第15話 公園遊び
娘が寝るとヒマになる。
無趣味の鷹也はすることもない。しばらくは鈴のそばにある窓を開けて外に向けて電子タバコの煙を外に吐き出していたが、その窓が汚れているのに気付き、適当に窓を拭いた。
それが拭き終わると他の窓を拭いて、次々に拭いて行くと、鈴はベッドの上に正座し「ママ」と声を上げて小さく泣いた。
それを聞きつけて鷹也はひょっこりと顔を出した。
「おう。パパがいるぞい」
そう声をかけるとしばらくぐずったが笑顔に戻った。鷹也は鈴を抱き上げた。
「スズはママが好きなんだなぁ」
「うん。でもパパも好きでち」
「そうか。良かった」
鈴の小さい手に引かれ外にでる。
小さい靴がパコパコと音をならす。
「抱っこしてやろうか?」
と言うと、鈴は首を横に振った。
だが、10mも行かないウチに鷹也に手を伸ばした。
抱っこして欲しいのだ。
鷹也はまた声を忍ばせて笑う。
「も〜。笑わないでよね〜」
と言う鈴を胸に抱いて近所の公園に向かった。
鈴はすぐに砂場に向かって遊び始めた。
鷹也はベンチに座って鈴の好きなように遊ばせた。
そこに見知らぬ女が声をかけて来た。
「あの……スズちゃんとどういうご関係?」
見ると自分よりも少し歳が上そうな女性が二人。
「ああ。父ですが……」
そう答えると少しビックリしたような顔をした。
片方の女性が、もう一人の服の肘を引いた。
「あ。ああ。いつもスズちゃんママにはお世話になってます〜。マロンの母です」
「マロンちゃん?」
マロンママが指差した先には鈴と遊んでいる女の子。
もう一人も自分の我が子を指差して自己紹介をした。
そして適当な世間話をした後に、バツの悪そうな顔をしてベンチから離れようとした。それを鷹也が呼び止める。
「あの……。妻はよくここに来るんでしょうか?」
「え? ああ、それはご近所ですしねぇ」
「妻は育児疲れとかしてませんかね?」
「えーと……。適当に息抜きとかしてるんじゃないですかね?」
「ああ。だったらいいのですが……」
「ごめんなさい。失礼します〜」
そう言って自分たちの子供の手を引いて同じ方向に帰って行ってしまった。しかし、公園の入り口でもう一度鷹也の顔を見て、彼女たちは顔を見合わせて笑い合いながら去って行った。
鷹也は多少違和感を感じたが、気のせいだと思って鈴の遊びをしばらく見ていた。




