塔と迷宮に、機関砲と装甲服で挑む話
「…………」
無言で狙いを付ける。
迷路状の都市の中で物影に隠れ敵が来るのを待つ。
20ミリの機関砲を構えながら。
身にまとう、というよりは中に乗り込むといった方が正確な装甲強化服。
身体能力の上層に装甲、各種兵器に感知機器を装着可能な武装。
それを着込んだ男は、視覚に直接映し出される映像に意識を集中していた。
身体に突き刺さった極めて細い神経接続針を通して。
これが男の感覚と運動機能と装甲強化服をつないでいる。
その神経接続針が各種感知・探知機器の上方を伝えてくる。
人型をした装甲強化服の頭に集中して配置されてるそれは、装着している男の目や耳となっていた。
それらがあらゆる情報を集め、演算処理を通して男に渡されていく。
予測される敵の位置と、最も効果的な照準として。
男はその位置に機関砲の銃口を向ける。
どこに狙いをつけ、いつ攻撃をするのか。
それらは自動化が進んでいても人間の手に委ねられている。
そうしなくてはならない事情もあるが。
そうした最終決定権を担いながら、男は迫る敵に向けて引き金を引いた。
立ち並ぶ生産施設によって作られた都市が産み出したもの。
戦闘用の機械に向けて。
二つの足が着いた卵。
そんな形をした敵機械に20ミリ機関砲弾が飛んでいく。
ねらい通りにそれは敵を貫通していく。
いかに金属製の身体であっても、砲弾を弾くことは出来ない。
砲弾によって内部の幾つかの機器を破壊された二足歩行の卵は、行動不能になっていく。
とはいえ、まだ破壊できたわけではない。
機械であるので、身体の一部を破壊してもまだ生きている。
中枢部分が壊れるまでは活動し続ける。
身体の大部分が破壊されて身動きが取れなくなってもだ。
だから、トドメを刺さないといけない。
食いぶちを得るためにも。
倒した機械に近づきトドメを刺す。
機能中枢を破壊し、完全にガラクタにする。
そうしてから、解体してエネルギー源をちぎり取る。
それこそ乾電池ほどの大きさのこれが、機械を動かす原動力になっている。
このエネルギー源、大きさと形から電池と呼ばれている。
その電池を回収して売り飛ばす事を生業としてる者達がいる。
機械の電池は効率的なエネルギーで、大きさの割に保有量が大きいからだ。
その為、人は敵の生命の源を使って文明を担ってもいる。
様々な機械の動力源として。
出来るなら、倒した機械の死体、残骸も持ち帰りたいところだ。
高品質な金属で出来てるからだ。
使われてる回路や身体を更生してる様々な器具もだ。
どれも高品質・高性能で、使い道が多い。
これらを持ち帰る事が出来れば、更に金になる。
だが、一人で行動してる男に運搬手段は無い。
残骸の方は諦めるしかなかった。
そうして戦闘をくり返し、エネルギー源である電池をいくつも回収していく。
持ち帰って売り払うために。
また、装着している装甲強化服を動かすために。
その場で燃料が調達出来るというのは色々とありがたいものだった。
ただし、危険も大きい。
機械の生産施設の中を巡ってるのだ。
敵はどこからでも出てくる。
常に先手を取れるわけもない。
先に発見されて攻撃を受ける事もある。
その都度、装甲強化服の周囲に張り巡らされたバリアが攻撃を防ぐ。
燃料を消費してエネルギーの防御膜を展開する装置は、何度も男の命を救った。
燃料をそのたびに消費してしまうのが玉に瑕だが。
命あっての物種だ、死ぬよりは良いと割り切る。
このバリアが、物理的な装甲以上に効果を発揮する。
敵機械の攻撃は戦車の分厚い装甲すら貫通するのだ。
人型の装甲服の薄い鉄板など造作も無く破壊する。
人間が使う拳銃やライフルならば造作もなく弾くほどの強度があっても意味がない。
事実上、バリアが命綱になっている。
これの残り燃料がHP・ヒットポイントのようなものだった。
攻撃を受ければ減る。
減ってエネルギーを補充して命をつなぐ。
そんな事をくり返しながら戦っていく。
戦ってエネルギーを奪って、攻撃を受けてエネルギーを失っていく。
奪った方が多ければ儲けが出る。
失う方が多ければ赤字になる。
赤字どころか、命を失う事にもなる。
可能な限り攻撃を受けずに倒す事が求められる。
綱渡りのような商売。
それをこなしながら、男はこの日の収益を手にして帰還する。
幸い、消耗よりも獲得したエネルギーのほうが多かった。
生活費と整備費用などを出しても充分にお釣りが来るくらいに。
預金残高でそれを確かめ、この日を終えることが出来た。
こんな戦いを、人類は各地で繰り広げている。
ある日、空から降ってきた塔によって。
宇宙からやってきた全長3000メートルの宇宙船。
長方形のそれは、地面にほぼ垂直に突き刺さると、中から機械の群れを放出していった。
そして宇宙船を中心に生産施設を建造。
迷路のように入り組んだそこから、更に多くの機械を吐き出していく。
周辺を制圧していくように。
人類はこれに対抗するために都市への攻撃を続けた。
しかし、数で圧倒する機械の群れを倒すのは容易ではない。
一進一退の日々をどうにか続け、前線を維持するのが精一杯だった。
そんな機械の群れを、人々は自然に敵とみなしていく。
各地にやってきた宇宙船を、その形から塔と呼ぶようになった。
その塔を中心とした迷宮。
人々はそこに挑戦する事を強いられていく。
終わりの見えない戦いは、いつしか生活の一部になってもいた。
迷宮に挑んでエネルギーや残骸を回収してくる。
それが商売として成り立つようになった。
危険な敵を吐き出してくる迷宮と、その中心に位置する塔。
そこに挑む、装甲服という鎧を着込んだ戦闘者達。
「ファンタジーだな、剣と魔法の世界みたいな」
自嘲的に誰かがそんな風に評する。
あながち間違ってもいない言い方に、誰もが苦笑するしかなかった。
「じゃあ、塔には魔王がいるのか?」
「そうなんじゃないの。
実際、怪物みたいな機械を吐き出してるんだし」
そんな声も上がっていった。
そんな場違いなファンタジー世界が強要され。
人はその中で生きていく事を余儀なくされていった。
「夢も希望もないけどな」
「ファンタジーのくせになあ」
そうぼやきながら、迷宮に挑んでいく。
それが終わるのは、全ての塔を破壊した時。
都市の中心である塔、空からやってきた宇宙船。
それらは指示を出してる中枢である。
破壊すれば周辺の都市も機能を停止する。
機械の群れもだ。
それを目指して、人々は戦いを続けていた。
そんな中で、ただ日々の生活の為に活動する者もいる。
中枢である塔の攻略なんて目指さない者達が。
ただ、日々の生活のために迷宮に入り、敵を倒す。
エネルギーである電池や、材料になる残骸を回収するために。
そんな一人である男は、翌日も、その翌日も迷宮に向かう。
高さ5メートルの装甲強化服の中に入り。
首の後ろに神経接続針を指し。
機械と一体となって機械の怪物に挑んでいく。
そんな日々をこなしていく。
生活費を稼ぐために。
「さてと」
装甲強化服の機能を確認する。
自己診断機能は、今のところ問題を見つけてない。
ところどころ注意が必要という表示は出るが。
いつもの事なので無視する。
出来れば修理したいが、そこまで金が回らない。
応急処置的な補修をくり返し、騙しだまし動かしていく。
様々な意味でギリギリな状態で、男は迷宮へと向かっていった。
大きな望みは抱かない。
ただ、生活費と補修費用だけを確保するために。
金も大事だが、命あってのものだ。
無理はしない、無茶はしないと自分に言い聞かせる。
同じように迷宮へと向かうその他大勢と並ぶ。
同業者ではあるが仲間とは言いがたい者達。
その中の一人になって、今日の稼ぎを手にすべく装甲強化服の足を動かしていく。
「今日も稼げますように」
そんな願いをいるかどうか分からない神様にお願いしながら。
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