第38話 Epilogue
世界は平和だった。特にこの大陸は、慈愛に満ち、人々は暖かく、何より戦争がなかった。
ここの人々には、昔から語り繋がれる御伽噺がある。その話を知らない人は一人もいない。産まれたばかりの赤子でも、最初に聞かされるお話はその話だという。
何度も何度も聞き繰り返され、しかし、その話を聞き飽きる人はいなかった。特に、〝彼女〟の口から語り紡がれるその話には。
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とある村。今、この村に住む子供たちは待ち遠しくしていた。隣町に数日前、〝彼女〟が訪れ、語らいを行ったのだという。次はこの村に〝帰ってくる〟のだと、もっぱらの噂だったからだ。
この村は昔、一度廃村と化していた。それを、〝彼女〟が復興させたのだという。語らいの主の村、そして、御伽噺の始まりの村。この村の名前は、『ルージェルフ』。
『リィーン―――――』
村の外に響いた鈴の音。遊んでいた子供たちは、その音を聞き洩らさなかった。急いで村中を駆けまわり、報せる。
「来たぁー!帰って来たよー!!〝アリス〟が帰ってきたぁ!!」
その報せを受けると、大人も子供も関係なく、皆、村の門に集う。そして、〝彼女〟の来訪を歓迎する。
到着するや、〝彼女〟は村の中央広場に足を向ける。広場の椅子に腰を下ろすと、最前列に子供達、そして村の全ての人が広場に収まる。合図も何もなく、一斉に静まる。〝彼女〟の話しに集中する為に。
〝彼女〟の名は〝アリス〟。幻想現存種第八位〝御伽噺のアリス〟。赤い頭巾をかぶり、青い服に純白のエプロンからなるエプロンドレス。
彼女の語らいはいつも、この村のとある〝少女〟から始まる。
〈 これは 〉
「この村にはかつて、〝 Bloody・hood 〟と云われた賞金稼ぎの少女がいました。」
〈 とある世界の 〉
「村の人たちの仇をとる為、彼女は旅に出ます。」
〈 とある時代の 〉
「旅の最中、様々な人たちと彼女は出会い、関わり、手をとり、対立し、分かりあい、成長しながら、仲間と歩みました。」
〈 とある大陸の 〉
「放浪する青の剣士、身分を奪われた白の姫、銀の腕を持ち国王と共にある闘士、かつて天才と名を馳せた緑の賞金稼ぎ、囚われた金の魔術士。」
〈 とある運命を背負い 〉
「身分を捨てた橙の騎士、時空を超えた白兎、国と光を失くした紫の武士、大陸を渡り見聞する黄の猫。」
〈 とある出会いを経た 〉
「これは、そんな彼女達・・・・戦姫達の―――――――」
〈 とある戦姫達の 〉
「とある――――――――――」
〈 とある 〉
「 ――――『 御伽噺 』―――― 」




