第19話 蜜事
行為が終わって、鷹也は大きく息をついた。その息とともに快楽の余韻が全身を巡る。
彩はまだ動けないままでいる。その横で電子タバコを吸った。
鈴が生まれた時、一時辞めていたタバコは仕事のストレスをごまかすために電子タバコに変えていた。
彼女は首をこちらに向けて嬉しそうに微笑んでいた。
「当たったら悪ィ。久々だから用意もしてなかった。二人目も欲しいしなぁ」
「ううん……。いいの。嬉しかった……」
「そっか」
白い煙をできるだけ彩より遠くに吐く。
彩はそれを微笑みながら眺めている。
「タカちゃんは本当にいい男だね」
「そうかなぁ?」
鷹也は電子タバコを吸い終わり、電源を切った。
それを見計らってその背中に彩は抱きつき胸を押し付け、耳元で睦言を吐いた。
「ねぇもう一回」
「おいおい」
「んふふ……」
「そうだな。今までの分は無理だけどな」
そう言ってもう一度彩を熱く抱きしめる。都合三度。
二人してそのまま鷹也の寝室で寝てしまった。
朝起きると、鈴が部屋のドアを開けて叫んだ。
「ママー! パパー! おはよー!」
まるでかくれんぼをしている二人を見つけたかのように嬉しそうに笑い、二人の布団の上に飛び込んで来た。
二人は慌てた。裸だったのだ。
「スズ! ……パパたち起きるからリビングのカーテン開けて来てくれるか?」
「いいよ。スズちゃんできるよ。だっておねーちゃんだもん」
この『おねーちゃん』は幼児がよく使う強がりだ。
自分は小さくはない。だからお手伝いなど平気でできるという意味だ。
ともかく鈴はリビングに走って行った。
二人は飛び起きて下着を急いで身に着けた。
そして互いに吹き出す。
「焦った~! なぁ!」
「ホントだね~。私ここで寝てたんだ。いけないいけない。」
彩は自室に走って行き家着に着替える。
鷹也はリビングに行きお手伝いの出来た鈴を褒めた。