4話 妹、誕生!!
それから1年、俺が2歳になった時、事は起こった。
「おぎゃあー!!おぎゃー!!」
家族全員が見守る中、新たな生命が誕生した。
「よーし、よしよし。元気に生まれてきてくれてありがとうねー」
父親譲りの燃えるような赤髪の赤ちゃんを母は愛おしそうに抱きかかえる。
「お父さん、この子の名前は?」
何時もは仕事で帰ってこれない姉さんも今日は一緒に赤ちゃんの誕生を見届けた。
久しぶりに姉さんと会ったが、相変わらずの美少女だ。いや、前よりも大人びているので美女の方が合っているだろう。
「ん?知りたいのか?クラリス?ん?」
「もうっ!!焦らさないで!」
デレデレとした顔で焦らす父に、姉さんは怒った。俺も怒りたい。
「はっはっは、すまんすまん。この子の名前はフランだ。フェルー、お前は今日から兄ちゃんだぞ。兄ちゃんとして、しっかり守ってやれよ!」
そう、俺は今日、兄となったのだ。
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妹観察日記(脳内)5日目
妹の名はフラン。髪の毛は父譲りの赤髪で(まだちょっとしか生えてないが)顔は母の面影があり、それはもう可愛い。
フランはというか赤ちゃんはみな、一日の殆んどを寝ているが、時々起きると俺の方をクリクリした愛くるしい目で見てくる。
くっ、そんな目で見ないでくれっ……!このままじゃ隣で悶え死んでいる父と同じ事になる!!
『……』
ジーっとこちらを見つめてくる妹、見つめられて心の中の何かと戦う兄、悶え死んだ父。他人が見たら思わずシュールと呟くだろう。
クロ、そんな残念な子を見る目は止めてくれ。
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妹観察日記(脳内)8ヶ月目
フランはすくすく成長し、最近はハイハイをするようになった。俺に付いてくる姿は可愛いとしか言えない。ちなみにフランのマナ総量は1000程度だそうで、一般的な人のマナ総量が600程度らしいので若干多いと言った感じだ。
『まったく、私のスキル【千差万別】をあんまり気軽に使わせないで下さいよ』
これらを調べているのはクロのスキル【千差万別】で、対象のありとあらゆる情報を調べる事が出来るスキルだ。通常は教会などに行って専用の魔道具を使って調べるマナ総量もクロが居れば楽ちんである。
『確かに楽ですがこの体では使用回数に制限がありますし、脳内に入る情報もマナ総量だけじゃないので大変なんですよ』
へぇーそうか、それはすまなかった。今度からはあまり(・・・)使わせないようにするぜ!
『……はぁ、もういいです。それより、今日は訓練しないんですか?』
そうなのだ。今日、というか最近は妹が付いてきて秘密の特訓が出来ないのである。しかも妹の近くには母、もしくは父がセットで付いており、迂闊に行動が起こせない。
どうしたものか……。
『剣術でも父親から習えばよいのでは?』
そうか!その手があった。俺は【絶対防御】の扱いには馴れたが、その他は何にも出来ない唯の2歳児である。ましてや元日本人。戦争もない平和な環境(イジメは受けていたが)で育った俺に戦いなどが出来るわけがない。
ならばこの過酷な世界(クロに聞いた話によると)で生きていくためにはどうしたらいいか。話は簡単、戦う術を学べばいいのだ。丁度俺の身近に、というか身内に最も適した人物が居るので都合がいい。
「父さん、僕、剣術を学びたい」
俺は正直なところ、剣とか扱えたらかっけぇ!!とかいう気持ちを抑えつつ、妹とデレデレしながら遊んでいる父に言った。
すると父はデレデレとした顔から一変し、真剣な顔で俺の前に来た。
「フェル、俺はな、今とてつもなく感動している。だがな、剣を学ぶという事は守るべきものの為に己を鍛えると言う事でもあるんだ。まだお前は若い。いや、若すぎる。そんなお前に、守りたいものがはっきりと心にあるか?」
「ある。家族を守る。僕は家族を守りたいんだ」
何故だろう。不思議と俺は即答できた。考えた事が無かったはずなのに、何故だかこれだけは守らなくちゃいけないという気持ちがした。
「……その目は心から思ってる目だな……。よしっ、いいだろう。お前に剣を教えてやる。だが、その前に一つ教えてほしい事がある。言いたくないなら言わなくていい」
「え……?何?」
その後、父が訪ねてきた質問に俺はよく理解が出来なかった。
「お前は何故、泣いているんだ?」
ここまで読んでくださってありがとうございます!
今回、というか毎回文字数が少なくすみません。時間が無い(;´д`)