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訪れる厄災

 私の顔が青くなっているのを見てイリスが話しかけてくる。


「ミア様、どうしましたか?」


 まだ竜種と決まったわけじゃないけど、それに近い何かが近づいてきてるのは間違いない。とにかく、このことを伝えないと。


「……森の奥から強大な魔物が近づいてきてる……。たぶん、竜種だと思う。」


 それを聞いてイリスも顔を蒼褪めさせている。


「それは本当なのかっ?」


 近くにいて聞こえていたのか"辺境の風"のリーダーのリントが話しかけてくる。


「……たぶん、竜種だと思う。絶対に竜種だとは言えないけど、それに近い力を持った何かが近づいてきてるのは間違いない」


「「「……」」」


 周りの"辺境の風"のメンバーにも聞こえていたのか誰もが話すことができない状態になっている。


 その中で盾役のリンドが意識を取り戻しリントに声を掛ける。


「リーダー。どうする? 本当に竜種なら俺達だけでは勝ち目がないぞ」


「……まずは正確な情報が欲しい。ミアさん、どちらの方角でどの程度の距離かわかるかい」


「真っすぐ西の方角、距離は……徒歩で2時間くらいだと思う。竜種はゆっくり移動してるからここまでまだ20分以上はあると思う」


「ラナ、確認を頼めるか? とにかく何が来ているのかが知りたい。カノン、念のためギルドマスターに協力が魔物が近づいている恐れがあることを伝えてきてくれ」


「……分かった」


「わかりました」


 ラナとカノンがその場から離れていく。


「残った者たちで、来ている魔物が竜種であることを前提に作戦会議を行おう。幸い、スタンピードは既に終盤だし、俺たち抜きでもどうにかなるだろ」


「まず、ミア達に言っておく。俺達"辺境の風"でも竜種は倒せない。ある程度の時間動きを抑える程度ならできると思うが致命傷を与える手段がない」


 竜種は総じて鱗が堅い、普通の剣や弓で鱗を貫通して致命傷を与えるのは不可能だ。


 私のもう一つの能力なら竜種相手でも致命傷を与えられる可能性はある。


 でも、かなり危険な上にしばらくの間"辺境の風"の人達に竜種を引き付けておいてもらう必要がある。


 なにより竜種を引き付けてもらうためには私の能力を説明する必要がある。


 できれば話したくはない。今日1日一緒にいて信頼できる人たちだとは思う……。


 でも、もしPTのみんなに怖がられたら、街の人に知られて街の人にも怖がられたらと思うと話すのを躊躇ってしまう。



 一人悩んでいると、イリスが近づいてきて抱きかかえられる。


「ミア様……、どんな結果になってもイリスはミア様とずっと一緒です」


「イリス……、ありがとう。もう大丈夫」


「……リントさん、お話があります。」


 私はリントに話しかける。


「私の能力を使用すれば、竜種を倒せると思います。ただそのためには、30分……、いえ、竜種がここに来るまでにあと20分ありますから10分この場に止めてもらう必要があります。」


「……とりあえず、話を聞こう」


「私の能力は2つ、一つはカノンさんは気づいているかもしれませんが魔力の隠蔽、詠唱中の魔力を外部から探知されません」


 この能力のおかげで詠唱を行っている間、竜種から身を隠すことができる。


「もう一つは、詠唱し続ける限り魔法の威力か射程を強化できる能力」


 強化の効率はそれほど良くない、そのため30分近い詠唱が必要になる。


 竜種にもよるが500年前に一度だけだけどこの方法で竜種を討伐したこともある。


「……少し考えさせてくれ」


◆ ◆ ◆


Side: リント


 ミアの言っていることが本当ならやってみる価値はある。ただ懸念もある。


 ミアの魔法で本当に倒せるのか、10分間俺達が耐えられるのか、それ以前にもし飛竜なら防ぐ手段がない。


 その時、偵察に出ていたラナが戻ってくる。カノンは既にギルド長を連れて戻ってきている。


 ラナとカノン、ギルド長に現状を話。ラナから偵察の結果を確認する。


「……竜種で間違いない。地竜。凡そ20分でここにたどり着く」


 一先ず最大の懸念材料だった飛竜ではなかったが、地竜は竜種の中でもかなり鱗が堅く俺達だけで倒せるかは絶望的だろう。


「現状で倒せる可能性があるとするとミアの魔法だけになるわけだが……」


 その可能性にPTメンバー全ての命を懸けていいものか……


「リーダー、可能性があるならやってみよう。どのみち、ここで食い止めないと街が蹂躙される」


 と、ランドが話しかけてくる。騎士団は未だスタンピードにかかりきりだ。ここに地竜が加わったら一溜りもないだろう。


「……街の防衛のため」


「慣れ親しんだ街がなくなるのも寂しいしね」


「はい、街の人を助けたいです」


 掛けるのは俺達の命、成功すれば街一つ救われる。賭けるには悪くないか……。


 みんなの方を向く、ギルド長が隅で一人寂しそうにしているがPTの特権だ我慢してもらうしかない。


「地竜を止める。成功させてみんなで街に凱旋だ。帰ったらみんなで宴会だな……。ギルド長の驕りで」


「俺かよ! まあいいさ、ギルドの経費で落とすからな」


「そこはかっこよく任せておけというところじゃないのかよ」


 みんなで笑い合った後、真剣な表情に戻る。


「さあ、そろそろ準備しようか」




 遠くから地竜が近づいてくる。


 勢いを付けた地竜が疾走してくる。ランドが前面に立ち腰を落とし盾を構える。俺とギルド長が後ろからそれを支える。


 衝突の勢いで吹き飛ばされるが地竜の勢いは止まる。


 俺とギルド長は耐性を整え左右に分かれ地竜に接近する。ランドはカノンが治療を施しすぐに地竜の全面へと走る。


 地竜が動こうとするがノエルが弓で牽制する矢では地竜に傷つけることはできていないが目を狙い飛んでくる矢を鬱陶しそうにしている。


 ギルド長と共に左右から地竜の頭を狙う……が、地竜には傷一つつかない、その場を飛んで地竜から離れる。


 地竜の正面ではランドが盾て地竜の攻撃を反らし何とか耐えている。カノンが後ろから治療し、ノエルが牽制して何とか拮抗を保っている状態だ。


 再度、横から地竜の顔を狙うが飛びあがったところで地竜の目がこちらを向く。


 大剣を地竜の頭に叩きつけ、接触した点を起点に無理やり体を反らせる。


 地竜の牙が体の横をすり抜ける。反動で飛ばされるが何とか致命傷は避けられた。


 地竜が苛立たし気に正面を睨みつけた後、頭を大きくのけ反らせる。これは、ブレス!?まずい!!


 その時、後方で強大な魔方陣が輝き氷の槍が生み出される。


 氷の槍はそのまま直進し、地竜の腕に突き刺さる……が致命傷とはならない……ダメか。


 諦めかけたその時、氷の槍と地竜の接触点から氷が地竜の覆うように広がりだす。


 体を、足を、尻尾を飲み込み頭へと向かうが地竜から魔力が溢れ氷に拮抗する。


 氷と魔力が地竜の首付近を中心にせめぎ合い拮抗状態を保っている。


『このままでは魔力が尽きた方が負ける。人と竜の魔力量では勝負にならない』


 咄嗟に体が動く地竜の首を狙い剣を叩きつける……、大剣が首に刺さるが浅い反対からギルド長が飛び込んできて獲物を打ち付ける。


 それが決め手となったのか地竜の動きが止まり頭まで氷漬けになる。


 これで終わったようだ。



◆ ◆ ◆


Side: ミア視点


 地竜が氷漬けになる……。終わったー、もう限界。


 最後の氷と魔力の拮抗で、私の魔力も体力も限界で歩くこともできそうにない。


 みんなが正面から戻ってくる。迎えようと正面を向いたとき、小動物が胸に飛び込んでくる。


 支える体力もなく、私は後ろ向きに倒れそのまま、気を失った。

次で1章は終わりの予定です。(予定です)

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