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第1話 開幕


お久しぶりです。玖太です。

8月中旬に再開すると宣言した通り、本日より第9章(最終章)を開始したいと思います。

本日は2話投稿します。これは本日投稿の1話目です。





あらすじ。


着々と全世界に恐怖をまき散らした『第二世界侵攻』を攻略する準備を進めてきた史郎達。

そんな中、今回の事件に史郎が関わっていることが判明したり、荒巻チカを木嶋が攫ったりと騒動は有ったのだが、準備は整い――


20XX+1年、1月某日。


史郎達一団は『第二世界侵攻』を倒すために旅立つ日を迎えるのであった。







木嶋が荒巻チカを誘拐した事件よりしばらく経った。

その間に史郎達は


「さぁ~私は何貰えるのかな~!?」

「ナナちゃん楽しみにし過ぎよ……」

「へへ~! だってメイちゃんこんな皆でクリスマスパーティーなんて初めてなんだもん~!」


12月24日、寮でクリスマスパーティーを楽しんだり


1月1日


「フフフ、九ノ枝君と新年を迎えられるなんて今回の件も捨てたもんじゃないかも……」

「そ、そうか? そう言って貰えると嬉しいな」

「くか~」

「ナナの奴、寝てやがる……」


史郎、メイ、ナナ、カンナのいつもの四人で寮の史郎の部屋で新年を迎えたりしていた。


だがこのような和やかな日々がいつまでも続くわけもなく、



「これより作戦を開始する!!」


鈴木率いる『第二世界侵攻』の討伐作戦が開始された。


1月某日。寒風吹く時期のことである。


◆◆◆


そして作戦に参加する人工(アンナチュラル)能力者の生徒や既存(オリジナル)能力者達が商業船に偽装された船に乗り作戦通りイギリアに向かっている時だ。


月明りの落ちる海面を船が静かにひた進む。


そんな深夜、生徒達が寝静まった頃、船舶に付属した作戦会議室にてリツは口を開いていた。


「ようは象徴を作ることが作戦なのさ」


「そうだな。奴の策は既に完成しておる」


リツの言葉に初老の男性が頷いた。

ここは会議室、今回の作戦の重役たちが一堂に会していた。


「鈴木、奴の今回の策は、自身の思考(ミーム)の増殖させることだろう……。


『能力を有さぬ人類は悪意を抱く対象ですらない、管理対象である』


その考えを『戦争涙(バトルティアー)』と『殺意(サプレスコメント)』でイギリアを無血制覇し徹底管理することで示して見せた。『悪意を囀る小鳥』を殺害することも非常に効果的だったな……」


「確かに『小鳥』の殺害はインパクトがあったからのぉ……。おかげで彼の考えは一気に浸透した」


「奴の考えに賛同し、後を追おうとする者が後を絶たない。そしてだからこそ……」


「あぁ、さっさと奴が敷いた管理体制を破断させる必要がある……」


リツはグラスを傾けた。


「だがそれも並大抵のことではない。なんせ奴の今の目的は『現状維持』だろうからな」


「長引くイギリアの支配。それは能力者達に対する象徴に成り得る。能力を持たぬ人民は管理対象である、というな。だからこそ自身のミームの増殖を目指す奴は何よりもこの現状には何より価値がある。……まさか東京侵攻の際、『生徒』と『小鳥』どちらをとっても奴の勝ちになるとはな……」


「現状だけ見れば『小鳥』奪還の方が価値があったかもしれん。このままでは第二・第三の鈴木が現れてもなんらおかしくない……」


「だからこそ我々は早急な奴の殺害を目論んでいて、『管理体制』の打破に繋がるのがイギリアの政治家たちだ。で、奴らは問題なく動くんだろうな……」


「問題ない。先ほども連絡を取った。滞りはない」


リツが問うと赤ら顔の男が腕を組み直しながら答えた。


そう、ここまで聞けば誰でも分かるが、今回の作戦。


イギリアの政治家たちも協力するのだ。


これまで『殺意(サプレスコメント)』にて首根っこを掴まれ、従うがままだった政治家たちが反旗を翻したのだ。


しかしこれも余り綺麗な動機ではなく


「奴らも必死さ……」


クククっとリツは笑いながらグラスを煽った。




そしてこのような作戦会議があったからこそ





「行くぞ!!」


「「「はい!!!」」」


数日後


史郎達の乗る船がイギリアに『着港』。


季節は日本と同じ冬。

ひんやりとした空気が満ちるレンガ敷きのレトロな風景に辿り着くと、太陽の日差しが降り注ぐ中


史郎達、百数十の能力者集団は一気に敵の本拠地、イギリアのケイエス大聖堂に向けて駆け出した。


百数十の一般人より遥かに強化された能力者達が地を駆ける。


だというのに敵が襲い掛かってくることもない。


その理由がイギリア政治家達の関与であり


(スゲーな……)


作戦を思い出しながら史郎は舌を巻いていた。


リツは言っていたのだ。


『既にイギリア政府関係者が協力してくれる手筈になっている』と。


史郎は今回の作戦の概要とリツの言葉を思い出した。





地中海に浮かぶイギリア共和国は、マルタ共和国などと同じくくりのいわゆる『ミニ国家』と呼ばれる特殊な成り立ちを持つ非常に国土の小さい国家である。


イギリアも成り立ちは非常に特殊で、能力者の存在が大きく関与している。


そしてだからこそ能力社会の総本山『国境なき騎士団』が常駐するに至ったのだがこの面積の小ささ、国の規模の小ささは、『国民を管理する』という観点において非常に大きなアドバンテージにもなり、だからこそ鈴木のターゲットになった側面もある。


そして国民を管理するにあたって鈴木が打ち出した方針は大きく分けると二つだった。


それは『能力者を発見したら報告すること』と

『自分たちに逆らったら『殺意(サプレスコメント)』で殺害する』というものだった。


同時に鈴木は他国にも『能力者を侵入させれば国民を『殺意(サプレスコメント)』にて殺害する』と宣言しており、イギリアの政治家たちや国民、加えて全世界の首脳たちは迂闊には手を出せない状態になった。


だが今回作戦は各国首脳に許可され火蓋は切られたのだが、その理由は明白である。


今回の作戦は『成功しそうだから』だ。

だから各国政府は承認したのだ。


そして現状鈴木の管理下にあるイギリア政府も『作戦が成功しそうだから』『成功確率が非常に高いと思われるから』協力したのである。


『声』を認識した相手を超遠隔からも取り殺す。


殺意(サプレスコメント)


それにより国民を人質にとった鈴木。

だがこれで一様に国民全員が人質になったかというとそうでもなく、これで最も命の危機にさらされたのは当然イギリアの政治家たちだった。


国民的スターや歌手を殺害するより、そちらの方がよりベターで、政治的意図を強調できるからだ。


だからこそ『殺意』で第一のターゲットになるのは、有名選手や歌手などではなく、為政者達だろうと予測され


鈴木の圧力下にあったイギリアの政治家たちに秘密のコンタクトを取ったところ、今回の作戦を容認したのだ。


しかし何もこの容認も決して綺麗な心根の下、下した決断ではなく


『にしてもよく決断しましたね。死ぬかもしれないんですよ? 遂に自分たちの命を捨ててでも国民を守ろうとしたんすか?』


ある時、史郎が問うと、


『違うよ』


リツは心底下らなそうに溜息を吐き出した。


『これまで鈴木に屈服していた連中が、急に手の平を返すわけがないだろう。奴らはこの作戦が成功するだろうから『乗った』だけだよ』



つまりその意味は――


史郎が目を丸くしているとリツは眉を下げた。


『簡単な話さ。彼らはこの作戦の『後』を考え始めた。史郎、知っての通りこの作戦、ほぼ100%成功する。だが戦終了後イギリアの主権が回復したとしても、残ったのが能力者に頭を垂れていた政治家では収まりがつかないだろう。だからこそ、彼らにとって自分たちも自分の命を掛けて作戦に参加したというのは都合の良い『言い訳』になる。だから彼らは参加した。前にも言っただろう史郎。誰も綺麗な心根の下参加するわけではない、と。イギリアの政治家(かれら)も同じさ。別に国民の命と自分の命を天秤にかけて国民を選んだわけじゃない。都合の良い作戦が出てきたので、翻って自分たちも命をかけた。自分たちも一枚噛んだ。起きたことはそれだけだ。まぁ別に人間そんなもんだろう。別に汚くてなんだってとこさ』


ということで


『そしてだからこそ安心していい史郎。仮にも彼らも命がかかっているんだ。彼らも本気だ』


リツは自信ありげにそう言っていた。

そしてその『本気』がいかんなく発揮されているのだ。


史郎達能力者は商業船に偽装した船に乗り込んだ。


しかしイギリアに登録のない船だ。

当然着港する前に感知されるわけだが、それらを史郎達能力者は


「あれ誰史郎? あんな人たち今までいなかったよね」

「あぁ電波操作系の能力者。あとはソナー対策だな」


能力でカバー。あらゆる機器による感知を不能にした。

そして目視による確認も複数の『幻覚操作』系の能力で対処。

あらゆる能力で感知を困難にした。


しかし完全なカバーは到底不可能で、ある時史郎達の存在を感知した者もいたのだが、


『や、やばい……!』


報告義務を怠ると家族に危険が及ぶ。

史郎達の船を見つけてしまった小太りの男はあたふたとしながら規定手順で報告を上げるが


『……ッ!』


その情報収集先である非能力者であり鈴木の協力者となった男は既にイギリア政府の差し向けた者の手で取り押さえられていたり、


『……減速してください』


秘密裏に着港を手助けする港湾関係者が複数、既に潜んでいるのだ。



そしてそのような手解きがあるからこそ史郎達能力者集団がイギリアに突入しようと、いまだ敵影はない。



周囲の一般人が気づかないのにも理由がある。


六透筆頭の『幻覚』能力者が史郎達の存在を幻覚で覆い隠しているのだ。


だからこそ史郎達能力者は着港後、一目散にイギリアの中心部にあるケイエス大聖堂を目指していて


「行きましょう! 九ノ枝君!!」


「あぁ!!」


史郎もメイの導きに惹かれるように駆け出していたのだが



――能力者がまず能力社会に入りまず初めに教わるのは『幻覚』脱出の術だ。



だからこそ誰にも気づかれないというわけにも行かず



「お前ら!!? こんなところで何をしている!!??」



イギリアに上陸し、五分。


商業港を抜けた先で史郎達は『第二世界侵攻』に所属する能力者に気が付かれた。

そして、こうなれば――


「史郎!! 行けるか!!?」

「おう!!」



戦闘の開始である。


史郎から一気に圧が放たれた。




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