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第4話 会議

完全な説明回です。



結論から言うと、失敗もしなかったが、別に上手くもいかなかった。


番組での受け答えは滞りになく進んだが、別に世論の意識に大きな変化はなかった。

その証拠に内閣支持率は5%も下がっていない。

子供達を戦場に送る計画がバレたというのに、これしか下がっていないのだ。


つまりそれが大衆の意識なのだろう。



「この支持率が下がると私達も困るわけだが、これほど変わらんと悲しくなってくるな!」

「この状態で良く笑えるわねリツ」

「もう開き直るしかないだろうマドカ。時間が解決するのを待つしかない」

「いやこれ絶対解決しねーから!」


民衆に糞味噌に叩かれた史郎は割と否定的である。


「でなきゃ何某かの『きっかけ』を待つしかないな?」

「だが今はそれよりも注力しなければならない問題がある。じゃぁ行くぞ皆……」


言って、一ノ瀬が重厚な木製の扉を開く。

一ノ瀬がドアを開けた先に広がったのは青い絨毯が敷かれた会議室だ。

『平和ビル』内部にある第四会議室である。

既に数十名の能力者が四角形に並べられたテーブルにかけていた。


「よしこれで全員が揃ったな」


入ると、鷲鼻が特徴の『新平和組織』のボスたる鷲崎は立ち上がった。


「これより『第二世界侵攻』攻撃部隊対策会議を行う」


実は現在、鈴木が組織した『第二世界侵攻』の戦闘部隊が生徒を狙って攻めてくる可能性が取り沙汰されているのだ。

だからこそ『赤き光』のメンバーも呼ばれたのである。


『赤き光』

組織ナンバー1:一ノ瀬海

組織ナンバー2:二子玉川リツ

組織ナンバー3:三宮マドカ

組織ナンバー7:七姫ナナ

組織ナンバー9:九ノ枝史郎


5人の能力者が会議室の席に着く。


会議室には様々な組織に属する実力者が揃っていた。


◆◆◆


「つまり今までは足固めに注力していたと」

「えぇそうです」


会議はまずなぜ今生徒達に危険があるのかから始まった。

3人の隊員を送った組織のトップの太った男はしきりに顎を撫でた。


「足固めに必死だったからこそ、『騎士団』を壊滅させてからこっち、彼らは兵を送らなかったと」


「そういうことになります」


生徒の身の危険を唱えた一人である一ノ瀬は淀みなく答えた。


「だが、それ以前はどうだ。いつでも兵を送り込むことは可能だっただろう? なぜ今なんだ?」


「恐らく生徒の重要性を知られたくなかったのでしょう。新たな火種ということもあり生徒は守られていました。彼らといえど、ひとときに全員を殺害することは不可能です」


「日本は能力大国だからな……。確かに他国から完全に生徒の防衛策を知ることは不可能か……」


肥えた男は一ノ瀬の主張を受け入れる。

だが次の瞬間にはにんまりと笑った。


「だがその理論には決定的な穴があるぞ?」


男の瞳が光る。


「なぜ『能力覚醒時』に殺害しなかったんだ。『能力無効化』・姫川アイだけを攫えたということは、それ以外が『能力無効化』じゃないという事も分かったのだろう? ならなぜ危険因子でしかない彼らをその場に残したんだ? 彼らの能力は『無効化』出来ないんだろう? そうすればそもそも『能力覚醒』自体知られなかっただろうに」


「それは……」


確かにそれは史郎も疑問に思っているところではあった。


想像したくもないことだが、『能力無効化』で完封を狙いたいのならその他不要な能力者はその場で殺してしまうのが順当だった。


だが彼らは生徒を残した。


「それはつまり鈴木にとって、残りの生徒達は取るに足らない存在ということの証明にならんかね?」


その推測は突き崩せない。

史郎も二子玉川も一ノ瀬も何度もそれについては話し合ったがはっきりとした回答が得られてないからだ。


ただ、もし無理やり可能性を上げるとすれば……


「生徒を全員殺害したらそれこそ大問題になります、それだけで計画の進行が困難になるような。彼らはそれを危惧したの可能性は十分有ると考えられます」


「ハッ、国を乗っ取る計画してる奴が果たしてそんな目先の利益だけを追求するかね? 私なら先にリスクをとるな。君はどうなんだね」


「……私も鈴木の立場ならその場で生徒を殺害するでしょうね。認めます。……確かに仰る通り彼らが生徒を生かしたかは完全に謎なんです」


男の主張が全うであることを一ノ瀬は認めざるを得なかった。


確かになぜ生徒達が生かされたのかは全く不明なのだ。


だが何をどう考えても彼らの能力は致命的なはず。


だからこそこの会議は開かれたのだ。


「ご協力願えませんか……?」

「いやするに決まっているだろう」


一ノ瀬がやんわり尋ねると男はあっさり身を翻した。


「現状を子供たちが重要なのは火を見るより明らかだからな」


男は顎をさすりながら言う。


「で、敵にどんな奴がいるか推測出来てんのか?」


◆◆◆


「で、敵にどんな奴がいるか推測出来てんのか?」


「不明です」


男が尋ねるとすぐに担当の者が立ち上がった。


「ですが欧州の悪魔『血の薔薇姫ブラッドローズクイーン』を始めとする複数の凶悪で知られる能力者の消息が既に掴めなくなっています。他にも曲者と有名な者がイギリアに向かったなどの情報が上がっています」


「『血の薔薇姫ブラッドローズクイーン』かよ……」

「とんでもねぇビックネームじゃねぇか」


複数の能力者がその名に舌を巻いた。


血の薔薇姫ブラッドローズクイーン』、欧州で数百もの能力者を殺してきた、能力世界の多くある頂の一つである。



「つまりは誰が敵かは全く不明というわけか」


「その通りです。そもそも誰も鈴木がこのようなことするなど把握できていませんでしたから」


ハァ、と先程から話している男は溜息をついた。


「全く、国家乗っ取り計画を誰にも悟られず実行に移すは奴は一体どんな組織力をしているんだ……」


それもまた、謎なのだ。

なぜ鈴木はこんなにも大胆な作戦をさせられたのだろうというのは。


「当然、他国からの援助はないんだろ?」


そこで髪を短く刈りあげた男が身を乗り出した。


「鈴木の暴露により世界中が混乱の最中にある。

ましてここでイギリアに渡る馬鹿が増えると鈴木の戦力がさらに飛躍しかねん。

どの国も自国の平和維持と、渡航防止で必死だ」


「暴動鎮圧そして造反の阻止。それが一般社会との融和と敵戦力拡大防止に必須」


「仰る通りです。今回の防衛、日本にいる戦力だけで行うことになるでしょう。


では大前提を共有できたなら会議を始めます」


こうして来る第二世界侵攻の攻撃部隊に対する計画が練られ始めた。



◆◆◆



会議は数時間に及んだ。

会議が終わり、隊員たちが三々五々会議室を後にする。


「あぁ~疲れた」

「ね、眠い……」


史郎やナナも疲れ切っており目を擦りながら会議室を後にしようとしていた。


「九ノ枝君、君に折り入って頼みがある」

「え?」


だが目にクマを作る史郎を呼び止める者がいた。

寝ぼけ眼で史郎が振り返るとそこには


「え!? 鷲崎さん!?」


鷲鼻が特徴の日本能力世界トップ・鷲崎がいて、


「な、なんすか!? いやなんですか!?」


ビシィッ!と姿勢を正す。

うちの隊長の一ノ瀬とは偉さの次元が違う。


「俺との差……」


史郎の急変に一ノ瀬は思わずボヤいた。

だが思わず半眼になる一ノ瀬を無視し鷲崎は話を進める。

そして鷲崎の頼みとは次のようなものだった。


「先日の取材は残念だったね。で、そんな君に頼むのは恐縮なんだが、実は局から『正式に』君にインタビューしたいという依頼が入っていてね? 出来れば君に正式にTV番組への出演を頼みたいんだ……」

「え゛」


固まる史郎。

(聞いてねぇよ!!)

思わず心の中で絶叫するが


「私も他組織である君に頼むのはどうかと思ったのだがね……。

だが実際に『赤き光』という有名な組織に入り、学園で暮らす君の言葉は他の者とは違うのではないかと思ってね。

それに君は実際に生徒たちの意識を変えた過去がある。

そういったこともあって、もしかすると君ならば民衆にいい影響を与えられるのではないかと思ったんだ。どうだ力を貸してくれないか?」


日本だけではない、世界中の能力社会のためと思って


(クッ……!)


そんなことを言われたら断ることが出来ない。

……というかこれ、お願いの形式をとっただけの命令である。


「わ、分かりました……」


数秒後、史郎は承認した。



こうして史郎のTV番組デビューが確定した。




次話ではほんの少しですが物語の核心に迫ります。

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