3話 さらに6ヶ月後
――ごめんねごめんねごめんねごめんねこうするしかなかったの――
「……くそっ」
また、あの夢だ。
最近俺は夢を見る。それはもう最悪な夢を。夢の中では前世の妹が病気の悪化で死に、母は自殺する。そういう夢だった。俺の中にそんな記憶は ゛無い゛。想像したこともない。
何故こんな夢を見るのか。記憶の中の妹と母は元気に生きていた。妹は病があったので元気、とは言えないかもしれないが。
きっと俺がトラックにはねられて死んだ、なんて聞いたら泣き崩れたんだろうな。ごめんな、母さん。先に逝っちゃって。
『どうしたんですか?そんな顔して』
俺が心の中で謝罪していると、クロが俺の枕元に来ていた。真っ黒く艶のある毛並みは美しい、その一言である。
『な、何言っているんですか!』
なんだよ怒鳴って。褒めただけだろ?それにその体は元々はお前のモノじゃないだろ。
『それはそうですが……ってそうじゃないです。私はあなたの心配をしてるんですよ』
ほう、心配してくれるのか。だけどもう大丈夫だぞ。お前と話してたらなんかどうでもよくなった。もう寝るわ。
『……おやすみなさい』
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それから二ヶ月後、俺はそろそろ喋ることにした。若干早いような気がするが、いつまでも、いあうあ言っているのは精神的にきついのだ。ちなみに喋れるようになったのは生後三か月と結構前だったりする。
そうそう、あの後から悪夢を見ることは無くなった。というか、どんな悪夢を見ていたか忘れた。
胸糞悪い夢だったっていう事は覚えてるんだが……。
っとそんな事を考えていると母が絵本を持ってやってきたようだ。
この世界の紙はかなり貴重らしく、印刷技術も発展していないので一つ一つ手で書く必要がある。
そのため、絵本は絵も付いているのでかなりの値になる。そりゃあ物凄く。家が建つほどに。
だが、そんなモノが家には沢山ある。流石、Sランク冒険者と言うべきか。金には困ってないようだ。
「フェルー?いい子にしてたー?今日はゴブリンの殺戮者よー」
母がなんとも物騒な題名に、日本ならR18指定されるような(グロ的な意味で)表紙の絵本を俺に見せてくる。
こうなのだ。毎日こうなのだ。
母の感覚は何処かずれていて、子供に見せるのは阻まれるような絵本をチョイスする。俺じゃなかったら号泣ものだ。ちなみに昨日の絵本の題名は『死者の囁き』というものだった。
「昔々、ある所にゴブリンスレ「母さん」……え?」
母が絵本を読み始めた途中で、俺は声を発した。母の目は大きく見開かれ、読んでいた絵本は既に手元にない。
(あれぇ?なんかまずった?)
しかし、そんな考えは母の強めのハグによって払拭されることとなった。
「フェルー!!もっかい!もっかいだけ『母さん』って言って!!」
「か、母さん?」
「うぎゃぁぁぁ!!あなた!あなた!フェルが喋ったー!!」
母が庭で素振りをしている父さんを呼ぶ。母は俺が何か凄い事をするたびに父を呼ぶのだ。
そして普通の人ならば来るまでに何分かかかりそうなものだが、父の場合――。
「なんだって!?」
呼ばれてから来るまでのタイム、約2秒。
どうやって来たんだよ!?ル○ラか?ルー○でも使ったのか!?
「とっ父さんの事も呼んでくれっ!フェル!!」
父が興奮した顔で迫ってくる。……なんとなくキモいので、俺は無言で寝た振りをした。
その後、2時間ほど父が壁の隅でいじけていたので、俺は見兼ねて名前を呼んであげた。
ハグされてヒゲじょりじょりされたのは言うまでもない。
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それからさらに四ヶ月が経ち、俺は一歳を迎えた。
クロのおかげで人語はもちろんのこと、魔語と神語を完全にマスターした。【絶対防御】についてもある程度使いこなせるようになってきた。
例えば、【シールド】。これは空間に不可視の壁を作りだす魔法だが、今まではひたすらに連続発動、又はマナを大量に込めて強度を上げる事ぐらいしか思い浮かばなかったが、もう一つ有用な応用を見つけた。
それは、対象の周りに【シールド】を隙間なく展開し、圧縮するという物である。LvMAXの【シールド】の強度は一枚だけでもかなりのものであり、並大抵の攻撃では壊せない。つまり、これで捕えられた瞬間、相手は逃げ出すことも出来ずに圧縮死を迎えるのだ。
仮に【シールド】を破壊できても、逃げ出す前に新たな【シールド】を展開させることによって、損傷個所を修復することが出来る。
まさに最凶の技である。
他にも【神域】というスキルがあったが、こちらもかなりエグかった。
効果は自分の周りに不可侵の結界を張るというもので、任意のモノが侵入、又は触れた場合大抵のモノは消し飛ぶか弾き飛ぶ。
基本消費マナは10000。この時は体の表面に薄い膜が張っているような感じになる。効果範囲を1m拡大するたびに消費マナは5倍となり、無暗に扱えばあっという間にマナがすっからかんになってしまう。その分効果は高いのだが、いかんせん練習がし辛い。
クロ曰く元々は実質マナが無限にある、神神が使用するスキルだそうだ。
流石の俺もマナが無限にある訳では無いので、時間をかけて色々試した結果、拳などに一点集中して展開することによって消費マナを2500に抑えることに成功した。
まぁそれでも燃費が悪い事には変わりがないので、ここぞという時にしか使えない。
ちなみに今の俺のマナ総量は42000。まだまだ増えるようなので頑張って行こうと思う。
ここまで読んでくださってありがとうございます!
誤字、脱字等がございましたら、報告してもらえると幸いです。
1話を若干、編集いたしました。