表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
103/111

第103話 ずっと君のこと

しかし、鷹也は思うところあってそれを止めた。


「すいません。やっぱり見てみます」

「そうですか?」


「せっかく矢間原さんが提案してくれているのにそれを断るのも無下だと思いまして」

「いや〜。ありがとうございます」


矢間原の車が独身寮の駐車場に入って行く。

矢間原は三人を待たせて、先に寮の中に入って行った。


「ばーさん。シゲばーさん」


矢間原が玄関先で叫ぶとシゲルが顔を出した。


「どうしたい。ヤマちゃん」

「今、次期支社長が東京から視察に来てさ。社宅に入りたいんだけど、独身寮の広さを参考にされたいんだってさ」


「なんだい。急にこられても汚いよ。まぁ、空き部屋が一つあったねぇ。アヤちゃぁ〜ん」


シゲルは彩を呼んだ。彩は台所で水仕事をしていたがすぐに出て来た。


「はいはいはい。シゲさんどうしたの?」

「なんか、お偉いさんが視察に来たんだってさ。三階の空き部屋を見せてやっておくれ」


「ええ。大丈夫です」


それを聞いて矢間原は親指を立てて駐車場に戻って行き、待っていた三人に声をかけた。


「大丈夫だそうです」

「ああ、そうですか。ありがとうございます」


二人並んで独身寮に向かって行く。

その後ろに立花と近野も続いた。


「カホリさん。でもオレ待ってます」

「え?」


「カホリさんがオレに振り向いてくれるように頑張ります」

「……それって、私が振られないと無理じゃない?」


「いえ。オレの方がいいって思わせます」

「……そっか」


近野はその言葉を受けてニコリと微笑んだ。


矢間原が独身寮の扉を開ける。

そこにはシゲルと彩が頭を下げて迎えていた。


「ようこそいらっしゃいました」


周りのざわめき。

街の音、風の音。


それらが全て小さくなり、時が止まる。


鷹也に聞き覚えのある声。

その声の持ち主が顔を上げる。


目が合った。


それと同時にみんなが見ている中、鷹也は彩に向かって駆け出した。


近野の見ている目の前。

矢間原の見ている目の前。


そして彩の体を抱きしめる。

三ヶ月前にしていたと同じように。


その瞬間、彩は涙をこぼした。

鷹也の声は震えていた。


「ずっと君のこと……捜してたんだ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ