第26話 疑惑の眼差し
「はぁ・・・・はぁ――――――とりあえず、ひと段落かな――――――」
周囲の敵を排除し、帽子のずれを直すボワ。辺りに見えるのは荒廃の進んだ街並みだけ。ボワの他には一人として見当たらなかった。
「マレーン・・・・どこいったのかな――――――」
・
・
・
「ふぅ・・・・手荒い歓迎だったわね?」
「まぁ、この程度は茶飯事じゃない?」
アリスと、ファラダに跨るフィユが会話をかわす。
ここは、ガレ国の首都『シェマイン』。4年前の一件で、その時の主都『ギャルリ』が崩壊してからは、ここがガレ国の象徴となっていた。
マレーンとボワを探し、一行はこの都市を目指していたのだが、到着して早々闇の軍勢との戦闘に出くわしたのだった。
目的の人物を探し当てることはできなかったが、シェリンとダクトが先陣を切って戦っていた事に加え、このような事態を一行が見逃せるわけがなく、手を貸し鎮圧したところであった。
「すまない。君たちには世話になってばかりだ。」
シェリンが声をかけながら、ダクトと共に近寄って来た。
「わたくし達、こういう性分でございますから。」
「気にしないでください。」
ラプとネージェがほほ笑みながらそう答えた。
「しかし・・・今日で7日連続だぜ、シェリン?」
「そうだな・・・・奇しくもあの日からな――――」
「あの日?」
二人の会話に疑問を持ったリアンが聞き返す。
「あぁ。つい7日前、マレーンとボワがギャルリに行くと言って出発していったんだ。」
「二人が?!」
ダクトの説明にフィユが反応する。驚きは皆一様であった。
「2か月くらい前に、二人はこの街に来たんだ。いろいろ探しまわったけどみんなと会えなかったからと。今度はちょっと待ってみようって言っていた。だが7日前、急に探し物があるとマレーンが言い出して。そして、二人で出ていった・・・・奴らの攻撃は不定期的に起きてはいたが、連日というのはあの日からだけなんだ。」
「・・・それは・・・マレーン達が奴らに通じていると言いたいのかしら?」
シェリンの言葉に、敵意をむき出しにするアリス。
「そういう考えが起きているのも事実だと言っているだけだ。オレたちがそう思っているわけじゃない。ただ、あいつらを探しに行こうにもこの状況じゃどうしようもない。」
「オレとダクトが前線に立って、やっと防いでいる状況なんだ。捜索隊を出そうにも出せずに・・・・・オレたちも悩んでいたところだ。」
ダクトとシェリンが悔しさを表情に表す。それを見て、アリスは警戒を解き、〝ごめんなさい〟と口にした。
「ではその役目、わたくし達で請け負えばよろしいのでございましょう?」
その時、ラプの口からその言葉が聞こえてきた。声の方向に向きを変え、ラプの顔を見る。するとニコっと笑顔を返した。その顔に一行も口元に笑みを見せる。
「当然だな!」
「わたし達なら当然の行動ですね。」
「いつもの事ニャ!」
「あのあの、そうですね。それが私達ですもんね。」
リアン・ネージェ・チャト・フィユが賛同し、アリスにその瞳を向ける。全員の眼差しを受け、アリスは頷きで答える。そして、シェリンとダクトに再び顔を向けるアリス。
「そういうことで。私達がマレーンとボワを探しに行ってくるわ。あなた達は今まで通りここを守っていてちょうだい。」
そう言って、笑みを向ける。
「・・・・・すまない。」
「頼む、あの二人を・・・無事連れ戻してくれ。」
シェリンとダクトが頭を下げる。それに片手で返事を返すと、一行はギャルリへと出発していった。
・
・
・
「あ~ら、ららら。こいつは困ったことになっちまったねぇ~。」
シェマインを望める小高い丘の上。一行の動向を監視する二つの影があった。
「王の資格者を確実に殺す為に、いままであの街から人を出さないようにしていたってのに・・・さらにやっかいな連中が出てきちまったじゃねぇかよ~。」
あぐらをかいで座りながらもんくを言う男の口は、その言葉に反して不敵な笑みを浮かべていた。
「これじゃぁ、オレたちが出るしかねぇじゃねぇか?なぁ、メルシレス。」
そう言って後ろにいる影に顔を向ける。しかし、そこから返事が返る事はなかったが、代わりにおぞましいほどの殺気が放たれていた。
「お~、怖い怖い。そんなに躍起になるなよ。メインイベントはこれからだぜ?・・・それにしても、〝無情のメルシレス〟が感情を露わにするとはな。あの中の誰が、お前をそんなふうに変えたのか―――――」
言葉にしながら、一行の顔を一人ずつ順番に眺める。
「あの気の強そうなやつか?それとも馬に乗った奴か・・・・あの杖持った奴と人形つれた奴は違うだろうなぁ。あの猫も怪しいか・・・・・だが本命は、あのリボンだろうな――――――」
蒼い服の剣士に目を止め、舌なめずりをする。
「楽しみになって来やがったぜ―――――――」




