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1.カフェ「さんかくす」


カランカランとカフェ「さんかくす」のドアが開く音がする。


扉からはけたたましく鳴く蝉の声が入ってくる。


「待たせたか?」


遅れて入ってきた180cm台の大男が悪びれることなくきく。

待つも何も2時間遅刻だ。


「湯上、次のターゲットが決まった」


大男が僕の隣のカウンター席に座るなり、カウンターの内側に立つ(こちらも170後半はある)眼鏡をかけた男がいう。


「ほう、久しぶりの仕事だな。夏の仕事は嫌いなんだが、、誰を騙す?」





僕らは詐欺師だ。



名前を名乗る前に職業をいうのは失礼だったかもしれない。

紹介しよう。


遅刻して今店に入ってきたのが湯上蒼月。

正確な歳は教えてもらったことがないが、見た目と時々口ずさむ歌からは30台後半と推測できる。

普段は人探しなどの依頼を受ける探偵をやっている。


店のカウンターに立つ男は、中川六輔。

今いるカフェ「さんかくす」を1人で経営している。

男の自分から見てもなかなかのイケメンで彼目当てでこの店に来る女性ファンもいる。


そして僕は川上。大学生兼2人の見習いと言ったところだ。




「こいつを知っているか?」



中川さんはそう問いかけながら、僕らに写真を投げ渡す。

写真には誰もが知っている人物が写っていた。


「寒川照史じゃないですか!

 僕が小さい頃から今に至るまでずっと現役

 で、もう53歳とかでしたっけ」


「おい川上。勝手に話を進めようとするな。

 誰だこいつは」


湯上さんが不服そうに写真を睨見ながら呟く。


「サッカー選手ですよ。

 僕もそこまで細かくは知らないですけど、  

 確か海外でプレーしていたのが、数年前に

 国内に帰ってきて53になった今でも現役

 でプレーしてるんですよ」


世間外れな湯上さんに、国民的スター選手の説明をするも、当の本人はピンときていない様子だ。


「そんでそんな大スター選手をなんでまた?

 金は持ってるんだろーが、、」


不貞腐れながら湯上さんは写真をカウンターに捨て置き気怠げにタバコを取り出す。


「理由は知らなくていい。

 3億騙してこい」


湯上のタバコを奪い捨てながら無愛想に言い放った中川さんが、僕に向かって一枚の履歴書を渡してくる。


「まずは川上に寒川家に潜入してもらう。ちょうど照史の一人息子の新くんの家庭教師を探しているらしい。

ツテを使って紹介する。

寒川家の内側から常に湯上と連絡を取り合ってくれ」


「おい。勝手に話進めんなって言ったろ。こいつのことを部下扱いすんのはいいが、俺はお前の部下じゃない。

それに黒奈はどうした?まだ連絡つかないのか?」


睨みつけながら湯上さんに中川さんがメガネ越しに睨み返す。大きなため息をし鋭い声で言った。


「要件が分かったら早く帰ってくれ。誰かが遅刻したせいでもうオープンの時間だ」


質問の答えがなかった湯上さんは分かりやすく舌打ちして席を立つ。


「川上行くぞ」




日光にジリジリと照らされながら湯上さんの探偵事務所までの道を歩く。


「あの、さっき湯上さんが言ってた黒奈って誰なんですか?」


湯上さんは視線の先を変えずにつまらなさそうに答える。


「昔一緒にやってた女だよ。最近は何してんのか知らねーけど。

それよりお前、潜入なんて大丈夫なのか?」


正直自分でも不安ではあるが、湯上さんと中川さんに少しでも早く認めてもらうためにはやるしかない。


僕はそこから自分なりの入念な準備をし、寒川邸に乗り込むことになる。



謀略に塗れた屋敷に、、

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