プロローグ〜春の入学式
不定期更新ですがよろしくお願いします。
入学式、それは拷問と書すべき所業である。
伊坂井 神刀は入学式でこう語る。
入学式は式とカッコつけたただの拷問である。
この行事で学生の体力を削り学生の自由の翼(言う程自由じゃない)をもぎ取ろうとするのだ。
そうこれを拷問と言わずして何と言う。
これに関しては皆も賛同してくれるだろう
。
「いや、異論大有りだから」
「何故だ!というか誰?」
俺が必死に熱く語っていたら突如として異論の声が上がった。
「いや、悪い。
俺の名前は倉橋 涼太よろしくな!
お前は?」
「俺は伊坂井 神刀だよろしく!
んで、俺の完璧な理論のどこに異論があると言うのかね君は?」
そうだそうだこの完璧理論は俺が数分で考えた手の加えようの無い理論だぞ(穴だらけ理論)。
そこまで言うなら君は一体どんな理論を…
「いや、唯の一種の儀礼にここまでイチャモン付けた奴初めて見たわ。」
「そうだろそうだろ俺は…あれ、何気に貶してね?」
「してないしてない。」
「ならいいけど」
俺の気のせいか…。
「同じクラスになれるといいな」
「え、これがクラスじゃないのか?」
席が決まってたし、もうクラスが決まってたのかと思ったんだけど。
「んな訳ないだろ。つーかお前知らないのか?」
「何を?」
「クラスは今日の適正値検査を行ってから 決まるんだぞ。」
瞬間おれの心の平穏さは一瞬で崩れ去った。
その理由を説明するにはこの学園のコンセプトと今現在の世界情勢を話さねばならない。
今から約500年前の話だ。
人類…いや、今は知恵のある者達と呼ぼう。
彼らに大きな変革をもたらした。
超能力の発見だった。
それは世界に大きな変化をもたらした。
まさに革命と呼ぶに相応しい時代を『進化時代』と呼ばれている。
深い意味は無くそのままの意味で世界は変わっていった。
今では人類は下等種として見られ始めた。
超能力によって変化して進化した者達は人類とか関係無くこう呼ぶ『亜人』と。
そう聞くと劣等種に聞こえるが、世界では人の域を超えし者達という意味で使われている。
『亜人』にも種類がたくさんあるが、それはまたおいおい。
因みに俺と倉橋は人類だ。
超能力とはいわゆる個人で保有する特殊能力である。
しかし、マンガとは違う点はれっきとした工程を重ねて一つの現象を起こすのである。
そして、優劣の差は生まれた時には決まっている。
固有能力によって。
それは個人が一番組み立てやすい能力のことを指す。
生まれた時からその能力の使用が可能らしい。
例えば、この学院の学院長の超能力は《属性の王》とよばれる能力が生まれた時から使えた能力だ。
因みに名前は非公開おまけに人類でありなが最強に最も近い人と言われている。
さて、話を戻そう。
適正値というのはこの学院においてはそれが一番大切と呼ばれている。
超能力とは簡単にいってしまえばパズルのようなものである。
例えば、《炎の剣》という超能力があったとしよう。
それを分けると、《火》+《型》+《斬》+《放出》+《生成》=《炎の剣》となる訳である。
これだけ簡単な超能力を使用するだけでも5つの工程を踏まなくてはならないのである。
そして、これらの工程を分けていくと。
まずは一番の基礎となる【素体】である。
これは《炎の剣》の中では《火》があたる。
次に【影響】である。
これは何に干渉するのかなどを決定する工程で、《生成》や《型》などが《炎の剣》に使われている。
最後に【応用】、作り上げた超能力の性質などを決める工程で《斬》や《放出》などが《炎の剣》で扱われている。
この三つにはそれぞれ得意なものがあり、それを測るものだろう。
因みに《炎の剣》が固有能力の人は先程言った五つの行程が得意な工程になるだろう。
「適正検査ねえ〜。」
「だめっぽいのか?
まぁ、最低クラスを取らないことを祈るしかないよな」
いや、決してだめという訳ではない。
ただ、単純に俺の基本スペックが分からないのだ。
そもそも超能力の知識はあるが使用したことがないのだ。
「まぁ、運次第になるかな?」
「そんなものだよな、そろそろ式が終わるな。」
周りがそれを察してか少しずつ静かになる。
そしてマイクの音だけが嫌に響く。
『気をつけ!れいっ!』
俺たちは同時に頭を下げ退場し始める。
結論から言おう。
最低クラスになりました。
そんな気はしていたんだよ。
これは一つの問題が俺をそうさせていた。
実は俺は今ままで学校に行ったことがないのだ。
義務教育にも関わらず俺は小中共に行けなかった。
今ままで家で最低限の教育と娯楽を与えられていたため俺は学校などの存在は知っていた。
そして俺が家でずっと引きこもっていた最大の理由が自分の超能力にあった。
俺の超能力は極めて珍しい《原書》持ちと呼ばれるものだった。
《原書》とは極めて珍しいが種類が豊富で大抵の場合は使えないダメ能力と呼ばれている。
過去に《原書》持ちの英雄の超能力の工程がこれだった。
《火の原書》+《生成の原書》+《放出の原書》+《範囲》=《爆炎弾》
という構成だった。
しかし、《原書》は強力だが、いくつかの制約が存在する。
この英雄が使えた工程は限られていたのだ。
《火》、《生成》、《放出》の持つ性質と《範囲》の中の《0.05〜200メートル指定》の性質しか使えなかったという。
そして、《火》などの持つ性質が分からなかったと思う。
これは《火》と言っても一概に一つではなく、例えば《炎》《焔》《爆》《爆炎》《火炎》…、といった種類がある。
それら全てを纏めて《火》と呼んでいるのである。
そして、《火の原書》はそれら全ての性質を持っているのである。
しかし、それはいいことばかりではなかった。
先も言った通り《原書》持ちは固有能力以外使うことが出来ない。
恐らく俺はとんでもなく危険な能力かよっぽど弱いので秘匿したいかのふたパターンだと思う。
「まぁ、最低クラスだし後者かな」
俺はそう呟いて寮へと向かっていく。
「これより職員会議を始めたいと思います。」
学院の職員室にて教師達は会議を開いていた。
今司会を行なっている教師は丸縁眼鏡の朱色の髪をした狼の【獣人】の女性だった。
「本日の議題は今年の《原書》保有者の多さと伊坂井 神刀についてです。」
瞬間周りの教師達が少しざわめく。
それを制止するかのように彼女は腕を伸ばす。
教師達は少し落ち着きをとりもどすと口を開き始める。
「とはいっても今年の《原書》保有者は何人入ったのかね?
それによっては返答もしにくいが。」
彼女は姿勢を正すと何気なく呟くかのように口を開く。
「10人…」
瞬間再び教師達がざわめき出した。
この学院には《原書》保有者は年に一人か二人しか入ってこれないという。
適正値検査の結果次第では即退学の可能性だってありえたのだ。
「これまた随分と残りましたな。
そして神刀君とやらはひょっとして《原書》保有者なのかね?」
彼女は淡々とした感じで言葉を紡ぐ。
「はい、しかし本来なら彼は即退学のはずでした。」
「ならば何故?それに適正値検査の結果はなんだったのかね?」
明らかに一人の教師は怒りを露わにしていた。
「適正値は《原書》という点以外は全て0でした。
そして上からの圧力がかかっているのです。
上では彼を必要以上に危険視しています。」
その言葉は教師達の目を鋭くさせた。
「ふざけたことだ。
彼はどうせどこかの貴族とかなんだろ?
この学院にそんな暴挙は許されないことだろ?」
教師達一同皆頷いた。
たった一人を除いては…。
深くフードをかぶり顔を隠しており相手がどんな人かは分からない。
「ふざけているのは君達の方だよ。」
フードを被った人は不意に口を開く。
「が、学院長!なにを仰いますか!
これは明らかに…」
学院長と呼ばれた者はそっと手を喋べっていた教師に翳すと、教師は声が出なくなっていた。
「話の途中で割り込まないでくれるかな。」
その瞬間誰一人して口を開くことが出来なかった。
「僕がいないときにこんな重要な案件について話すのはダメだよ。
つい今さっきね、彼の能力の情報が入ってね、今のところは完璧には分かっていないみたい。
とりあえず仮の名称は《****》てっいうみたい」
主人公だけが最強設定というわけではないですよ。