コツコツ頑張る人達
「ねえイリス、森のもう少し奥のほうに10人くらいの人の反応があるわ」
「森の奥ですか? 人数はどのくらいでしょう?」
「えっと……、10人だね」
「冒険者にしては少し多いですね。距離はどのくらいでしょうか?」
「歩いて20分くらいかな?」
「……この奥には目ぼしいものはありませんし、近づく者もいないはずです。……気になりますね。少し確認してみましょう」
私はイリスの後に続いて森の奥に向かう。20分程歩き続けると目の前に洞窟が見えてくる。
「この中でしょうか? ミア様、私から離れないでください」
洞窟を進むとすぐに広い空間が見えてくる。イリスが中を除くとそこには5人の男性が卓を囲み酒を飲んでいた。残りの5人は見張りのようだ。
「このような場所で冒険者が酒を飲んでいるとも思えませんし、山賊でしょうか?」
イリスが警戒しているみたい。私もこっそり横から顔を覗かせてみる。
「誰だ!?」
警戒をしている人の一人に気づかれる。イリスは気づかれなかったのに納得いかない……。
私とイリスは広場の入り口近くまで移動する。
あっ、ここにも卓の中央に小さな全身鎧の甲冑の置物が置いてある。一体何なんだろう……。
「お前ら何者だ?」
「唯の通りすがりの冒険者ですよ。そう言う、貴方達は山賊ですね?」
言いながらイリスが私を背に隠す。これは……、今のうちに魔法を使えってことね。
「おうよ!俺達こそがこの一帯を縄張りにする泣く子も黙る山賊だ!!」
「……知りませんが?そもそもこの辺りに山賊がでるというのも聞いたことがありません」
山賊のリーダーっぽい人ががっくりと膝を落としてる。
「そもそもこの近くにはオリオン以外の街などないでしょう。それに人質も人質を閉じ込めておくための牢屋もあるようには見えませんが……」
「そんなひどいことをするわけないだろう!! そんなことをしたら市民の皆様に迷惑がかかるだろ!!」
「……では一体何をしているというのです?」
「ふっ、聞いて驚け! 俺達はなこの辺りに薬草採取に来た冒険者を脅して銀貨1枚を奪っているのだ! 『塵も積もれば山となる』これが俺たちのモットーだ」
「……それは山賊のすることなのですか?」
「市民を狙わないから冒険者くらいしか襲う対象が居ないのだ。薬草を取りに来ている冒険者から有り金全て巻き上げるのは可哀そうだからな。銀貨1枚だ! ちなみにお金が足りないときは周辺で魔物を狩って稼ぐ。仲間の中には冒険者もいるしな」
「……頭が痛くなってきました。一先ず全員捕えてから考えることにしましょう」
イリスが臨戦態勢に入り、それに合わせて山賊達も武器を構える。
一瞬の静寂の後、
「行くぞ!! …………スースー」
前に出ようとした山賊達が一斉に倒れる。
「これでよかったのよね! イリス」
後ろで私が満面の笑みで答える。イリスの後ろでずっと眠りの魔法を唱えていたのだ。
イリスが項垂れて見えるのは気のせいだと思う。
青い全身鎧に意味はありません。重要ではないですが2度言いました。
次回は1章の終わりに向けて進み始めるため数日間が空きます。