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第53話 あなたの声を

「さて、エレナさんはどうなってるかしらね?」


 学校への道を歩きながら雪花がそう言う。

 相変わらず俺の腕は埋まった状態だ。


「どうって?」


「昨日の事があったのだもの。いきなり様付けで呼んできたりるかもしれないわよ?」


 んなアホな


「そんな事になったら俺はますます教室に居場所がなくなるんだが?」


「あら、元々そんなに無いじゃない。私もだけど」


 まぁ、そうだけど……


「二人ともそんな悲しくなること言わないで……」


 今度は逆側の腕にいる紗雪がそう言ってきた。埋まることはないが、指を絡ませてきてちょっとこそばゆい。


「だって……なぁ?」


 こればっかりはどうしようもない事実なので、雪花にも同意を求めた。


「えぇ。だって今の私達の状況で何も言われないもの。これがラノベなら、前髪を上げた私が実は美少女で、髪型を変えた悠聖君が実はイケメンで大騒ぎ──なんてなるんでしょうけど、イケメンはどんな髪型でもイケメンだし、私は元々美少女だもの」


 もっと悲しくなること言い始めた。


「まぁそうだけどぉ」


 そうだけど!?


「でも、悠くんはあたし達から見たら一番かっこいいからね!」


「姉さんは何当たり前の事言っているの?私の彼氏よ?当然じゃない」


「アタシ達の!でしょ!あっ……」


「悠聖君、ねぇ聞いた?今姉さんがハーレム認めるような事言ったわよ」


「ち、ちがう!今の無し!」


「ふふっ、時間の問題ね。姉さんの唯一の味方のエレナさんはきっともう陥落済みよ」


「うぐぅ」


 なんだこの会話。


「おはようございます。みなさん」


 後ろから声がして振り向くとそこには、相変わらず笑顔なエレナがいた。

 輝く白銀の髪に透き通るような白い肌。吸い込まれるような蒼い瞳に、その目の下のひどいクマ。……クマ?


「なぁ、その目の下のクマなんだ?凄いぞ」


「え?目立ちますか?一応ファンデで軽く誤魔化したつもりだったんですけど」


 化粧してそれ!?


「寝不足なんじゃないか?」


「寝不足?違いますよぅ。寝てません。悠聖さんが寝かせてくれなかったじゃないですかぁ……」


 ザワッ


 おぉーい!他の生徒もいるところでそんな根も葉も無い事いうな!誤解されるから!


「な、何言ってんだ?俺はちゃんと家で寝たぞ!」


「あぁ、すいません。脳内の悠聖さんでした。もう、どんなお仕置きされるのかと思うとゾクゾク……じゃなくてドキドキして眠れませんでした……。ワタシってバカでしょう?」


「あ、あぁ。バカだな……」


 ピロンッ


 ん?なんの音だ?


「はい、悠聖さんの「バカだな」録音させていただきました。目覚まし音に設定しないと♪ふふっ」


 おぉぅ……


「ねぇ悠聖君。これ、どう責任とるのかしら?さすがに予想外なのだけど?」


 雪花が右袖を引っ張ってくる。


「せ、責任?」


「うん。もうエレナちゃん手遅れだよ。堕ちきってるよ。悠君のせいでしょ?コレ」


 紗雪が左の袖を引っ張ってくる。


「さ、みなさん。早く学校にいきましょ?」


 エレナがすんごい笑顔で俺の背中を押してくる。


 これ、来年奈々が入学してきたらどうなんの?


 ◇


 エレナは、通学中の一件以外では普通だった。化粧をなおしたのか、クマはほとんど消えていて目立つ様子はない。

 今は授業中だが、しっかりとペンを持ち、黒板を見ていた。


「ねぇ、はしも……」


 藤田黙れ


 ちなみに教科書はまだ届いてないらしく、いまだに俺と一緒に見ている。

 そこで先生が次のページにいったので、俺もめくろうとしたが、エレナの肘が乗っていてめくれない。


「なぁ、肘どかさないとページめくれないぞ」


「……」


「おい、エレナ?」


 おかしい。目は開いてるんだが……

 エレナの目の前でペンをプラプラさせてみるが反応がない。

 これは──寝てるな。まず間違いなく。

 まぁ、一睡もしてないならしょうがないか。けど俺は悪くない!


 俺は力抜けして、ページをめくるのを諦めて、手をだらんとおろした。

 それがマズかった。


 俺は右利きでエレナは右側に座っている。そして教科書を一緒に見ているため距離も近い。そのため──俺の持っていたペン先がエレナのふとももにかすった。


「アッ……っっ!」


 ゴフッ!ちょっ!声!


 艶かしい声と共にエレナが目を覚ました。

 幸い、回りには聞こえないみたいで助かったけど、エレナは顔を真っ赤にして震えている。うわぁ、やっちまった!これはさすがに怒られる!


「あ、ゴメ……」


「ま、まさか授業中にお仕置きしてくるなんて……んっ!思いませんでしたぁ……。さすが悠聖様……」


 様つけやがった。謝るの無し。てかこれ予想した雪花がすげぇな!

 おい、そんな潤んだ目で見てくるな。少しずつ寄ってくんな。授業中だぞ。


 早く授業終わってぇぇ!



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