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第9話 千客万来



「アメリカに本部を置く『ラスターノーツ』のジェイクです。どうぞよろしく」


メイと決意を新たにしてから十数日後。


「よ、よろしくお願いします」


世界各国から優秀な能力者が集まって来ていた。


史郎は過去に一度、強いと聞いたことのあるジェイク・マクラーレン。

新平和組織の本拠地にやって来た日に焼けた大柄な人物と握手をしながら笑みを浮かべた。


リツが言っていた世界中の基幹組織に要請した応援が続々と集まってきているのである。


史郎はその後もちらほらとやってくる外国からの能力者の相手をしていた。


現状各国の基幹組織は一般社会と能力社会の折り合いをつけるためにてんてこ舞いだ。


一般社会から反感を買わぬよう


予め現状の一般社会からの圧力に暴走しそうな組織を説得したり、


または実際に暴れ始めてしまった能力者を直ちに捕獲したり、


『第二世界侵攻』がネット上に投稿した、死んだ『悪意を囀る小鳥』の映像に感化され自国で一般人統治を始めようとする能力者を殺害したり


実際に『第二世界侵攻』の戦線に加わろうとする能力者を殲滅したり


それでいて少しでも能力社会から一般社会と関係を改善させようと一般社会のメディア出演してみたりと大忙しだ。


そのような環境下で何重にも及ぶ身辺調査を受け『問題ない』とハンコを押せるような良識ある図抜けた実力者など、どの国にとっても貴重な人材に違いない。


だというのに各国は優秀な人材を日本に送りつけてくるのである。


突入に際してオリジナル能力者には普通に死のリスク付き纏うというのにだ。

そのような作戦に世界各国は惜しみなく人材を派遣して来るのである。

おかげで十分な戦力が賄えそうである。


だが余りに順調な展開に


「で、どうしてここまで各国が協力的なんだ?」


史郎が今回の作戦を提案した一人。

横で腕を組み来日した能力者を眺めるリツに問うた。


「一時期は批判もされてたじゃないか?」


「そりゃ一時は生徒達を無理やり強化しろという各国の圧力を跳ねっ返して、日本の能力社会に対する評価は落ちたな。だがその後はどうだ。お前の働きもあり生徒はやる気を出し、『スーパーコーディネーター』たる私の的確な育成により生徒達は真っ当で順当な成長を遂げた。そのような日本に再度世界からの評価が盛り返しているのだよ。それに各国、事情がある」


「事情?」


「あぁ事情だ。こっちのが重要だな。どの国もやらざるを得ない事情って奴がある。どの国も綺麗な心根のもと参加している訳じゃないのさ。しっかり打算した下、参加することを選んでいる。だから安心していい。彼らは作戦中裏切ったりもしないし、作戦の成功を史郎と同じように願っているよ」


「ふーん……」


そんなもんかね。


「まぁ良いけどさ」


そう言って史郎は


「ワタシの名前はレベッカ・アンダーソンよ。チリから来たわ」

「ど、どうも……」

「あなた、シロウ・ココノエでしょ? 動画見たわ。よくベルカイラ倒したわね」

「ま、まぁ……」


その後も次々とやってくる能力者と交流を深めていた。

ちなみに彼らが日本語を話せるのはこの世紀の作戦に向けて猛勉強をしたからである。


中には当然拙い者もいるのだが、作戦遂行時にはキーワードのみで対応出来るようになるはずである。


そうして、その後


「ゴーゴーゴー!!」

「分かったわ!!」

「アリサちゃん! ヒダリ!」

「く! そんなところからも打って来るの!!?」


実際にペアを組み、東京の地下空間を使い突撃演習を何度も繰り返した。


訓練とはいえ、起きる事象は本番さながら。


実際に敵役の自衛隊員は銃を発砲し、それに交じる敵役能力者達は容赦なく能力を振るう。


それら攻撃の雨を生徒達は防御型の個別能力を展開し銃弾から既存(オリジナル)能力者を守り切り、既存(オリジナル)能力者も敵能力者の能力攻撃から生徒達を守る訓練をした。


そしてこれら訓練を、能力全開で、致命的攻撃を全開で、本番さながらの緊張感で行えたのは、七校対抗体育祭で生み出すことに成功した『とある能力』のおかげである。


その能力のおかげで敵役の自衛隊員は容赦なく引き金を引き、オリジナル能力者達は容赦なく力を行使し、それらと相対することで生徒達は順調に練度を上げていた。



そうしながら生徒達は遊び心も忘れなかった。


というより、『悪意を囀る小鳥』の遺体公開後、関係が悪くなりつつある一般社会からの圧力に抵抗するように、その圧力を忘れるように生徒達は


「ナカナカ、このような状況でこのようなことをするのはメズラシイデスネー」


12月中旬、晴嵐高校の生徒達は『文化祭』を行ったのである。


仮にも能力を覚醒し、リツにみっちり仕込まれたことのある子供達だ。

能力を使用すれば映画でしか見られないような演出を現実世界の舞台で行うことも容易く


「フ、フツーにすげぇ……」

「ワレワレには能力でこのような事をする発想ナイデスネ」

「興味深イ……」


史郎や、その他見学に来た海外能力者達は想像だにしない能力の使用方法に意表を突かれていた。


またこの行事自体も一般社会との交流という側面もあり、両世界が険悪になる中でも多くの一般人が遠方から足を運んでおり、


「うおおおおおおお!! こえぇぇぇぇぇ!!」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」


能力を使用したお化け屋敷に心の底から絶叫したり


「凄い……」

「綺麗……」


歌に合わせてエフェクトの変わる元合唱部の合唱に目を奪われたりしていた。



これら反応こそが、集中強化に参加しない生徒達が文化祭を開催することを許した政府や基幹組織の目論見である。


そんな中、実は史郎には目当てがあり、


「じゃ、予定があるので俺はここで。あとは皆さんそれぞれ楽しんでね」


海外組の能力者を校内にほっぽりだすと、廊下を駆けた。


話によると我がクラス2年F組の出し物はメイド喫茶。


臨時参加も可能なその出し物にメイもメイドとして参加するようなのである。


だからこそ史郎は急いでいて、数分後、現場に到着した史郎が


「じゃぁ俺何にしようかな~」


とメイド姿のメイに隠し切れない笑み。

ニヤニヤと鼻の下を伸ばしながらメニューを開いていると、その時偶然廊下を通りかかった先ほどの海外組能力者が


「Oh……」

「Holy shit!!!!」

「Oh my God……」

「Jesus……」

「Son of a bitch!!!」


と、映画でしか聞いたことのないような悪口を立て続けに史郎に吐いたりしていた。


どうやらベルカイラ・ラーゼフォルンという能力社会の頂の一つを倒した史郎という新星が謎のコスプレをしたメイに鼻の下を伸ばしていることが相当お気に召さなかったようだ。


でもさ


You're(ユーアー) really(リアリー) an(アン) ass(アス)!!!!」


訳:『けつの穴野郎!!!!』


これはいくら何でも酷くない?


史郎は唯一理解できなかった言葉を検索し、答えに辿り着いた時肩を落とした。


だがそのような息抜きもありつつ、生徒達の育成や、オリジナル能力者との連携強化は順調に進んでいたのだが、


ある時だ


「ハァ!? 荒巻チカが攫われた!?!?」

「あぁ。どうやら彼女のパートナーシップの木嶋義人が攫って行ったらしいって」


今回の作戦の重要人物、荒巻チカがテレポーター木嶋義人に攫われるという事件が勃発した。



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