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第11話 閉会式


「雛櫛、俺と遊びに行かないか?」

「え!?」


史郎の突然の誘いにメイが顔を赤らめた。

その様子を心臓をバクつかせながら眺めながら、史郎はメイをデートに誘う切っ掛けになった日の事を思い出した。

そう、この決断に至ったのにはとある事情があるのだ。

時は数日前に遡る。


◆◆◆


数日前、七校対抗体育祭『開催中』。

『赤き光』のアジト。共用スペース。


「……俺、ヤバくね……」


深夜、史郎は手で顔を覆い項垂れていた。

何かというと史郎、今、死ぬほど『モテて』いるのだ。


体育祭で外を歩けば女子が群がってくるレベル。


例えば体育祭で史郎がふとアリーナを歩く。すると――


『アレ!? 史郎さんですよね!?』


と声をかけられ


『え、えぇ、まぁ……』

『握手してもらっても良いですか!?』

『え、あぁ、はい……』


戸惑いながらも握手をしたりする。

何ならサインや連絡先すら求められたことも少なくなかった。

そんなレベルなのだ。

そして中でも圧倒的支持層が『女子中学生』である。JCだ。


だが実はこれは想像できていた。

テレビに出た関係で史郎の支持層が子供と年寄りに集中しているのは既に判明していた。

だからこそ女子中学生からの熱い支持は兼ねてより想像は出来ていたのだが


どうやら今回は、どの学園にも多少なりとも秀でた能力を振りかざす鼻持ちならない連中がおり、そんな彼らはポジション維持のためにも


『うおおおおおお!ぶっ飛べ史郎ぉぉぉ!!』


と史郎に襲い掛からざるを得なかったのだが、そのような連中を史郎は


(メイのためにも……! 俺の前に立ちはだかる不心得の者は……!)


気合を入れて


(即殺!!)


『うぶぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!』


といった具合で問答無用で倒しまくっていたので、それも加味して人気が上がっているようなのだ。

皆口々に


「横田さんをあんなにもあっさり倒すなんて凄いです!!」

「井口をけちょんけちょんにやっつけてすかっとしました!!」

「蛭間の攻撃に全く動じないなんて素敵です!!」


などと史郎を称賛しながら史郎を覆い潰すような勢いで史郎にせっついてくるのだ。もう入れ食いである。

正直、悪い気はしない。


しないのだが……


そんな時決まって史郎は、チラリ、とメイの方を盗み見るのだが

すると


「おいメイ見ろよ、あそこ! 田中がめっちゃ頑張ってるぜ!?」

「あ、ほんとだ」


メイは試合の観戦をしているのである。


以上がここ最近の回想だ。


でだ、それを踏まえてだ……。


史郎は深夜共用スペースで独白する。


この状態、ちょっとヤバくね?


自分が多くの女性に群がられているというのにメイは無反応なのだ。

もし史郎に気があるのなら嫉妬の一つでもしても良いシーンだというのにだ。

なんなら無反応のメイに愕然とする史郎に


「ん?私の顔に何か付いている?」


とまで小首をかしげて言うまである。


いや別に嫉妬されたいわけではない。


史郎は心の中で否定した。


だが流石に築地のマグロかってレベルで女子が群がられているというのに嫉妬されないどころか『ん?私の顔に何か付いている?』は男としてかなり不味い可能性が高い。そう史郎は思うのだ。

まして化粧の件もある。

それらを踏まえると想像もしたくない可能性が浮き彫りになり史郎は


「(ウオオオオオオオオオオオ!!! ヤベェェェェェェェ!!)」


と髪を振り乱し血眼で唸っていたのだが、その様子を見て『赤き光』隊員番号6『六透優(むとうすぐる)』がスマホから顔を上げて呆れて声をかける。


「もう史郎っち、その雛櫛って子をデートに誘ったら?」

「いやそんなんもう好きって言っているようなもんじゃねーか!? 振られちゃったらどーすんだよ!!」

「お、おう……」


史郎が噛みつくと六透はのけぞった。

六透優。この『赤き光』の中で最もイケメンと言われている男で、あらゆる女と遊び倒している女経験値が破格の男であるからそのような選択肢がシレっと出てくるのだ。今だってスマホで女性とメッセージのやり取りをしている。

女性経験どころかデートすら碌にしたことのない史郎にとってメイをデートに誘うことは非常にハードルが高い議題である。


「全く。俺とお前が一緒の生き物だと思わないことだ。六透」

「なぜそんなに強気なんだ……」


息巻く史郎に六透が呆れると、二人の会話を聞いていたリツが資料から目を上げ眉を顰めた。


「今更そんなことに悩んでいるのはお前くらいだろう史郎……。雛櫛の奴ならお前が誘えばまず間違いなく誘いに乗るはずだぞ……」


そのセリフは寝耳に水だった。史郎はバッと振り返り眦を開き問い返す。


「マジすか?」

「おう、マジだマジ」


返すリツは心底馬鹿にした感じでズズズっとコーヒーを啜った。

そんな風に言われると本当にそうなのではないかという気になる。

だがこれ以上リツに尋ねるとキレられそうな気がする。


「ど、どう思うナナは」


だから斜向かいでアイスを食っていたナナに尋ねてみたのだが、ナナはというとう~んとアイスのスプーンを口に入れたまま一考し


「まぁ大丈夫じゃない? メイちゃん史郎の頼みなら断らないよ」

「そうか……」


若干的外れな回答を寄越す。


別に史郎はメイに慈悲で、情け容赦でデートに行って貰いたいわけではない。


やはりナナに聞いた自分が馬鹿だったと史郎が溜息を吐いているとキッチンで隊員のコップを洗っていた一ノ瀬が


「まぁ試しに誘ってみたらいいじゃねーか史郎。これも経験だ」


などという糞の役にも立たないアドバイス。


「良い経験って、断られる前提じゃん」

「ハッハ、確かに」


一ノ瀬はこれは一本取られたと快活に笑っていた。

そんな隊長に史郎が胡乱な視線を向けていると、最後にはナナの横で女性誌を捲っていたマドカにまで


「そんなに好きならデート誘っちゃいなさいよ煮え切らない奴ね」


と軽くなじられる始末。


クソ、皆他人事だと思って……! と史郎は女性誌を見て『あ、これ可愛い~』とか呟くマドカに若干苛立ちながら、史郎はまるで自分に興味の無い隊員に怨嗟の呪いを心の中で吐き出し、自身の思考に没入していった。


◆◆◆


だがこの日の会話によって関係を確認?するためにメイをデートに誘うという選択肢は史郎の中に生まれており


(いつまでもグズグズしてるのも面倒だし、いっそ本当に誘ってみるか……?)


そう史郎が決断しかけた時だ、バトルトーナメント決勝でメイの言葉が聞こえてきた。



『私の隣にはいつも、とある()()()()()()がいる……! 強くて、とてもカッコいい、私の憧れ……! だから私はずっとあの人の隣にいたい……!』



この声が聞こえてきたのだ。


メイの言葉に史郎の胸がジンッと熱くなる。

流石にこの言葉が指す人物はほぼ自分しかいないだろうと理解した史郎は


「……ッ」


込み上げる思いを覆い隠し、一念発起し


「雛櫛、俺と遊びに行かないか?」

「え!?」


トーナメントから帰ってきたメイをデートに誘ったというわけだ。

そしてデートに誘われたメイはというと大きく目を見開き数瞬フリーズしたのち


「い、良いけど……ッ」


髪を梳き梳き顔を赤らめ史郎とのデートを了承した。


こうして史郎とメイはデートをすることになったのだ。


「おいおいどういう風の吹き回しだ……?」


突如男らしくなった史郎にカンナは泡を食っていた。



そのあとは予定通り閉会式が開かれた。

そして下馬評通り晴嵐高校が優勝となり、晴嵐高校の生徒が特別報奨金10万円を獲得する手はずとなったのだが

総括のため壇上に上がったリツが


『だが他の学園の生徒も良く頑張った! というわけで全員に10万円を支給しよう!! おめでとう諸君!』


と全生徒に特別支給をすることを発表し、茶番に付き合わされた晴嵐高校の生徒達から


「茶番じゃねーか!!」

「ふざけんじゃねー!!」

「おっぱい揉むぞボケェェェ!!」


と容赦の無い野次が飛んだ。


こうして七校対抗体育祭は成功裏に幕を閉じ


◆◆◆


「や、やべぇ……緊張する……」

「緊張するこたねぇって、史郎ちゃん」


数日後、史郎はホテルニューレイン一階のテラスで高鳴る心臓を押さえつけメイを待っていた。

史郎の横には六透がいる。

実はこのデート六透が遠くから見守るのだ。

何も史郎がビビッて女慣れしている六透に援護を要請したわけではない。


六透の能力『幻世の王』を期待しての物だった。


今回史郎とメイは一緒に外出するわけだが、すでに史郎は有名人。

二人が一緒にいることで――今更感もあるが――メイが史郎にとって特別な人物であることを周囲に知られてしまうことを避けるために、六透の能力を頼るというわけだ。

史郎達がデートする少し遠くで六透が能力を使い続けるわけだ。


「俺がコーディネートしてやったんだから服装も無難だ。多分大丈夫だ。後は上手くやれよ。何かあったら、まぁ助けてやる」

「助けが不要なことを願うよ」

「ちげーねーな」


そして史郎と六透が駄弁っている時だ


「お待たせッ」


雛櫛メイがやって来た。



全然話が進んでいない。

次回デートに行かせます。

というか『赤き光』のキャラが一堂に会すシーン初めて書いた気が……

ちなみに高校三年生の受験生達は政府指定の寮から程近い進学塾に希望者は通っています。

ですが全員浪人するだろうというのが政府の読みです。(口には出しませんが)


今後も宜しくお願いいたします。


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