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5話 稽古

 2ヶ月後


 今日は妹の誕生日である。だが、何かを祝うという事もなく何時もどうりの日だった。

 この世界では5歳ごとに誕生を祝うそうで、俺も当然の如く祝われていない。前世の記憶がある俺としては若干寂しさを感じるが、その分誕生パーティーは盛大に行われるようなので楽しみにしておく。


『そういえば、1歳の誕生日の時にワクワクしながらパーティー的なものを待ってましたね』


 そうなのだ。俺はあるはずの無いパーティーに期待を抱いてその日を終えたんだった。何もなく次の日を迎えた時は虚しかったなぁ。


「にーに!」


 っと、俺が昔の事を思い出し気分を落としていると、妹が壁に手をつけながら歩いて来て俺を呼ぶ。 あぁ今日もなんて愛くるしいんだろう。

 

 妹は最近、少しずつではあるが話せるようになった。いやー初めて呼んでくれた時は昇天するかと思ったぜ。俺、精神攻撃耐性持ってるはずなんだけどな。

 ああ、それと、妹が俺を『にーに』と呼んでいるのは気にするな。決して俺の趣味で教え込んだんじゃないからな。ホントだぞ!!


『へぇ、あんなに『にーにだぞ、にーにだからな』とか言ってた人が良く言いますね。ていうか、誰に言ってるんですか』

「よーしフラン、今日は父さんとの初稽古の日だからな。ちゃんと見ておくんだぞ?」

「はーい」


 何かぶつくさ言っているクロをサクッと無視して、俺はフランの頭をなでながら言う。

 今日は父さんとの初稽古だ。この二ヶ月間は殆んどが筋トレやランニングなどの体力作りだった為、とても楽しみにしていたのだ。


「フェルー!始めるわよー」


 と、母が庭から呼んでいる。庭に行くと父の方も準備は出来ているようなので、さっそくは始めるとする。


「フェル、準備はいいか」

「はい、父さん」


 稽古とは言ったが、今回は決闘形式で行う。ルールは俺が父に少しでも傷をつければ勝ち。逆に父は俺に少しでも傷をつけられると負けである。


 父と向かい合い、渡された短い木刀を構える。父は何時ものふざけた顔ではなく、いたって真面目だ。それを見た俺は、思わず木刀を握る手に力が入る。


「はじめ!!」


 母の開始の合図と同時に、俺はスキル【身体強化】を発動する。

 

 【身体強化】――それは、物理防御と筋力及び、俊敏を上げるスキルである。基本消費マナは150。この時の能力値上昇率はLv1~2では1.3~1.5倍位である。このスキルはLvが上がる事によっても効果が上がるが、マナを多くつぎ込む事によっても効果は上がる。


 実を言うと、俺の能力値は物理防御と魔法防御以外、唯の3歳児と変わらない。なので、Sランク冒険者である父には単純なスペックで勝てる道理は無かったのだが、このスキルがあったおかげで俺の勝利に希望が見えた。

 今の俺のマナ総量は75000。毎日ばれないようコツコツマナ消費行っていたのでなかなかの量になった。今回はこのマナをすべて【身体強化】につぎ込む。

 まぁ全て込める必要もないと思うのだが、クロの助言なので一応やる。


「はぁ!!」


 俺は掛け声を出しつつ地面を蹴り上げ、木刀を構えジッとしている父に斬りかかった。父は動かない。『やった!!』そう俺は思った。しかし――


「なっ!?」


 そんな驚愕の声を上げたのは俺の方だった。俺が常人ならば速すぎてわからない速度で近づき、木刀を振りおろしたのを、父はノーモーションで弾き返した。


「おいおい、なんだよ今のは……危うく一本取られるところだったぜ」


 父は何処か驚愕したような興奮したような顔をしつつ、バックステップで距離を取った。


(おいおいと言いたいのはこっちの方だぞ!?)


 今のはどう足掻いても反応できる筈の無い一撃だった筈だ。それを父は予備動作ゼロで対処した。どうなってんだ。くそっ、完全に舐めていた。Sランク冒険者って奴を……いや、父を。


「やぁっ!!」


 俺はまた、父へと超高速で接近し、今度は足の方を狙って斬りかかった。

 だが、それも父は防いだ。その後も俺は何度も何度も攻めてみるが、全て防がれる。

 父と【身体強化】を発動した俺では、圧倒的に俺の方がスペック上では勝っている筈なのだ。だが、父にはそんなモノ、意味を成さない程の技術がある。

 俺のように、最初からスキルや魔法(限定的ではあるが)を持っている者とは違う、努力し続けた者の強さ。

 俺は今、それを感じた。


「父さん、僕の負けです。きっと、このままでは絶対に父に傷どころか、触れることすら出来ないでしょう」


 俺がそう言うと、父はへへっと鼻の下を人差し指でさすりながら俺に近づき、俺の頭をわしゃわしゃと撫でた。


「なにが負けだよ。見てみろ、ここ。切れてるだろ?お前は俺に傷の一つでも付ければ勝ちだったんだ。つまり、今回は俺の負けだ」


 よく見てみると、父の頬には本当に小さな、僅かな傷が付いていた。おそらく、俺が振るった木刀がソニックウェーブでも起こして、それが当たったんだろう。


「ほら、タオル。汗かいてるだろ」


 二カッとした笑みを見せる父にもらったタオルで俺は汗を拭い、家の中へと行くのだった。

 



 後に、妹からかっこよかったと言われて昇天しそうになる兄をクロは見たのだった。




 

 

ここまで読んでくださってありがとうございます。

誤字・脱字等がございましたら、報告してくださると幸いです。


今年から受験生なので投稿ペースがかなり落ちます。すみません。

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