第0話 プロローグ
「逃げてくださいッ!!」
頭から血を流しながら叫んだ。
「危険です! 離れてッ!!」
事態の推移に着いていけていないニュースキャスターがすぐそばに立っていた。
史郎は声を張り上げ必死にキャスター・カメラマンを奥へ追いやった。
「チィッ!」
そして、思うようにいかない行く末に歯噛みしながら空を睨んだ。
そこにあるのは……
大きく穴が開き、火の手が上がる大手テレビ局ビル。
爆炎に包まれる周囲の街路樹。
そして真っ赤な空を背景に立つ
「ハハハ、まさか貴様、この程度か!?」
狂気の笑みを張り付けたドレスに身を包む一人の女性。
「これじゃぁ私と踊れないぞ!?」
金髪を後ろで団子のようにひっつめた女性は叫ぶように笑い、浅い息を付く史郎を嘲った。
正真正銘、世界最強の一角である。
(全く、厄介なことになった……)
史郎は思わず顔を顰めた。
周囲を見れば、
「は、早くカメラ回して!」
視聴率を稼ぐチャンスだとばかり興奮するニュースキャスター。
鳴り響いて止まないサイレン。
バタバタと逃げ出す人々
勢いを上げる火の手。
「くそが……」
史郎が呟くのと同時、薔薇妃は堂々叫んだ。
「では、参る!!」
女は一瞬のうちに史郎との間合いを詰めた。
「チィッ!」
史郎はその速さに目を見開いた。
9月、東京は戦場になっていた。
第6章 東京炎上編 第0話 プロローグ
第6章開始です。
明日また更新します。




