第19話 闇
「終わりましたね。」
「えぇ、あなた達のおかげよ。ありがとう、ネージェ。」
素直に頭を下げるジェリア。
「頭を上げてください、お母様。わたしは―――――」
「ネージェ!?」
言葉途中、チャトの声が響いてきた。その様子から、何かが起きた事がうかがいしれた。急ぎ、チャトの近くに行くネージェ。
「どうしたの?!」
「あれ・・・何ニャ?」
チャトの指差す先、ブランネージュ軍とアルジャン軍の中央付近に、次々と地面から出没する黒い何か。現れるやいなや、両軍に向けて侵攻を開始する。
「何、あれ・・・・お母様?!」
ネージェがジェリアの方を向く。彼女もその姿を確認したのか頷きで答える。
「全軍前へ!!奴らが何者かはわからぬが、我らが国に一匹たりとも入らせるな!!」
「「オォォォーーーー!!」」
士気高揚するブランネージュ軍。ネージェとチャトもそれに続いた。
・
・
・
「進軍するぞ!!何者かはわからないが、奴らに国土を踏ませるな!!」
ブランネージュ軍同様、進軍を開始するアルジャン軍。リアンとフィユもそれに続く。敵と衝突するかいなかの時、援軍が到着した。
「遅くなってごめん!!わたし達も加勢するわ!!」
フィユ達の近くで馬から飛び降りるアリスにボワ、そしてラパン。
「アリス!?他のみんなは?!」
メンバーが微妙に記憶と合わないことを問いかけるリアン。
「ラプとマレーンはあっち側に行ってもらった。ルージュは・・・途中であの子の旅の目的に会ったの。だから、怒らないであげて。あの子は、必ず来るから。」
「・・・そんなことはわかってるよ。」
リアンは笑顔でアリスに返事をする。その言葉に安心したのか、アリスも一度笑顔を作ると、すかさず表情を切り替えた。
「今は目の前の敵!!来てもらってそうそうで悪いけど、全開で頼むわ!!」
「「了解!!」」
フィユの声にアリスとボワが勢いよく返事をする。
二人は、事の成り行きを聞きながら、敵を排除していく。何者かはわからないが、一つ一つの実力は大したことはなかった。
しばらく戦っていると、アリスがふと違和感に気づく。周りを見渡し、状況を確認する。
(「どういうこと?・・・・・試してみますか。」)
アリスは戦いの手を止め、回避にだけ集中し、敵から逃げ回った。そして改めて周りを確認する。
「アリス、どうした?!」
「ちょっと気になってたんだけど・・・・間違いじゃなかった!!」
リアンの問いに答えながら、再び剣を振るうアリス。
「なんでかはわかんないけど、こいつら私達・・・ううん、私とフィユを狙ってる!!」
「何?!」
リアンが辺りを確認する。黒は、攻撃を受ければそっちに集中が行くようだが、確かに、明らかに二人にむかって敵は群がっていた。
「これは私達の戦いになりそうね――――フィユ、ブランネージュ側に走って軍を退かせて!!ネージェに言えば何とかなると思うから!!リアンはアルジャン軍を!!ラパンはリアンと一緒にいて!!」
「わ、わかったですです!?」
「・・・・了解!狙いが私達って言うなら、無駄な犠牲は出していられないからね!行くよ、ファラダ!!」
「御意!!」
ラパンは返事をするとリアンの傍に駆け寄り、フィユはアリスの伝言を持ち、ブランネージュ側に走った。
「リアンも早く!!」
「・・・・わかった!無茶はするなよ、アリス。」
そう言って、トリーゼを探しにラパンと共に走るリアン。それを見送ると、敵を排除しつつボワへと近付くアリス。
「・・・ボワ、敵を両軍から引き離すわよ。」
「・・・・・わかった、ボク達が囮になるんだね?」
「そういうこと。それじゃ、行くよ!!」
アリスの号令で、戦場の中心方向へ向かって走り出した。
・
・
・
「ってこと。ネージェ、お願いね!」
「わかった。無理はしないでね、フィユ!!」
そう言って、ネージェはジェリアのもとへと走っていった。それを見送ると、マレーンが口を開く。
「ねぇ、フィユ?この状況で、アリスなら何を考えると思う?」
「ん~・・・自分達が囮になる為に、敵を引き離しにかかる、かな?」
「うん、私もそう思った。」
マレーンとフィユが、口元に笑みを浮かべつつ頷き合う。
「じゃぁ、すぐ行くに越したことないニャ。この集中攻撃は、けっこう疲れるニャ・・・」
「中心に行けばアリスさん達が連れてくるのも含めて、さらに敵は増えますわよ?」
チャトの問いにラプが的確な指摘をする。
「うっ、そうだったニャ・・・で、でもみんなといれば心強いニャ!」
「くす・・・それじゃ、向かうとしますか?」
「「「はい!!」」」
掛け声の後、マレーン達も戦場の中心へと向かい走り出した。
・
・
・
狙い通り、彼女達に敵はついてきて、戦場の中央付近は黒で溢れ返るようだった。
マレーン達が到着するとほぼ同時くらいに、アリス達もそこに姿を現した。フィユは後ろにラプを乗せ、縦横無尽に走りつつ、槍撃と魔術で敵を蹴散らしていく。ボワとチャトは、持ち前の機動力を活かし、協力して敵を退ける。そして、アリスとマレーンは背中合わせに立ち、向かってくる敵を一刀両断に伏していた。
「よく同じ考えに至ったわね、マレーン?」
「アリスが考えそうなことを想像しただけ。アリスってわかりやすいから。」
戦闘の最中にありながら会話をかわす余裕を見せる二人。よく見れば他の仲間も、余裕の表情を呈していた。
彼女達の活躍は顕著に表れ、敵の数が明らかに減っているのがわかった。
「だいぶ減った?」
「えぇ。もう少しよ。」
マレーンに状況を報告するアリス。その時、突如として大きな姿が現れた。それは今までの、何ともわからない形状の奴らとは違い、黒い甲冑を着た、騎士のような姿をしていた。
「今度は、なに?」




