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21.マッシュルーレットと猫探し

「これは、マッシュルーレットですね! 右回りは食用で、左回りは薬用になる珍しいキノコなんです、回ってる方向と逆向きに捻ることで傘を取ることができますよ」


 そう、ニコニコと説明してくれるのはバニラくん。イベント終わりだから何かしら特別な会話があるかもと、受付で見かけた時は呼んでわざわざ彼に受付してもらったのに、聞けたのはマッシュルーレットの説明。

 いや、うん。マッシュルーレットの説明も面白いよ、聞いたおかげか表示が“マッシュルーレット(右回り)”から“マッシュルーレット(食用)”に変わったし、でも、期待しちゃうじゃん! イベント前には居なくてイベント終わったら受付に居るのってなんかあるって思っちゃうじゃん!


「軸は何に使えるんですか?」


「軸ですか? 武器の材料になるとか聞いたことはありますが……あまり、そちらは詳しくなくて。

 そう言えば、知り合いの夫婦で鍛冶屋をしてる人がいたような」


 キノコの軸が武器になるなんてファンタジーと驚いていたら、目の前に選択肢が現れる。えっと、鍛冶屋の夫婦を受注しますか? つまり、キノコの軸で作られた武器が見れるってことかな。

 ワクワクしながら受注すると、バニラくんが世間話として家の場所を教えてくれた。その後は普通に受けていた“キズグリリーフの納品”を納品する、外れ枠的なのかと思っていたけど、これも薬の材料になると言うことだけは教えてくれて、報酬はQ(キュウ)だけもらって終わった。

 作り方を教えてもらえなかったのって傷薬と違って特殊な薬だったからなのかな?


「とりあえず、せっかく教えてもらったから鍛冶屋に行ってみよっと」


 バニラくんから教えてもらったし、貰った地図に載ってないかな?と取り出してみたら前に見た時にはなかった印がついていた。

 ここを曲がって進んで二つ目の角を……なかなか遠そう。


「う~ん、猫探しもしながら行こうかな。そもそも、どうやって猫探すんだろ」


 猫、ねこ――ネコ? そう言えばフレンドになったネコスキーさんならこう言う依頼得意だったりするのかな、でも、ログインしてなかっ……あれ、ログインしてる。

 のんちゃんやみっちゃんは、ログインしてない。大学って同じところに通っていても終わりの時間は一緒じゃないの?


「どうしよう、うーん……ええい、連絡しちゃえ!」


 さっき、アスリーさんに連絡できたのだからネコスキーさんのもできるはず!と、アイコンをタッチすればクルクルと呼び出しマークが消えてすぐに繋がっちゃった。


『もしもし、どうかした?』


「あ、えっと、あの、ネコスキーさんに聞きたいことがあむ……あって」


 まさかすぐに出るとは思ってなくて噛んじゃった。


「あの、猫探しって依頼はどういう風にするのか聞きたくて」


『……猫探しはそこら辺を歩いているNPCに話しかけたら、確率で見かけたって情報が手に入って、それをある程度集めると猫が出てくるようになるよ』


 恥ずかしくて質問になってない聞き方だったけど、ネコスキーさんはスラスラ答えてくれ、優しい人で良かったと安心しつつ、教えてもらった内容にギョッとする。


「人と、話さないといけないんですか?」


『コミュ系のクエストだからね、難しそうならやめる方が良いよ?」


「…………え?」


 声が後ろから聞こえて、ビックリして振り返ればそこにはネコスキーさん――らしき人がいた。

 見た目や雰囲気は似てるんだけど、なんか、前にあった時よりも、なんか、こう、分からないけど違う感じがして、戸惑っていたらニッコリとまるでチェシャ猫みたいな笑顔でこちらに近づいてきた。


「ふふ、驚いた?」


「ネコスキー、さん?」


「ん? あ、そうか、この姿で合うのははじめましてだね。

 どうも、クロヒョウのクロ()()()だよ」


 そう言われてじっくり見ると黒髪で最初は分からなかったけど、光の当たり方でヒョウ柄らしきものが浮かんでいて、目の色も前に会った時は金色だったのに今は綺麗なスカイブルーだ。

 ヒョウってことはつまり……。


「ゴロロウ族?」


「せーかい。ふふ、前にブルーベルについて教えてくれたでしょ? あれの検証のために新しく作ったアバターなんだ。前は女だったけど、こっちでは男のアバターで召喚士してるんだ」


 そう言われたらどことなく声も低くて、なんとなく体もガッチリしてる気がする。


「じゃあ、クロキュンさんって呼べば良いですか?」


「あ……キュンまで名前にしてたんだった。クロで良いよ」


「わかりました!」


 ちょっと個性的な名前だな?と思いながら返事をすれば、NPCから呼ばれる時にキュン付きで呼ばれたくてそこまで名前に入れたとか何とか、早口で理由を教えてくれた。

 でも、さん付けで呼んでくるキャラも居なかったっけ?


「それで、どうする? 猫探す?」


「うーん、NPCとは言っても話しかけるのは苦手なんですよね」


「そっか……ちなみに、その依頼、まれに()()()ことが起こるんだけど」


 面白いこと?と思わず見上げれば、ニッと口の端をあげてかっこよく笑う。


「ふふ、実はこう言う重要そうじゃない依頼にな、ランダムで特殊なフェアリーテイルって言うイベントがあるんだ」


「フェアリー……えっと、妖精の尻尾ですか?」


「そういう意味もあるけど、おとぎ話って意味もあるよ」


 楽しそうな笑顔でクロさんは説明してくれた。

 猫探しは普通に猫を探すだけで終わる場合と、低確率で妖精猫と呼ばれる猫に出会い、猫の国で迷子の猫を探しに行くと言う、なんとも素敵なイベントが起こることがあるらしい。


「猫の国!」


「ね? ね? 素敵でしょ? ロゼくんなら分かってくれると思ってた!」


「でも、確率は低いんですよね?」


 嬉しそうに私の両手を握ったままニンマリと笑みを深めるクロさん、前に見た時から思ってたけど、男キャラになるとよりイケメンに見える……背もすごく高いし、課金してたとしても元の背が高くないとここまで高くならないよね。


「――と、言うわけで何度も猫の国に行くと確率が上がるんだ!」


「そ、そうなんですね!」


 あわわ、顔に見惚れててちゃんと聞いてなかった。と、とりあえず、返事をすればそのままパーティを組んで一緒に猫を探してくれることになった。

 依頼書で探すことになる猫の見た目は二十四種類もあるそうで、特徴によって聞き方を変えないと上手く探せないみたい。


「あ、珍しい。パステル三毛じゃん」


「パステル三毛?」


「薄い色の三毛柄猫ちゃんのこと、ふむふむ、よし、覚えた! 私が片っ端から話しかけてくるから、ロゼは話に入れたら入る感じで探してみよっか」


 クロさんの提案に私は喜んで頷き、ご機嫌に立てられた黒い尻尾のあとに……あ、尻尾もよく見ればヒョウ柄がある。


「すみませーん、薄い三毛柄の猫見かけませんでした?」


 揺れる尻尾を目で追っているうちにいつの間にかクロさんは一人目のNPCに話しかけていた。私も話をと追い付く前にまた別のNPCにと次々に話しかけていて、話に入る暇もない。さすがに私が受けた依頼なので私も勇気を出してNPC――の子供に話しかけた。


「あ、あの、薄い茶色と灰色と白の模様の猫を見かけませんでしたか?」


「猫? 猫ならよく向こうの路地裏にいるけど……そういう柄は見かけたことないかな」


「そ、そうですか。ありがとうございます」


 バイバイと元気に手を振って走り去っていく男の子に手を振り返していれば、肩を叩かれる。


「情報見つけたよ」


 ……はやい。さすがねこすきさん。


「あっちの路地裏だってさ」


「え、さっき聞いた子は見かけたことないって」


「まあまあ。さぁ、行くよ!」


 居ないと言われた路地裏の方へとどんどん進んでいくクロさんに、ちょっと不満に思いながらもついていけば、男の子の言った通り路地裏にはたくさんの猫が居た。

 黒、灰色、茶トラ――パステル三毛はもちろん、三毛猫も居ない。


「いない、ですよ?」


「今回は猫の国には行けなかったけど、ボスネコには会えるみたいだよ」


 そう言いながら猫達の間を進んでいくと、一番奥に丸々と太った白と黒の、口元に黒子のような黒い模様のある猫の前にクロさんがしゃがんだ。


「こんにちわ、ネコ探してるんだけど知らない?」


 クロさんの声なのにどこか違うようなその言葉を聞いたボスネコ?はゆっくりと座り直してナァゴと大きく一鳴きした。

 すると周りの猫達がニャゴニャゴとまるで話し合うように鳴き始めて、周りを見渡していると、ボスネコの後ろ、路地の奥の方から一匹の黒猫が現れてクロさんの前にちょこんと座った。


――ニャァアオ!


 その猫の一鳴き(?)で猫達は鳴き止むとパッと物陰や建物の隙間へと逃げていき、どう言うことなの?とクロさんを見たらすごく楽しそうな笑顔をしていた。

 ……クロさんってイタズラとか好きなタイプなのかも。


「この子は通称“案内猫ハート”。ほら、胸のところに白い毛がハート型になってるでしょ? ボスネコが呼ぶことで現れるレア猫の一匹!」


 クロさんに言われてよく見れば、確かに赤い首輪の下辺りに白い毛がハートの形になるように生えていた。


「首輪……ってことは飼い猫ですか?」


「よく首輪に気づいたね!

 貴族のNPCが飼ってる猫だよ、普段は近づくと逃げるけど、このイベントの時だけこんなに近くで見れるんだ~」


 そう言いながらクロさんが手を伸ばすと、触れるか触れないかの距離でスルリとそれを避けて不満そうにニャゴニャゴ鳴いた。


「か、可愛い……」


「よねー! さ、この子についていけば迷い猫のところに行けるよ」


 クロさんに手を引かれてハートちゃん(?)の前に立てば“ついていきますか?”と文字が現れ、私は振り返ってクロさんに確認すれば頷きを返される。

 緊張しながらその文字をタップすれば、ハートちゃんは尻尾をピンと立ててゆっくりと歩きだした。


 先っぽだけ白いからか、路地裏ではまるで光ってるよう見えるユラユラと揺れる尻尾の後ろをついて、路地を右へ左へまた左とくねくね進んでいく。途中であってるのか不安になり立ち止まりそうになったけど、足はハートちゃんの後を追い続ける。


「あ、開けた」


 明るい光に少し目が眩みながら路地裏から出れば、そこはどこかのお店の裏で、ちょうど扉のすぐ横に探していた猫が丸くなっていた。

久々に書いたので今までより少し短いですが、楽しんでいただけたら幸いです


06/08:種族名が不適切、また、覚えにくかったので大幅に変更しました。

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