第35話 再会
「・・・・・久しぶり。ロイ・マリア。」
森を出発して約ひと月、ついにここまで到達した。国自体は、荒廃し荒野が広がる場景となっていたが、この、首都のあった場所だけはかろうじて建物の残骸が残っていた。
『旧帝都エンペリア』。部隊は、都市を囲む悪魔の群れに阻まれたが、アリスだけはそこを突破した。都市内部に敵はなく、歩くという労力だけで目的地にはたどり着けた。
『王通』。ロイ・マリアの立つこの場所は、否応なくあの日々を思い出させた。
「あなたは・・・いったい何年、ここで待っていたの?」
静寂の中、アリスの声だけが響く。
「あの日々は・・・脚本の通りなのかしらね。だとしたら、ここからの脚本は誰が描くの?」
もちろん返事などはない。アリスはロイ・マリアに問いかけるように話しかけていた。ふと、アリスの口元に笑みが浮かぶ。
「そんなのは当然・・・・私が描くのよね!!」
勢いよく剣を引き抜く。すると間髪をいれず、あの黒い塔が元の場所にそびえ立った。
空は暗くなり、まさに魔の復活にふさわしい雰囲気をかもしだしていた。アリスは、ロイ・マリアを構えながら辺りを窺う。
「いやぁ、久しぶりだね?アリス――――」
声の方を振り向く。塔の方角、前回と同じ、階段があったであろうその場所に、そいつは現れた。
「アルテ―――――」
「君は変わらないんだね。もしかして時を飛んだのかい?大胆な事をするね。ということは・・・ぼくを倒す方法でも見つけたのかな?」
「いいえ。でも、やるだけの事はやるつもりよ。」
「なんて不確実な。まぁ、いいよ。君一人じゃぁ、面白みもないし―――――」
そう言ってアルテは指を鳴らした。すると、あの騎士団が姿を現した。
「黒極騎士団?!なんで?!」
「彼らの複製さ。急造品だから、彼らの力を再現することはできなかったけど、君一人を始末するには十分すぎるくらいだろ?」
「・・・くっ!?」
覚悟していなかったわけではない。しかし、相手が黒極騎士団、しかも複製とはいえ自分たちが戦っていない騎士も含まれた全十五騎士。一人では到底かなわないと目算でも解が出る。だがこの場には自分しかいない。そう思い意を決し、剣を握りなおした時だった。
「何を言っているんですか?一人じゃないですよ。」
後ろから声がした。しかも自分のよく知る声だ。しかし、それはあるはずのない声だった。ゆっくりと後ろを振り返るアリス。
「アリス、久しぶり。」
そこには、笑顔で挨拶するネージェを中央にし、あの時共に戦った7人の戦姫達がいた。
「みんな・・・どうして、ここに?」
「説明は後にしよう、アリス。まずは・・・事を終わらせようか――――」
アリスの質問を後回しにし、ロイ・スサノオを構えるマレーン。それをかわきりに全員が自分の武装を展開する。
その様子に、アリスの顔に笑みが戻る。頷き一つで全員とコンタクトをとると再び正面に向き直る。
「どういうことだい・・・・彼女らまでいるなんて。」
「どういうことも・・・・そう言うことよ。私一人なら楽勝だったのでしょうけど、〝私達〟ならどうかしら?」
そう言って、不敵な笑みを作るアリス。その様子に頬をひきつらせ、表情を崩すアルテ。
「いいさ・・・全員始末すればいいんだ!!」
そう言葉にすると、黒極騎士団を仕掛ける。
「みんな、行くよ!!」
アリスの掛け声でそれを迎え撃つ戦姫達。またあの日のような、乱戦の様を呈していた。
まず先陣を切って突貫していったのはリアンだった。素早いフットワークで攻撃の中をかいくぐり、第三位夜傘のパラプリュイにミカの右腕を振り抜く。その一撃でパラプリュイの傘の半分を吹き飛ばした。
「ふぅん・・・さすがに一撃じゃぁ、倒せないか。」
自問するリアンに第五位死鋏のスゾーの鎌が襲いかかるが、ラファの左腕でその進行を止める。
「まぁ、いいさ。一撃で駄目なら・・・・・倒せるまでぶち込むだけさ!!」
自答し、不敵な笑みを作る。その少し離れた場所、この乱戦の中1対1にこだわる一組がいた。
「さすがに剣術は随一だね。それに、自分の持っていた武器の特性は、そんな身体になっても覚えていると。」
二剣を振り回すボワ。それに、同じく二剣を以て対抗する第四位魔剣のソーディアン。彼女達は周りの乱戦の中をかいくぐりながら、絶対にお互いから視線を外さなかった。
「いいよ。ボクもわくわくしてきた。これでも前は〝天才〟って言われたんだ。魅せてあげる、天才の闘い方!!」
ボワが戦速を上げる一方で、騎馬同士の戦いが始まっていた。
「なかなか・・・騎乗状態同士でこんな戦いができるとは思わなかったわ。」
フィユが相手をしていたのは第十位双槍のホースマン。フィユ同様騎乗し、さらにその両手に槍を持っていた。
「確かに強い。しかし、残念ながら敵ではありませんね、主殿。」
「そうね、こうなる前のあなたと戦いたかったわ。それじゃ、真の騎乗戦というものを教えてあげましょうかね!!」
ファラダと共に、一気に敵の中を駆けていく。その上空、ここにもいつの間にか一対一の状況が出来上がっていた。しかし、圧倒的な力の差が見てとれる程だった。
「今のでは駄目ですわ。そんな収束率で倒せるのは剣を握りたての兵士くらいですわよ!さぁ、次を撃ってみてくださいませ!」
第十二位魔導のレイジングの放つ魔力砲を、全く狂いなく、同じ質量をぶつけ相殺し、採点をするラプ。魔法士ともなる彼女には、魔力戦で敵はなかった。
「ふぅ、それではわたくしに勝つなんてできませんわよ?教えてあげますわ、魔力砲とは、こう撃つんですのよ―――――」
上空に魔法陣を描き、特大の魔力弾を作成し始めた。その直下、怒涛の勢いで騎士団を殲滅していく二人の姿があった。
「とった!!」
掛け声と共に、第十一位拒絶のリフュースに止めを刺すマレーン。
「あっ・・・やられたニャ。止めを刺せなきゃカウントにはならニャいニャ。」
「これで3対2、私の優勢~♪」
楽しげな声を出しながら、ロイ・スサノオを肩で跳ねらせる。
この二人で、第十五位不幸のマルール・第十四位無限のアンフィニ・第十三位閃光のライト・第十一位拒絶のリフュース・第八位空席のエアの5人を倒していた。二人で協力し、止めを刺した方の戦果にしているようだった。
『ズン!!』
その二人の横に新たな敵が歩み出る。第九位無情のメルシレス。
「次はあいつってわけか―――――」
「次はあたしがもらうニャ!!」
「させますか!!」
二人同時に駆けだしていった。そこから離れること数十メートル。こちらでは逆に1対2、いや、8対2の状況が出来ていた。敵は第七位盾のアイギスと第六位魔銃のベヒーモス。
その相手を務めているのはネージェとアルクアンシェルだった。ネージェの指揮で動く彼らに死角はなく、人形といえど騎士団を圧倒していた。
「この子たちを見くびらないでくださいね?とっても強いですよ。」
ネージェの顔には余裕の色が見え、事実、彼女の半径5メートル以内には敵は一切侵入して来れなかった。そして、
「はぁぁーーーー!!」
もっともアルテの近くで戦うは、第二位無敵のマトクレスと第一位最強のエクストリム。
かつて強敵として目の前に現れたこの二人を、たった一人で善戦する剣士。それは、〝蒼の戦姫〟。
「あなた達は・・・とても強かった。それは認める、尊敬できるほどに。でも、今は違う・・・私の方が、強い!!残念だけど、ここは通してもらうわ!!」
マトクレスの巨体を斬撃一つで押しのけ、エクストリムの鉄壁の鎧を一撃で破壊する。彼女達にとって、もはや黒極騎士団は脅威ではなくなっていた。
その現状にアルテは苛立ちを露わにしていた。




