第29話 guerre dieu de Luge
「なめんじゃねぇぞ、ガキがぁーー!!」
挑発に我慢しきれず、スゾーが跳び出す。それに残る騎士団が続く。ルージュもその様子に、魔銃を召喚しその手に取ると、自分から疾駆していく。
スゾーとの交錯の瞬間、二本の大鎌の交差を魔銃の刃でいなし、そのまま走り抜ける。
通り過ぎた後一瞬だけ後ろを振り返り、魔弾を撃ち放つルージュ。通常ならかわす事など不可能な一撃だが、彼らにとっては造作もなかった。スゾーは何事もなかったかのように鎌の一振りで魔弾をはじく。
その一瞬の時間にもかかわらず、後ろを向いているルージュに襲いかかるパラプリュイ。傘をたたみ、突きにかかる。
しかし、ルージュは後ろを向いたままだが、もう片方の手の魔銃がパラプリュイを捉える。魔弾を放つ事により彼女に回避行動をとらせ、突きの一撃を防いだ。
刹那の交錯を優位にしのいだルージュは再び前に向き直り、そのまま勢いを殺さず疾駆する。その目標は前方、大剣を構えるエクストリム。
「楽しいな!!赫い銃士よ!!」
「お褒めの言葉ととっておく事にするね!」
一瞬の会話の後、エクストリムが今度はしっかりと両手で掴んだ一撃を縦に振り降ろす。轟音と砂塵を巻き上げながら大地に傷をえぐる。
しかし、それでも彼女を仕留めることはできていない。
砂塵と共にルージュは上空へと舞いあがり、いつの間にかベヒーモスへと変化させた魔銃から一撃を放つ。
「〝崩穿花〟―――――――」
撃ち出されると同時に拡散した魔弾は、エクストリムをまき込みさらに大きな砂塵を作る。
その最中、空中で無防備なルージュにスゾーが迫る。大鎌を振りかぶるが、その時には既に、ルージュの瞳はスゾーへと標的を変え、その手の魔銃はベオウルフに戻っていた。
「なっ!?」
「このくらいで驚いてたら・・・・あなたは脱落だよ?」
そう言って魔銃をスゾーに向け撃ち放つ。しかし、その全てをはじき落とし、ルージュへと肉薄する。
「はっ!?なめんじゃねぇぞーー!!」
鎌を再び振りかぶるスゾー。それに一切動じず即座に二つの銃口を合わせ敵へ向けるルージュ。
「その言葉、そっくり返すよ?〝ツインバレット・・・『フレア』〟!!」
「くぁっ!!」
爆音と衝撃を共にし、数メートル後方へ飛ばされた後地面へとスゾーは叩き落とされた。
銃撃の反動でさらに上空に上がり、戦闘が始まる前に立っていた位置まで飛んでいくルージュ。着地をし、そして顔を上げる。その先には、エクストリムの横に並ぶスゾーとパラプリュイ。再び、対峙し眼光をぶつけ合う。
「なに・・・今の――――――」
ウィズダムの背に乗り移ろうとしていた一行が、気がつくとその手を止めてしまっていた。
魅入っていた。目が踊っていた。彼女の戦いに?自分たちが苦戦した相手にその力を示したから?
確かにそれもあるだろう。しかし、一番の理由は『自分もあの場で、同じように戦いたい』という願望、憧れであった。戦いの中で生きてきた彼女達にとって、今この場で一番求めるものは、戦う力なのかもしれない。彼女達がその気になればルージュの芸当も無理ではないだろう。だからこそ、目の前で魅せられた舞踊から目が離せないのだ。現に、アリスの手にはいつの間にか、二本の剣が握られていた。
「・・・・・みんな、急ごう――――」
剣を握っていた事に気付いたアリスは、それをおさめ、一行を促す。
「アリス?」
「今の私達ではダメ・・・・でも、次ならば―――――ルージュなら、大丈夫だろうし・・・・ね?」
そう言って一行に笑顔を見せる。その笑顔に、皆顔をほころばせ、ウィズダムへと乗り始めた。その様子を感じ取ったルージュは、軽く口元に笑みを見せた。
「さすがだ。ここまでの力を持っていたとはな。」
エクストリムが鎧をはたきながらルージュを見据える。
「・・・・・ふふ。でも、言うほどじゃないよ?何があったかわかんないけど、今日のみんなは本調子じゃない。だって、冷静なときのアリスは・・・・わたしより全然強いから!」
「は?!あれでか?!」
スゾーが馬鹿にしたような口調で言葉にする。
「みんな感情に流されやすいからね。まぁ、わたしも人の事は言えないけど。」
余裕が出てきたのか、ルージュは敵に対しても苦笑いを見せた。
「ふぅん・・・感情ね。そんなもので強さにむらが出るなんて、やっぱり不安定な存在ね、人間って。」
パラプリュイが自分の傘をくるくるとまわしながら言葉を紡ぐ。
「不安定だから人なんだよ。それに・・・・その不安定な存在に圧倒されたのはどこのどなた?」
挑発するようにルージュが言葉を口にすると、癇に障ったのか表情を曇らせるスゾーとパラプリュイ。
『ブワッ!!』
その時、後方で風が巻き起こる。ウィズダムがアリス達を乗せ、飛び立ったのだ。
「「!?」」
スゾーとパラプリュイが武器を持つ手に力を込める。しかし、その一手先にルージュが動いていた。ベオウルフの火力で跳躍し、上空でベヒーモスへと持ちかえる。
「ここは退かせてもらうから!!」
その様子に、エクストリムが二人の前に出る。
「「エクストリム!?」」
「この状況で、〝はい、そうですか〟と行かせるわけにはいかないのでな。」
大剣を肩に担ぎ構えをとる。
「ううん・・・・・行かせてもらう!!〝焔輪花〟!!」
「〝エンディングペイン〟――――――」
ルージュの放つ紅い螺旋を伴う魔弾と、エクストリムの放つ一刀のような斬撃がぶつかりあい、轟音をまきちらして爆発を起こす。
その爆煙を背に、白の竜はその場を飛び去って行った。




