第12話
「アルスレイ、その子誰?」
寮監の部屋を出た途端に、ちょうど帰ってきた少女と鉢合わせた。クリーム色の蕩けるような柔らかな髪色にピンク色の真ん丸な瞳が可愛らしい女の子だ。
「やあ、レッカ。今、帰り?」
3人しかいない同級生のうちの一人だ。僕の一つ下で、最年少で神学校に入学した天才神官である。彼女が大神官の称号持ちだろうと噂されていたほどだったが、違うらしい。
「ごまかさないで、その子、裸じゃない?」
「まあ、いろいろありまして。というか、ほかに聞くべきことないの。勇者だよ?」
「ゆうしゃあああ???」
目を見開いて、レッカが頓狂な声をあげる。
「え、女の子なんだけど確かに黒髪黒眼だわ…ええ、女の子じゃないの?」
「いや、女の子だよ」
「なんであんた即答できるのよ、彼女が裸ってことと関係あるでしょっ」
「イタイイタイよ、レッカ…」
頬をつねられながら、答えるが彼女の瞳はギラギラと輝くばかりだ。なぜこんなに勘が鋭いのだ。
僕には碌な回答ができない。
その通りだと頷いたら死刑だということくらいはわかる。
というか神官見習いがこんなに攻撃的なのってよくないと思うんだが。
本人には怖くて告げたことはないけれど。
「突然、学長に頼まれたとかでお使いに行ったと思ったら、連絡一つも寄越さず女の子とイチャイチャして!」
「ものすごく誤解のある言い方だなあ…」
「真実でしょうが!」
「いやいや、全くもって事実無根だから!!」
言いがかりにもほどがある。
にもかかわらず、彼女の鉄拳が飛んできた。
これは確実に致命傷を与えるほどの威力がある。
僕はルナの手を掴むと、さっさと自室へと引き上げるのだった。




