第7話 宴会
とりあえず引継ぎだ。鷹也は戦友である部下の近野かほ梨を呼んだ。
「近野係長。近野くん」
彼女は呼ばれるとすぐに席を立ち、笑みを浮かべながら課長席の前に立った。
「はい! なんでしょう!」
「実は今、社長に呼ばれてキミは働き過ぎだと。ひと月休めと言われたんだ」
「あら!」
「うん。今は大きなプロジェクトも終わってたしかに落ち着いた状態だが、次に仕掛けるプロジェクトも準備していたよな?」
「ええ」
「休むのは難しいか……」
「いえ!」
「ん?」
「課長に教えられたノウハウは私が持ってます。今回のプロジェクトに比べれば大したことありませんよ。私がチームを引っ張ります」
鷹也はしばらく考えたが近野の言うとおり。
鷹也はその言葉に甘えることにした。
「……まぁ……そうだな。キミにはその力はあるよ。係長」
「ええ。そうだ! せっかくならお休み前に打ち上げしましょうよ!」
そう近野が言うと、回りが湧いた。
ピーピーと口笛を鳴らすお調子者もいた。
「おい。口笛はヤメろ。それでまた部長に怒られるだろ」
「すいませーん」
鷹也はこの部署の雰囲気が大好きだった。
近野を含め5人の部下たち。歳が近い連中ばかりだ。
話も合い、意見のぶつかり合いもたまにあるがそれはチームをよくするためだと思っている。
その日は部署全体で早々に仕事を片付け、近場の飲み屋に移動した。
宴が始まった。
鷹也はひと月の休養を取るがいない間も部下達なら安心だと激を飛ばす挨拶をし、瓶ビールを注いで回った。
疲れた体に痛飲した酒はあっという間に鷹也を沈めた。
鷹也は知らぬ間にテーブルに突っ伏して眠っていた。
「あら〜。課長寝ちゃったじゃん」
「誰がここ払うの?」
部下たちが心配して鷹也の回りに集まって来た。
そこで係長である近野が
「いいよ。課長が起きなかったら私が払うから。アンタたちもエライ人の前では飲みたくないでしょ? 次に行っていいよ」
「え? だって係長は?」
「私は課長を介抱していく」
途端にまたピィと口笛が鳴る。
「課長は既婚者ですからね〜」
「うるさいな〜。ボーナス査定最低にするよ?」
「出ました! パワハラ!」
「そして、課長にセクハラ」
「いい加減にしな! ホラ! しっし!」
犬の子を追い払うような手をすると、部下たちは笑いながら席を立って出て行った。




