探偵の『二周目』確認・後編
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鬼無・探偵 美玲・予知能力者
「あ、そう言えば、タルボットさんが話してた変な昔話。今考えると変かも。
旅人が窓のない建物に閉じ込められて魔物と話すっていう、よく分かんない話で、結界とも関係なさそうだから、皆の顰蹙を買ってた」
「……ふうん? それはちょいと臭うな。別の目的があったのかもしれねえ」
鬼無は頭の中のメモにチェックを入れる。その時点ではすでにタルボットは鬼無を手に掛けている。一同を集めるカモフラージュの意味もあったのかもしれないが、それだけの行動とも思えない。枠を超えた行動は、そうせざるを得なかった必要性がそこにあったと推察できる。これは、タルボットが見せた隙だ。
「棚田さんが死の直前に言おうとしたもう一人の容疑者。これも気になるよね」
「そうだな。条件が『二周目』と若干違っているせいで意見も変わっちまっているかもしれない。だけど、聞いてみる価値はあるだろう」
声が止んだ。美玲は両目を丸めて鼻息を荒くしていた。変な顔である。
「……すごいなあ。鬼無さん。私が思いつかないことをぽんぽん出しちゃえるんだから。本当頭いいんだね」
「阿呆。てめえのゆるゆるふわふわ脳みそ基準で褒められても何も出ねえよ」
「悪口はすらすらと出てきているけどね」
これであらかたの疑問点は挙げられた。ここからは具体的な作戦を考える。情報が足りない以上、二人きりで頭を突っつけ合わせたところで時間の無駄だ。戻ってからこれらの疑問を全員に共有して相談していこう。
「無論、詳細は濁してな」
「でも、そんなことしたらタルボットさんに警戒されるんじゃ……」
不安げに洩らした美玲の言葉にかぶせる。
「いや、あのおっさんはすでに警戒しているはずだ。最初に名指しして攻めても、シラを切られていたと思うぜ。何せ、予言の内容が荒唐無稽すぎる。全員の前で言わなかったのはそういう意味じゃ正解だ。ただし、向こうでもタルボットが対策を練っているだろうよ。他の奴らが丸め込まれていることもありうる。気合入れていけよ。真実ってのは信じてもらえなければ、真実にならねえんだからよ」
鬼無は行動方針を伝えた。
「究極的に、悪魔を外に出さなければこっちの勝ちだ。『二周目』でタルボットが死んだのに悪魔が外に出た。まずは、この謎の答えを突き止める。さっき挙げた、契約者が死んだあとも契約が続く。これはもう本人を説得するしか解決法がない。もう一つの解釈。タルボットは本当の契約者じゃなかった。本命はこっちだ」
「うん。分かったんだよ」
美玲が気合を入れて半ばまで立ち上がり、急にすとんと座った。
「あのさ、向こうに戻る前にもう一つ聞いておきたいんだけど。棚田さんって、信頼できるかな」
どんな質問が飛び出てくるかと身構えていた鬼無は片眉を上げた。
「……はあ? 何だそれ。信用しちゃならねえ人間の金メダリストだぜ、あいつは。うかうかしてっと骨までしゃぶり尽くされるぞ」
「だよね……」
「だが……」
この先を言おうか迷い、迷っているのが答えかと思って一気に言った。
「よくも悪くも正直な野郎だからな。見るからに怪しいあいつがちったあ信頼できるって思えたんなら、そいつは正しい勘だと思うぜ。疑いを忘れねえなら、大丈夫だ」
「あ、鳳子も同じこと言ってた。常に半信半疑なんだって」
「戻るぞ。反撃開始だ」
鬼無は立ち上がって事務室を出た。美玲が慌てて椅子から立ち、椅子に足を引っ掛けて転びかけていた。見ていて不安になる間抜けさに、鬼無は苦笑した。
「はっ。とても悪魔に喧嘩売ろうとしている奴には思えねえな」
「悪魔に用はないよ。敵は、あくまで人間」
「いや、どっちだよそれ」
「……? えっと、どっちって何が?」
美玲はきょとんと首を傾げた。突っ込みが浮いてしまい、鬼無は赤面した。
「……何でもねえよ! 行くぞ阿呆娘!」
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