第4話 仕事のスタイル
そこから鷹也はガムシャラに働いた。
彼女を守るため。子どもを守るため。
仕事。仕事。仕事。
それが社長の目に止まり、彼は期待をかけられ始めた。
入社してすぐに、課長とともにイベントのプレゼンを任されたのだ。
課長は彼の目から見てもそんなに出来る人ではなかった。
だが、ノウハウがある。
企画は彼が考えて、課長にお客さまの前で披露してもらった。
それは最初だけだった。
課長からやり方を盗み、次からは自分で出来た。
先方に持って行ってプレゼン。
それが大成功を納めた。
人力だ!
長い経験のある人もあるだろう。
頭のいい人もいるだろう。
だが、この仕事は行動力と人が好かれることだ。
鷹也は有頂天だった。
社長から見込まれ、大きな仕事も任された。
その頃、第一子が生まれた。
女の子だった。妻の彩に似てカワイイ子だ。
名前を鈴とした。
普通の家庭ならば子育てを一緒にするのかもしれない。
だが、今はそれどころじゃない。
二人を養わなくてはいけない。
前にもまして人一倍働いた。
会社、会社、会社……。
週末の出張。短期の単身赴任。
本社に戻って仕事が終わると終電は既に終わっている。
次の始業まで4時間ほど。
ベッドタウンにある小さい貸家まで、タクシーで45分。帰る間が惜しい。来る間が惜しい。
鷹也は会社の仮眠室で休息をとるのがほとんどだった。
気付けば家にいるのは月に一度ほど。
それも疲れてぐったりと寝るだけ。
風呂は会社の近くの銭湯で済ます。
洗濯物はダンボール箱に入れて宅配便で送り、送り返されたものをロッカーに入れておく。
会社の仮眠室はもはや彼の生活スペースになっていた。
時折くるメールに添付されている愛娘の写真が癒しのひと時だ。
何も社畜に甘んじていたわけではない。彼には確信があった。
会社が大きくなれば給与も多くなる。
その結果がでた。
初年度の辞令。大抜擢の彼は係長になった。