第24話 逆襲の魔女
「とったーーーー!!」
魔女を上空高くから地面に蹴り落とし、リアンが声を上げる。そこにトリーゼが駆けつけてきた。
「リアン、無事か!?」
「あぁ、一人討ちとった。」
「そうか・・・やっと1人か。先が思いやられるな―――――」
先行きの不安さに肩を落とすトリーゼ。
ここアルジャン国主都アルジアンは、未曽有の危機に瀕していた。9人の魔女が同盟を組み、闇の混乱に乗じてこの国を攻め落としに来たのであった。
かつてノード国で起きた大乱の再現である。
リアン達は、なんとか都民を避難させる事には成功したが、完全に主都は陥落してしまった。現在は、主都奪回のため行動していて、9人の魔女のうち1人は倒す事が出来たが、まだまだ前途多難の状況であった。
首都陥落から、すでに2週間が経っていた。
「ったく、こんな状況じゃみんなを探しに行くこともできないじゃないか。」
「すまないな、お前にまで迷惑かけてしまって。本当なら私達だけで何とかしなければいけないことだが・・・・。」
リアンの苦言に対し、トリーゼが申し訳なさそうに顔をしかめ、謝罪を口にする。
「何言ってんだ。オレはお前に求婚されてんだぞ?関係ないわけないだろ。」
「・・・・・なんだ、自覚はあったのか。」
「あっ――――」
トリーゼの言葉から数秒の間をあけた後、自分の失態に気づいたのか、顔を真っ赤にするリアン。
「うっ、うるさい!!行くぞ!!」
藪から棒に言葉を投げ捨て、特に方角を決めるでもなく歩き出した。その後ろを、苦笑いを浮かべたトリーゼがついて行った。
・
・
・
「さて・・・どこから行きましょうかね?」
主都に入ったところで、アリスが腰に手をおき一息つく。
3人はリアンに会う為アルジアンへと向かっていた。しかし、主都に着く前の街で、避難してきた人たちに事情を聞いたのだった。とりあえず主都に向け進んできたが、どうするかまでは考えていなかった。
「とりあえず、リアンに会わないといけないよね。」
「でもどこにいるかわからないニャ?どうやって探すニャ?」
ネージェとチャトが方針について話し合っている中、アリスが二人の肩を軽くたたいて注意を自分に向けさせる。その顔はやけに自信満々だった。
「手当たりしだい!!なんか戦闘の音がするところは可能性大ってことで!!」
が、その自信満々に提案された内容に、チャトは肩を落とし、ネージェは苦笑いをする。
「手当たりしだい・・・・」
「何をするって言うんだい?」
その時、3人の会話に急に割り込んでくる声が聞こえた。その方角に顔を向けると、そこには2人の魔女が立っていた。即座に戦闘態勢に入るアリス達。
「カカッ、わしらを相手にするようじゃぞ?」
「カカカッ、身の程知らずもいいところじゃ――――――」
『ドゴッ!!!』
言葉が言い終わる前に、いつの間に近づいたのか、方割れの魔女をフルスイングで殴り飛ばすレース。
「・・・・・カ?」
「あなたも、他人事じゃないわよ?」
呆気にとられているもう片方の魔女に対し、そう言葉にすると同時に斬りかかるアリス。それを寸でのところでかわし魔女は上空へあがった。
「大丈夫かえ、カトロワ?」
「なんとかの・・・・まったく失礼な奴らじゃ。口上も述べさせんとは。」
上空の魔女が声をかけると、瓦礫の中から出てきながらそう言葉にするカトロワと呼ばれた魔女。
「先手必勝です。あなた達を全員倒せば、それだけでも問題は解決しますから。」
不敵に笑いながらアルクアンシェルを展開するネージェ。
「・・・・ネージェ、性格変わったかニャ?」
そのやり取りに苦笑いを見せつつ、自分の剣を抜くチャト。
「まぁ、そんなことより。ネージェの言い分はもっともね・・・・・その案、乗ったわ!!」
同じく不敵の笑みを浮かべ刀を魔女に向けるアリス。
「・・・・カデュー、こ奴らはちょっとわしらをなめすぎてやしないかい?」
「カカッ、そうじゃの。わしらの力、見せてやろうぞ。」
その言葉をかわきりに、戦闘が始まった。
魔女は当然の如く魔術を駆使し攻撃してくる。しかし、それは彼女達には一切当たる事はなかった。アリスとチャトは華麗にかわしていき、ネージェの防御にはハイドランジアの盾。さらに、彼女達はかわすだけではなく、魔女たちに迫っていた。
「なんじゃ、こ奴らは?!」
「化け物かえ?!」
「それは、とんだ褒め言葉ニャ!」
二人の魔女にそう言葉を返すと、チャトは地上にいたカトロワに膝をつかせる。
「そうですね、そう呼ばれても悪い気はしないですね!レース!!」
ネージェの掛け声に合わせ、アルクアンシェルの連携により上空へ上がったレースは、その一撃でカデューを地面にたたき落とし、二人を同じ位置にまとめる。
「じゃぁ、化け物らしく・・・圧倒的な力で呑みこんであげるわ。」
そう言うとアリスは抜刀の構えをとる。
「 〝秘剣 『一刀』〟 !!」
撃ち出された特大の斬撃は、最後の言葉を発する余裕さえ与えず二人の魔女を呑みこんでいった。
「・・・・・あれが〝一刀〟?・・・・なんか、斬撃の大きさがおかしくなかったかニャ?」
チャトが目を丸くし、疑問を投げかける。
「そりゃそうでしょ。私だって4年間を無駄に過ごしてたわけじゃないのよ?」
そう言いながらアリスは納刀した。
「ニャ~、ルージェルフで見た一撃も〝ただの一刀〟だったんだニャ~・・・〝大地裂〟とか撃ったらどんな大きさになるんだろうニャ~――――――」
考えながらチャトは遠い目をしていた。その時、遠くから聞きなれた声が聞こえてきた。
「リアン、どこに行く!?」
「今の斬撃は絶対そうだって!!」
声が近づいてくるのがわかる。しばらくすると、道の向こうにその姿が現れた。
「あっ!!アリスーーー!!」
そこに現れたのはリアンとトリーゼだった。
「みんな久しぶり!元気だったか?」
「うん。リアンも元気そうですね。」
近づいてきたリアン達に、言葉を返すネージェ。
「トリーゼとも仲良くやってそうでよかった。」
「なっ!?そ、そんなことは今どうでもいい!?」
アリスの言葉に顔をそむけるリアン。先程のやり取りを思い出したのか、軽く赤面していた。その後ろからトリーゼが顔を出した。
「君たちか、いつも世話をかけてすまないな。」
「気にしないニャ。好きでやってる事ニャ!」
トリーゼの言葉に、チャトが礼なんていらないと言葉を添える。
「それよりも!さっきの〝大地裂〟だろ?魔女と戦っていたのか?」
「正確には〝大地裂〟じゃないけどね・・・・まぁ、リアンを探すか魔女を倒すかどっちが早いかって話になってね。」
「ちょうどいいところに魔女が出てきたから、とりあえず。」
アリスの説明に、ネージェが苦笑いしながら補足する。
「さすがだな。さっきリアンが倒したのと合わせてこれで2人。残る魔女は7人か。」
「いや、私達が倒したのは2人よ。だから残りは・・・6人になるかしら?」
トリーゼの解釈に訂正を加えるアリス。
「・・・二人も倒したのか・・・・さすがというかなんというか―――――」
リアンが驚いた顔を見せる。それに笑顔で返す3人。
「ふふっ、懐かしい顔が数人いるわね。」
その時、上空から声が聞こえてきた。一様に上を向く一行。そこには一人の女性が空に浮いていた。
「あれも魔女かニャ?」
「まぁ、そうだろうな。」
チャトの問いに答えるリアン。魔女というと老婆を想像しがちだが、彼女は年の頃アリスたちと変わらないような見た目をしていた。一行がそろって戦闘態勢に入る。
「あらあら。やる気があるのはいいけど、ちょっと他人行儀はいただけないんじゃないかしら?」
「?・・・どこかで会った事がありますか?」
「いや、会った記憶はねぇな・・・・」
ネージェとリアンが怪訝な顔をしながら魔女をみつめる。
「つれないわねぇ。また会えたっていうのに。」
「それなら、名前でも教えてもらえるかしら?」
魔女の不遜な態度に、アリスが挑発しながら問いかける。
「まぁ、それでわかるなら教えましょう。私は、〝オリヴィア〟よ。」
「「「!?」」」




