」


「そうなんですね……じゃあ、私が呪われて、やけどになった後にそのエリアを抜けたらどうなりますか?」


「良い質問だね、そうなると呪いごとなぜかやけども消えるよ。奇数偶数で発動するのもそうだけど変わってるよね~」


 そうなんだと頭の中でメモしながらふと笑うクロさんを見れば、定期的にやけどのダメージを受けてるのか、まだ、エフェクトが出てる。

 あ、よく見たら暴れてるタマちゃん小脇に抱えてる!? ダメージ受けてでもだっこしときたいの!!? タマちゃん怒ってるのかさっきの黒猫姿じゃなくて大炎上してるんだけど!


「攻略サイトの方にね、転職で召喚士になった場合でもこう言う可愛いモンスターを仲間にできる方法が知りたいって来てて、それができるか調査中」


「そ、そうなんですね。アスリーさんは知らないんですか?」


「ストーリーの途中くらいでミッチーと仲良くなってそこら辺で転職してたからね、ずっと召喚士ではなかった……はず?」


 聞いていいのか分からなかったのでそのまま会話を続けているけど、すごくタマちゃんが燃えている。これが復讐……と言うよりは怒りの炎ってやつなんだね。


「だから、まずは普通のスライムを捕まえて、それをどうにかして進化させられないかなーって検証するの」


「普通のスライムも進化させられるんですか?」


「いや、無理。そもそもスライム自体が転職後の召喚士ではテイムできないだよね、召喚士で始めていたら進化するスライムもテイムできるのか、それを譲渡できるのか、それを調べようかなって」


 そう言いながら器用に操作していくつかのネコ系のモンスターを見せてくれる。


「ヒノタマ以外にも猫系がいっぱいいるからできたら増やしたいんだ」


 そう言いながらニコニコしているネコ……クロさん、本当に猫が大好きなんだね。前に見せてもらったバッドエンドールの他の子も欲しいし、テイムして増やせたらいいな。


「あれ、でも、レベルでテイムできるのが変わるって聞いたんですけど」


「あー、スライムに関してはそもそもテイムできないのが常識的なのがあって上限に影響するか不明でさ、もしかしたら、召喚士ってスライムメインのテイムが基本なんじゃ?ってのがギルドで上がってて、ロゼくんがレベル以上の数がテイムできるなら、それが本当の可能性出てくるから一緒に行って欲しかったんだよね」


 なるほど、つまりサンプルがたくさん欲しいってことで遊びに誘われたんだ。なんか少し残念だけど、クロさんみたいな強いプレイヤーが私と遊びたがる理由も納得できる。


「それじゃ、スライムの多いところに行こっか」


 クロさんが差し出した手を握ると私達を囲うように模様が浮かんだ。


「え? これ、って」


「移動魔法で目的の町まで飛ぶから、ね?」


 あ、ウインクもさまになって――グルグルグル視界が白と黒で埋まった。


「なんでネコスキーが?」


「あれ? ボク座標のやつ使ったんだ、珍しいね」


 そこに居たのは知らないネコ系の種族の人達。配信では見かけたことがない人だけど、クロさんと親しげに話してるってことは同じギルドのメンバーなのかもしれない。


「そっちの子は? 見たところネコ……じゃないよね?」


「ああ、この子はギルメンのフレ、今は私ともフレンド」


 へえ、と気の抜けた返事をした二人はこちらをジロジロと不躾に見てきて距離感が近い。


「はじめまして! ボクはキャリ子! ヨロシクね」


「オレはタビー、よろしく」


 そう言って二人同時に右手を差し出してきた。

きりがいいところと考えたら短くなってきました。

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