その後と帝の教会
ふと、目を覚ます。
そこには真っ白な天井があった。
「んー、ここはどこだ?」
俺は伸びをしながら呟く。伸びが終わると俺は上半身を起こして再び伸びをする。そうしていると扉の開く音が聞こえた。俺は音のした方を見るとグラフト先生がちょうど部屋に入ってきたようだ。
「起きたか!!大丈夫か?お前、丸一日寝ていたんだぞ!」
グラフト先生は血相を変えながら俺に迫ってくる。
俺自身どうして寝ていたかは知っているので問題ないが他の人から見るとわからないのだろう。
とりあえず、一言。
「先生、大丈夫なので揺らすのやめてくださいません。」
まぁ、一言ではないが肩を掴まれて肩を揺らされていた。これで調子が悪くなったら聞いている意味もないような気が…。
「おお、すまない。
それでどこかまだ痛むところとかは無いか?」
「いえ、大丈夫ですよ。
先生こそ大丈夫ですか?」
「問題ない。
あの後すぐに警備隊が来てなあいつらを連行していったよ。」
「そうですか…」
これで一応は安心と言えるだろう。それでも彼等だけが主犯だとは思えない。俺は一つの分かっていることがある。一番最初に放送した男がどこにもいなかった。おそらく先生が倒した訳でも連行された訳では無いはず。
「一つ質問いいか?」
今回の件について考えていると先生が俺にそう尋ねて来る。こちらとしては特に問題もないので頷く。
「良さそうだな。お前の超能力は発現したのか?」
予想通りの質問に俺は頷く。
俺としては別に知られて困るようなものではない。別に隠す意味もない。
ただ…
怖かった。
俺は分かってしまったのだ。
ずっと、俺が超能力について教わらなかった理由が…。
見れば見る程、知れば知る程強くなる能力がどんなに危険なのか今の世界情勢を知らない俺でも嫌と言うほど色々と想像できる。
全ての能力を打ち消してしまうような能力がない限りほぼ最強の能力だ。
それは下手をすればこれからの全ての事柄ひっくり返してしまう切り札になってしまう。
「なるほどな、なら一つ問おうか…」
先生は僅かに間を作ると口を開く。俺は息を飲んでそれを聞く。
「あれは…あの力はなんだ?」
俺は再び俯く。答えはわかってる…しかし、何処か負い目がある。そして、先程と同じような恐怖もある。
「可能性…」
俺は声を絞り出してやっとでてきた言葉だった。
怖い。
それでも俺はこの言葉が最適だと思い言葉にした。もし、先生が俺を否定したのなら俺は受け入れるつもりだ。そのつもりで言ったがやはり怖いものは怖かった。否定されることが…。そして、何よりその力の大きさに…。
「可能性か…ふふっ、怖いのか?その可能性ってやつは」
直後、先生の声色は優しいものに変わり始めた。僅かに優しい笑みを浮かべて俺に面と向かって話してくれる。
俺はゆっくり頷いた。
怖い。
自分でも理解出来ないくらい怖い。俺は再び、拒絶されてジッとあの暗い部屋の中の世界なんて戻りたくない。
ここで学びたい。
そういった気持ちがこみ上げてくる。
あぁそうか。
俺はただ知りたいのだ。
この能力を持ったせいだろうか?
俺は知りたくなっていた。
超能力についてそして本当の強さを…。
「安心しろ!俺はお前を否定することはない。怖いなら間違えろ、ここなら俺達がいつでも止められるから…そして」
そう言って先生は俺の頭を撫でる。
「強く…なりたいか?」
その問いに対して俺は強く頷いた。心底強くなりたいと願う。俺は知りたいのと同時に守りたいのだ。
何かは分からない…けれどきっと大事なものだと思う。
俺はこの日人生初めての成長を感じた。
************
暗い暗い地下で二人の男がいた。
一人は頭を下げて謝っており、もう一人は嗤いながら彼を見つめていた。そして、嗤っている男が口を開く。
「全く、使えないですねぇ。『新たなる光』という組織は…。実力があるから雇ったのにあっさり倒されるなんて。
正直、失望しました。我らが神の復活の邪魔にしかなりそうに無いですし死んで下さい。」
その言葉と共にもう一人の男は血相を変えて喚く。命乞いを必死に…。
「待ってくれ!次は必ずや成功させます。
お願いですので、お願いですので…命だけ?」
グチャ、といった音が響く。
そして男は只の肉塊に成り果てていた。
「次なんて、ありませんよ。我ら【帝の教会】の神ディグライトに栄光あれ」
その言葉と共に転がっている肉塊以外その場に何も無くなりいなくなった…。
今回は章のラストなので少し適当感が強いですね。
次回は登場人物紹介か用語紹介に入ります。
読んでいただきありがとうございます。
2020年にて言い回しなどなどを修正しました。今も日本語は怪しいけど昔と比べれば上がったはず。この調子でこれの前も直していく予定です。
そう言えば組織名はそれっぽく偽善団体っぽくしたけど…どっかで似たようなのあったような?