第108話 裁きの雷
鷹也は丹高探偵事務所に訪れていた。
所長の丹高は現金の支払いかと思いながら、鷹也を迎え入れた。
「この度は、妻を捜して頂きありがとうございました」
「いえいえ、こちらこそ力になれずに」
「担当していた調査員の西丘さんにも会いたいのですが」
「ああ。ええ。おりますよ。呼んで参ります」
丹高は立ち上がり、事務所の裏にいる西丘を呼んで来た。
西丘も、鷹也と会うのは少しばかり戸惑ったが大丈夫であろうと踏んで姿を現した。
「西丘さん、わざわざ遠くの方まで妻を捜して頂いたようで」
「いえ〜。まさか違う返事が返ってくるとは思いませんでした」
「妻は……どんな感じでしたか?」
「……そうですね。まだなじまない土地ではありましたが精一杯頑張っているようでしたよ」
「そうでしたか」
鷹也は出されたお茶を一息すすった。
「それで、一緒に暮らしている方にはお会いしましたか?」
「あ。ええ。遠目ではありましたが」
「どんな方でした? 背はどのくらいでしたか? 髪型は?」
「あ、それは」
「住んでいる場所は? 家でしたか? アパートでしたか?」
「え?」
「車は乗ってましたか? その車種は? 色はどんなもので?」
「ちょ、スイマセン」
「どうですか? 答えられますか?」
「あの〜」
丹高の目からも西丘の挙動が少しばかり違うことが受け取れた。
長い間この商売をしているものだ。
西丘が嘘をついていたことが分かって来た。
「どういうことかね? 西丘くん」
「いえ。そのぅ。秘密にしてくれと言われましたので」
「誰に?」
「それは……奥様に」
それを聞いて鷹也は立ち上がり、事務所から出て彩を連れてきた。
西丘は驚いてイスから滑り落ちてしまった。
「紹介します。妻のアヤです」
「あわわわわわ」
「所長。この西丘という男は職権を乱用し、妻を見つけたにも関わらず、妻には私に新しい女が出来たと言い多額の金を請求していると伝えたようです。そして、自分が言わなければその請求は来ない。だから抱かせろと言う内容の脅迫をしたらしいのです」
所長の顔も真っ青になった。
西丘の慌てぶりからもはやそれは明白だ。
「アヤ。この男なんだろう?」
「ええ。間違いありません」
「西丘くん。妻は妊娠している。そんな脅迫等して流産でもしたら君は責任をとれるのかい? いずれにせよ君のことは警察に通報させてもらうよ」
「そ、そんな」
あわれな目をした西丘に所長の丹高は追い打ちをかけた。
「君は今日を持って解雇とする。多村さま。彼がしたのは業務内のことではありません。休暇の中で行ったことでした」
「そうですか。まぁ、彼の今までの行動で他にも余罪があるかもしれませんね。警察に協力してやってください」
鷹也と彩は、勝利の微笑みを浮かべ車に戻って行った。
中には鷹也の母親と鈴が笑顔で待っていた。
「さぁ〜て。久々にアヤのつくる唐揚げが食べたいなぁ」
「うんうん。私も作りたい」
車は家を指して走って行った。