第36話 戦いの果てに訪れる結末とは
唐突に向きを変え塔の方へと歩いて行くアルテ。
「――――!? 待ちなさい、アルテ!?何をするつもり!?」
それに気付いたアリスが声を上げる。
「何を?ぼくが前線に出るんだよ!もう騎士団になんか任せていられない。これだけの力の源があるんだ。ぼく自身が強くなって・・・君たちを一蹴すればいい。それで、終わりさ。」
そう言うと両手を広げ、塔を仰ぐ。
「やめなさい!?」
必死に駆け寄ろうとするアリスの前に立ち、マトクレスとエクストリムが道を阻む。
「くっ!?」
「そこで眺めているといいよ。神の誕生の瞬間を!最初からこうしておけば良かったよ、君たちは危険分子だ!だけど、これで終結。世界はぼくの手の中に!!」
塔から黒い光が発せられ、アルテへと降り注ごうとする。
『ゴッ!!』
しかし、阻まれた。轟音と共に現れた紅い閃光に塔は呑みこまれ、光がおさまる頃には、跡形もなく消えていた。
「・・・・何が・・・・起こった――――――」
一様に驚きを隠せずにいるが、一番動揺しているのはアルテだった。アリス達も呆然とその様子を眺めていた。そんな中、黒極騎士団は動きを止め、一人と残らず、塵へと変わっていった。
「・・・・なんだ・・・何が起きた・・・・何が―――――」
「わたしだよ。」
アルテの言葉に答える声。それは、塔のあった足下からこちらに進んでくる影から聞こえた。
「・・・君か・・・・ルージュ―――――」
「うん、正解。」
「ルージュ!!」
二人のやり取りを待ち切れず、アリスが声を上げる。それに気付いたルージュが、手を振り笑顔を見せた。
「何をした?」
「何を、って?」
「今のだ!なぜぼくの力が一瞬にして消えた!!君にそんな力はないはずだ!!」
動揺を隠しきれず、言葉でまくしたてるアルテ。しかし、ルージュはとても落ち着いていた。
「力ならあるよ。ほら。」
そう言ってロイ・バハムートを顕現させる。
「その一撃は、あの時全く効かなかったはず・・・・・」
「あの時とは状況が全然違うじゃん。封印されていた500年間。ずーっと力を溜めこんで・・・・一気に吐き出しただけなんだけど・・・さすがに効いたでしょ?」
笑みを含ませながらゆっくりと歩み出る。そして、アルテの前まで来ると立ち止まり、ベオウルフの銃先を向ける。
「あなたの・・・・負けよ、アルテ。」
歓喜の声がひそかに上がる。皆勝利を確信したようだった。アリスも、アルテに近づき、剣先を向ける。
「くっ・・・・ふふ、状況的には負けかもしれない。でも、ぼくを倒す手段はあるのかい?護王がなぜぼくの事を封印で済ませたのか、わからないわけでもないだろう?」
苦し紛れに笑みを見せる。しかし、ルージュは動じない。
「わかんないよ?ここには護王の武器は全部揃っているし、天使の腕、魔剣、魔法士に人形師。」
「ここには、護王の時代にはなかった力がある。なんなら、試してみる?」
アリスがルージュの言葉に繋ぐ。
「くっ―――――」
「それとも・・・・わたしの身体でも乗っ取ってみる?」
さらに苦しい状況となったアルテに、ルージュが提案をなげかける。
「!?ルージュ何言って―――――」
「ふ・・・・ふふ・・・・・ははははーーーーーー!!」
アリスの言葉を切り、アルテが高笑いする。
「その方法があったね。うん、そうしよう。君の身体を手に入れられれば、とりあえずこの場は逃げられる。そうすれば挽回は可能さ!ルージュ、今更撤回はさせないよ。口が軽くなった事を、後悔するんだね!!」
そう言うと、アルテの口から黒い塊が一気に飛びだし、ルージュの胸にぶつかると、そのまま彼女の中に染み込んでいった。そのまま動かないルージュ。
「・・・・ルージュ?」
アリスが恐るおそる声をかける。その時、突然ルージュが顔を上げた。そして、
「アルテ・・・・捕まえた。」
そう言ってにっこり笑った。
「ルージュ・・・・なの?」
「うん、そうだよ。」
「アルテは?」
「ここ。」
そう言って自分の胸元を指差すルージュ。そこには、小さな黒い刻印が刻まれていた。
「ウィズダムに刻印してもらったの。簡単な封印術式。アルテくらいになると抑えておくには無理があるけど・・・わたしなら半日くらいは大丈夫。」
「半日って・・・・そんな短い時間で何をするって言うの?!」
「それは・・・・・」
『バサッ!!』
ルージュが何かを言おうとした時、上空に白い竜が現れる。ウィズダムである。着陸すると人型をとり、2人の元へ歩いてきた。戦姫達も同様に集まる。
「ルージュ。間に合ったようね?」
「うん。ちょうどいいタイミングだよ。あれは?」
「あぁ、完了しているよ。」
そう言ってウィズダムがルージュに何かを渡した。
「何の事?」
アリスがしびれを切らせ問いかける。
「これ。」
もらったものを掌に乗せ、みんなに見せるルージュ。そこにあったのは、小さなお守りだった。
「お守り?」
「うん。でも大事なのは・・・こっち。」
そういってルージュが指差したのは、お守りについている透きとおった綺麗な緑色の玉だった。
「これは〝神珠〟って言うの。この世で唯一アルテを滅ぼす事のできる力。」
「「?!」」
皆一様に驚く。あの闇を葬る事が出来る。しかし、それ以上に気になった言葉は全員共通だった。
「唯一ってことは・・・・わたし達の全ての力を合わせても、アルテを倒すことはできなかったってこと?」
ネージェが疑問を言葉にすると、ルージュは頷きで答えた。
「アルテの本質は純粋なる闇。闇は光ある限り必ず存在できる。わたし達の武器のような、中途半端に特殊な力で彼を倒そうとしても、消し去ることはできない。」
「中途半端?この天使の腕でも役不足なのか?」
リアンが、自分の腕を掲げつつ問いかける。
「神珠は、最初の戦いの後、護王のバハムートが創り上げたもの。闇は光ある限り存在する。だけど、闇を完全に葬る事が出来るものもまた光。神珠は・・・光と闇両方の力を溜めこみ、そしてどちらの力としても放つことができる性質を持つ。その蓄積量は、現在で1000年分。いくら天使の力とは言え、一瞬のうちに1000年分の光の力を放出することは・・・できないでしょ?」
「う・・・う~ん――――」
リアンが引き下がる。同時に前に出るアリス。
「それで・・・その神珠をどうやって使えば、アルテを倒せるの?」
「・・・・これはね―――――」
一度言葉を区切るルージュ。俯き、目を閉じる。
「ルージュ?」
アリスの声に、意を決したかのように顔を上げるルージュ。
「これはね、ロイ・マリアに装着することで力を解放することができるの。」
「マリア?・・・じゃぁ、これに?」
そう言ってアリスは両手でロイ・マリアを前に出し眺める。
「だから・・・・・」
言葉を呑みこんだルージュ。頭を上げたアリスは、ルージュと目があった。
「アリス・・・・わたしを殺して。」




