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第1話 奪う者、奪われる者

お久しぶりです。

本日より第7章開始致します。第7章は全編コメディ寄りです。

またパトリシア・ベアードの殺害&公開は時系列で言うと、この章の後半時期の出来事です。



あらすじ


『第二世界侵攻』ベルカイラ・ラーゼフォルンを撃退した史郎。

能力社会では不死能力者パトリシアがどのような事件を起こすか様々な噂が囁かれていた。

一方で史郎の通う高校はとある行事に向かい動き出していた。

その名も七校対抗体育祭である。





『ゴリラ』


霊長目ヒト科ゴリラ目に属する構成種の総称である。

以前は凶暴な動物と思われていたが近年では非常に思慮深く繊細な動物であることが知られてきている。

群れはオス一頭に対しメス複数頭の場合と雌雄混合複数頭の場合がある。しかしオス複数頭の群れはオスの幼獣がいるからであってそのオスも成長し次第追い出される。

捕食者はヒョウ。過去にヒョウに捕食されるゴリラの姿が目撃されており、これはゴリラが知性の高さ故痛みに弱いことが一因ではないかとされている。(Wikipedia参照)


「……なるほど」


深夜、史郎は『赤き光』の隊室にてPCに向かい首肯していた。


時は史郎が病院から退院して数日後のことである。


実はここ最近、史郎を悩ます問題がある。

それが、これだ。


『ゴリラ』


である。


つい先日ベルカイラ・ラーゼフォルンを倒した動画がネット上に広がったことで、ネットで史郎をゴリラと揶揄する書き込みが爆発的に増えたのだ。

それにより史郎は遂に『そもそもゴリラとは何ぞや』という哲学をするに至ったのである。



(……)


まぁね、確かにね。人ブン投げまくったし、倒しまくったし?

そういった呼び方がまかり通るのも無理はない戦い方したし、その自覚もあるけどね?

でもさぁ、俺仮にも『血の薔薇姫ブラッドローズクイーン』頑張って倒したんだけど?

あれ逃がしてたらマジヤバイ事態になってたこと間違いないかんね。うん。

東京に今以上の大ダメージが入ってた。うん、絶対。

火の海になってたかもよ?

いくら能力社会の身から出た錆とはいえ、それを何の罪もない俺が片付けたんだから褒められてもよくない?


なんだからさぁ……



『マジで能力ゴリラ過ぎるわ……何メートル人ブン投げてんだよ』

『こいつのテレキネシス握力いくらだよ……マジゴリ』

『このゴリラにマジ感謝』


(………………)


「くっそがああああああああああああああああああああああ!!!!」


ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!




ドコドコドコドン! ドコドコドン! 


『ウホオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!』


今日も史郎の雄叫びがアジトに響く。

ここ最近、よく見られる光景である。


「また荒れてんの……?」

「仕方がない。許してやれこればかりは」


荒ぶる史郎の叫びとドラミングが下階から響き、マドカとリツが溜息をつきコーヒーを啜った。



「ふぅ~~……、ふぅ~~……」


史郎は荒い息を吐き出し顔を真っ赤にしながら再びPCに向き直った。

加えてここ最近史郎を悩ませている議案があるのだ。

それがこれである。

史郎がカチリとクリックすると、それは広がった。



【赤き光】九ノ枝史郎の個別能力を考察するスレPart21【能力ゴリラ】



これだ。

いくら何でも酷くねコレ?

世の中やって良いこととやってはいけないことがある。

そしてやってはいけないこと、それがこれだ。

こんな大勢に考察されたバレちゃうだろうが。

こういうえぐ過ぎる行為は本当にやめろ。よせ。いや、やめてくださいお願いします。



ページを開くと今日も多くの切れ者達が闊達に意見を交わしている。


当然核心に迫る書き込みなどもあり


399 名無しの能力者 sage 10/7 00:42:11 sahund21

もしかすると九ノ枝の能力、相手の意識に関係するもんなんじゃね?


なんて書き込みを発見すると


(やべぇ……!)


史郎は内心焦り暗闇の中キーボードをカタカタ走らせ


>>399 いやいやそんな訳ないべ~wwww


と書き込んだりするのだが


>>407 九ノ枝オツ


なんて返信が来たりする。


(何で分かんだよ……)


史郎は驚愕しながらこれ以上は無駄だと判断しページを閉じた。


このようにあの事件以降史郎の周辺は目まぐるしい変化を遂げている。


学園でもそうだ。

実は今、史郎が通う晴嵐高校はある催しに向け全速力で向かっている。

その名も


『七校対抗体育祭』である。


時は今日の朝に遡る。


「なぁお前どの競技出る気だ!?」

「やっぱ徒競走かな、700メートルだっけ?」

「なるほど、俺は騎馬戦だ」

「良いねぇ花形だねぇ」


朝。

食堂に集まった生徒達は顔を綻ばせながら話していた。

皆、まだ朝早い時間だというのにテンションが高い。

それだけ皆、体育祭を楽しみにしているのである。


それにはいくつか理由がある。


たとえば優勝校には全校生徒に10万円の特別支給があるとか

この大会で結果を残せば気になるあの子が振り向いてくれるかもしれない、などだ。


しかし最も大きな理由は、この大会が『他校と交流するイベントである』というものである。


そう、いくら能力覚醒したとはいえ、まだ彼らは高校生。

恋にまっしぐら、恋に夢中のお年頃である。

他校の異性と交流するイベントなら誰だって思うのだ。


この交流を経て、彼女・彼氏を作ることが可能なのではないか、と。

この俺にも私にも、ワンチャンあるんじゃね? と。


だからこそ彼ら彼女らはやる気に満ち溢れており


「ヘヘッ、絶対活躍してやるぜぇ!!」


などと息巻いているのだ。


急きょ任命された各校の『七校対抗体育祭実行委員』も盛り上げに一役買った。

生徒を盛り上げるために競技内容は生徒達から選抜された委員に任されており、日夜彼らの熱い話し合いにより通常の体育祭競技に『能力』を付加した新競技が考えられているのだが、会議に参加した委員は一様に口を揃えるのだ。


他校の生徒、めっちゃ可愛いかった、と。

あっちの男子、マジヤバイ、と。


これは恐らく物珍しいから一層そのように見える冬山ゲレンデ効果に近い特殊シチュエーションによる錯覚に違いは無いのだが、多くの者が錯覚だと知るも冬山ゲレンデ効果・夏空ビーチ効果の餌食になるように、それら言葉の影響力は凄まじくそれら噂は野火のように学園に広がった。


こうして生徒達は


「アレ、ケイコ化粧変えたぁ~?」

「ま、まぁ、少し」

「ケイコったら色気づいちゃってぇ~可愛いのぉ~」

「な、な! カノンだって髪型変えたじゃない!?」

「ブッ! あ、アタシは別にそんなんじゃないわよ! 偶然よ!」


などとジャージ姿ではしゃいだり


「あれ、梶岡なんか香水付けてる?」

「あぁ!」

「他校の女子落とすために?」

「たりめーよ!!」


などと目玉焼きを頬張りながらで騒いでいた。

ようは色気づいているのである。

特に女子の変化がヤバイと史郎の周囲でも話題だ。

やはりこういった場合様変わりするのは女子の方らしい。


そしてこの現象によりすでに少なくない男子が涙をのんでいる。


つまり気になるあの子がここ最近垢抜けた、ということは

『この学園の男子に興味はない』と

遠回しに振られたことになってしまうのだ。


『やべぇよ……斎藤さん、最近化粧濃くなってんだけど……』

史郎の周囲でも落合君が肩を落としていた。


だからこそ気になる異性がいる者は重々注意せねばならない。

その子が垢抜けていないか、という点には。


そしてそれは


(…………ッ)


史郎も変わらない……ッ!


ここ最近の史郎の最大の悩みはそれだ。

ゴリラがどうだとか個別能力がどうだとかはメイの外見変化に比べれば小事。

メイはゾウならそれ以外は蟻のような小事。


最も重大なのはメイの外見が変わっていないか、それだけなのである。

だからこそ今史郎の胸が張り裂けそうになっている。


寮の一階に備え付けられた食堂。

そこは時間により交代制で食事をとることになっており(自室で食べることも可)今は史郎達二年生が食事をとる時間。


あと少しで身だしなみを整えたメイが降りてくるはずである。

そしてそのメイの雰囲気が少しでも変わっていればそれはつまり……


(うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!)


史郎はその先を想像して頭を抱え、脳内で血の涙を流した時だ、


「アレ、今日はこっちなんだね」


背後からメイの声が聞こえてきた。


瞬間、稲妻のような衝撃が全身を駆け巡り凄まじい速度でメイへ振り向く。

すると目の前にいたのは


「おはよう、九ノ枝君ッ」


制服に身を包んだ、神の気まぐれで生まれた小さな美の奇跡・リビングレジェンドエンジェル・雛櫛メイだ。

今日も後光を放つほど麗しい。

どれくらい今日も美しいのかと言えば


(神よ……心から感謝いたします……)


思わず心の中でこのような小さな美の奇跡を成した神に感謝の祈りを捧げるレベルだ。


「どうしたの?」


そして瞑目する史郎を無垢な妖精・メイが覗き込む。


「い、いや何でもない……」


訝しむメイをはぐらかしつつ史郎はごくわずかな合間にメイのことを隈なく観察した。

そう、勿論メイが可愛いという事はこれ以上ないほど重要なことなのだが、現段階においてより重要なのはメイが昨日と変わっていないかという点である。


結果得た答えというのは


(やはり昨日より今日の方が可愛い……)


なんてどうしようも無さ過ぎる史郎比による変化である。


そう、これもまた史郎の悩みで、日に日にメイに惚れこむことで日を追うごとにメイが可愛くなって見えてしまうのだ。

おかげでメイの客観的な変更点を見極めるのに非常に難儀する。

どれくらい惚れこんでいるかと言えば、メイの存在を盾に奇跡の実在を諭されればその宗教にフツーに入信するレベルである。敬虔な信徒が爆誕する自信がある。


だが今はそれら事情は排してメイの客観的な変化に注力すべきであって


(…………)


(おおおおおおおおおおおお!!!! 落ち着け俺ぇぇぇぇ! そうじゃねーだろぉぉぉ!!!)


完全に完落ちしている(二重表現)自分を叱咤し、冷静に客観的にメイに変化が起きていないかを確認する。


そして結果として


(へ、変更点なし……。きょ、今日も最強だ……)


変化のないメイに胸をなでおろす。

どうやら史郎が懸念するような事態にはなっていないようだ。



「おはよう雛櫛。実は昨日の夜、アジトからこっちに移ってきたんだ。警備も兼ねているから」

「そう、じゃぁ一緒に朝ご飯食べましょう?」

「あぁ、そうだな」


このように体育祭は二つの側面を秘めていた。

つまり一つは新たな恋人を作る機会。

そしてもう一つが、新たな勢力に自分のお気に入りの子を捕られないようにする防衛戦の側面である。


「おいおい早く能力鍛えっぞ!」

「早く学校行こうぜ!」


男子たちが意気盛んに話すのを横目に史郎は思う。


早く体育祭終われ、と……。

もしくは中止になれ、と。


だが無情にも体育祭の日はコクコクと迫っていた。



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