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説教

なぜ翼が生えてきたのかは分からないが、

それよりも、だ。



「ハハ、ハハハハッハハハハハハハハッ!!!!!!!」


笑いがこみ上げてくる。

奴の姿は見当たらない。

俺の魔法で消し飛んだのだろう。



「やはり、真の勇者は俺だったようだなァ!!。」


「な、何事だっ!!」


一連の爆音を聞きつけた兵士が隊を成して駆けつけてきた。

兵士たちは俺の姿を見るなり、顔が引きつった。

兵士達が俺の背中を指差して口々に言った。


「は、翼が…。天使のような翼がアクセル殿から生えている。」


「お、恐ろしい。」「なんだあれは…。」

  「人じゃあない…。」 


人なんてものに俺は固執しないし、

どうだっていい。

どんな姿になろうとも関係ない。

強者なのだからな。


「これで本当の勇者がどっちか分かったな。」


「兵士ども、来るのが遅いんだよ。戦いはもう終わりだ帰れ。」


地面がえぐれ、道のようになった跡に背を向け、

壁が破壊された王城に戻り始める。

カラメロで縛られた女どもとエリスはもう逃げただろうか。

にしてもこの翼。

どうすればいいだろうか。

あの咄嗟に出た特大魔法を撃ってから

破壊衝動が異常に高まる。

最高の気分だ。

これで真の勇者と自分の意義をはっきりと確信できた。


「今日はぐっすり眠れるなァ!!。

ハハハハハハハハッ!!!」








「お前に来る朝はもうない。」


何?

今の声は、


「魔力に憑りつかれたか。アクセル。」


俺の翼を見ながらそう言った。

憑りつかれた?

違う。俺が魔力を支配し

俺のモノにしたんだ。

にしてもフード野郎の体はボロボロ。

足をふらつかせながらも、気力で立っているようだった。

いかにも「瀕死です」と公言しているのか。

なぜわざわざ俺をまた煽り、殺されに来たのか。



「しぶといなお前。お前にとどめを指す前に名前を聞いておこうじゃないか。

勇者の名を語る雑魚の墓を建てたいんでな。」


「名前か、名前…。…名前などない。」


「そうかそうか。じゃあ俺が名前を付けてやるよ。

勇者の成りそこない(偽物)の意味を持つホオズキから取ってオズだ。

実にいい名だ。てめぇにぴったりだよ。」


「感謝する。これで勇者を討ったオズと名乗れる。」


「ハァ!?今頃何を言うかと思えば。」


オズの目はほとんど生気がない。

体が左右に揺れ、今にも倒れそうだという様子は、

この場にいる誰からでも明らかだ。

いずれコイツは死ぬだろう。

だがオズの死をいずれではなく今にする。

傷を負ってるアイツに思いっきり魔法を叩きこむ。

今度こそ完全に消滅させてやる。


「解き放て。」


「アクセル殿が魔法を放たれる退避しろおおおおおッ!!!」


兵士が俺から距離を取ろうと離れる。

くらえ俺の特大魔法。



「待ってくださいアクセル殿!!」


エリスが俺の前に叫びながら飛び出してきた。


「彼はもう瀕死です。戦えるだけの力がありませんッ!!」


何をするかと思えばお説教。

コイツは本当にお説教が好きだな。


「コイツを殺しておかないと俺の命が危ないんだぜ?」


「それでもです。」


「エリス殿そこをお退きなさってください。ここは危険です。」


どっかの兵士がそう言ったが彼女は聞く耳を持たない。

以前、エリスは俺の前に立ち塞がる。

たくっ…。


「そろそろ退かないと痛い目見るぜ?」


「退きません!!」


「チッ…、コイツ…。」


「昔のアクセルなら私たちの命を脅かすような存在でも

執拗に甚振りませんし、まして命をとることなんてありませんでした。」


また、昔話か。

昔話は過去に縋りつく弱者の行い。


「例え野兎一羽殺すのにも涙を流しました。

ですが今はどうでしょうか。

敵の兵士を皆殺しにし、村を焼き払い、自分は王城で贅沢三昧。

アクセル、昔に戻って…、お願い…。」


コイツの吐く言葉がいちいち癪に障る。


「強者が弱者を甚振り何が悪い!?

前世ではそうだったし、この世界でも変わらんッ!!

昔の俺は弱かったし、俺自身が強者であるとこに気が付いていなかったからだッ!!!

人間は結局優劣でしか判断できないしスキル、個性、能力でしか人に認められねぇんだよ!!!!

俺は勇者だ。絶対なる強者だッ!!!」


「それはもう人じゃなくて獣ですッ!!

人は強いッ!!他人を認め合い、血の繋がりもない人でも

心を許せるからッ人は成長したし、強くなれた。

だから人に優劣なんて誰にも決められない!!

スキルが無くても、個性が無くても、能力が人より劣ってても、

その弱ささえも全部合わさってこその人間なんです!!

あなたは人間じゃない、獣です!!!」


「てめぇ…。」


「本当に自分に優劣を決めつけているのはアクセル自身なんじゃないんですか?」


「人が獣じゃない証明なんて誰ができる?

獣が自らを獣と呼ぶか?

結局そんなの人の理想郷にしかすぎねぇんだよ!!!

階級、力こそが至高であり、真実だ!!」


背中の白き翼が一層輝きを増し、

肥大化する。


「あなたはもう…。人じゃない…。」






「そうかそうか。じゃあ弱い部分も人間なんだよな?

俺に魔法をくらって死ね。」


「解き放て。エレクトロファルファニム。」


「逃げてくださいエリス殿ぉ!!」


辺り一帯を輝き照らしながら、

光線がエリス目掛けて突き進む。

エリスは瞳を閉じた。






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