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第12話 パートナーシップ制度

史郎と聖野との戦いから既に数日の時が過ぎていた。

すでに校内は新たな秩序が生まれつつある。

その原因は史郎。

史郎は『谷戸組』に勝ったその日、高校の運営を丸ごと放棄すると宣言していた。

だが大衆の前で倒されてしまった『権力会』が再び学園運営を行うのも難しく、代わって台頭したのは『権力会』の成立と共に消えてなくなった『生徒会』である。

優秀な能力を有する者が学園を支配する『権力会』

そしてそれをさらに推し進めたような『谷戸組』

それらを経験した学園は、今までとは違った統治を目指し始めた。


また聖野を始めとする谷戸組を倒した史郎が彼らにつけた注文は

今後も学校に来ることだけであった。

それ以外に明確な罰はない。

だが逆にそれが彼らへの罰になっていた。

罰を言い渡されないがために罪の清算はいつまでたっても出来ない。

彼らは思い思い、自分たちで考え行動を起こさねばならなくなっていた。




そして今日も史郎は昼休み


「ねぇ~教えてよ史郎ぅぅぅぅぅぅぅ!!」


ナナと一緒に屋上にいた。

ナナは順調に学力を伸ばし、ついに小学二年生の算数ドリルを制覇しつつあった。

だが躓くところもあるようで史郎に答えを教えるようにせがむ。


しかし――


「知らん!!」


史郎、今日もまた頑なに手伝いを拒否! 断固として拒否!

その理由は


「あのタイミングで寝る馬鹿の世話を焼く気はない!!」


アレ以降、史郎はナナに手厳しい。


「お前の所為で大変だったんだぞ!! 危ない目にあったんだぞ! 避けられなかったらどーする気だったわけ!?」

「で、でも史郎なら大丈夫じゃない……!」

「これとそれとでは話が違うわ馬鹿者がぁ!!」


史郎はナナにデコピンをしまくっていた。


「イテテ」


しばらくしてナナは赤くなったでこを痛そうにさすりながら再び算数に取り掛かる。

だがその際、ふとドリルからいつぞやの『パートナーシップ表』がまろびでる。

とっさにドリルに挟み込んだことがあったようだ。


「あ、これ!」


それを見てようやくナナは思い出したようだ。


「そういえばこのパートナーシップ制度! 今どうなってんの!?」


そう、谷戸組の暴走でうやむやになっていたが本来は四月末はパートナーシップ成立時期だった。

だが完全にそれを過ぎてしまっていた。

ブスッとした態度を史郎は崩さない。


「延期。延期して今度の金曜日までだってさ」

「そっかーー」


そしてこのナナ。

いくら史郎が怒りを態度に示してもナナの調子はさほど変わらず

平気で史郎が気にしていることを言ってくる。


「そういえば史郎はメイちゃんとパートナーになれたの?」

「ドュフ……ッ」


史郎から言葉にならないうめき声をあげた。

そう、史郎はいまだにメイとパートナーに成れていない。

どころか


若干避けられているのだ。


思えばそうなり始めたのは『権力総会』の後からだ。

あの時、彼女は何かを感じ取ったのだ。

だからこそ、史郎は『谷戸組』に対し怒っていたという側面もある。

そして谷戸組を倒して以降、それはいまだ変わっていない。


「ハァ……」


ガックシと史郎は落ち込む。

周囲の人物に悪く思われるよりもはるかにショックだった。

一体自分が何をしたというのか。


そしてそんな史郎をナナはジッと見つめていた。


かくして彼女は思いついた。

ポンッと手を打つ。


これは私のミスを挽回するチャンスじゃない、と。

史郎とメイをくっつければ私の罪が晴れるじゃない、そう思ったのだ。


「待ってて史郎!」


即座にナナは走り出した。


「今メイちゃん連れて来る!!」


フンス!と鼻息荒く駆けだすナナ。

というより能力者であるナナが『駆けだす』と言うのは、もはや黒い影にしか見えない高速移動でありビュゥンと妖怪じみた挙動で屋上を脱出していく。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! また暴走したぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


予想だにしないタイミングで走り出したナナを史郎は止めることが出来ない。

史郎は叫んだ。




結果、数分後、哀れにもナナに連行され


「九ノ枝くん……!?」


黒髪ショートカットの少女、メイが屋上に現れていた。


メイはメイでまさかの事態に驚いているようだ。

髪は荒れ放題で制服も乱れ、そして何より目の前にいる史郎に目を白黒させている。


「こ、これは……?」

「あ、いや、これはナナが、あの……」


動揺するメイにとっさに史郎は事情を説明する。

ナナがどういう訳か謎の勘違いをしてメイを連れてきてしまったのだと。

だが史郎の説明に上から重ねるように、ナナは意気揚々言ってしまった。


「実はね、史郎がメイちゃんとパートナーになりたいそうなの! だからね、史郎とパートナーになってあげて!」


瞬間、ピッシーンと空気が凍り付いた。


そして思い出して欲しい。

この学園におけるパートナーシップ制度。

男女でなった場合高確率でカップルになり、パートナーシップ申し込みは『準告白行為』と認識されている。

つまり史郎がメイにパートナーシップを申し込む。それは史郎がメイを好いていると本人に伝えることになる。


「お、おおおおおお、おおおいいちょっといい加減にしろナナ!!」


ヤバい!

史郎は顔を真っ赤にしながらナナの口をふさぎにかかった。

だが一方でメイも

ぶしゅううううううううううううう

という効果音でも出そうなほど顔を真っ赤にしていた。

そして史郎はナナの口をふさいだ後、振り返ると、メイと視線がぶつかった。


「「…………ッ!!」


両者ともに何も言葉を出すことが出来なかった。


かくしていたたまれない間が生まれ――


しばらくしてメイは顔を真っ赤にしながら上目がちに尋ねた。


「私で、良いの……?」


……良いに決まっている!!


え!? パートナーになってくれんの!?

史郎は思わず馬鹿な犬みたいにコクコクと頷いた。


「良かった……」


史郎が頷くのを見てメイはそう呟いた。


「わ、私も九ノ枝くんがパートナーになったらいいなって思っていた……」

「……!」


想像もしていなかった言葉に史郎は息を呑んだ。

史郎とパートナーになりたい。つまりその意味は――


「それに――」


だが史郎がその先に辿り着くより前にメイは言っていた。


「ここ最近、九ノ枝くん、怖かったから……」

「え……?」


予想だにしない台詞に史郎は一転言葉を失っていた。

そう、史郎はメイに避けられていると感じていた。

つまり、これが原因という訳か。

自分は一体何をしたと言うのか。

史郎が途方に暮れていると、メイはぽつりぽつりと語りだした。


「だってあの『権力総会』の時、九ノ枝くん、らしくなかった。九ノ枝くんなら、あの時、皆を助けに来てくれると思っていたから……。だから私は少し怖かったの。

全然話したことないけど、九ノ枝くんが変わっちゃったんじゃないかって。

それがなにより怖かった。九ノ枝くんが全然違う人に成っちゃったんじゃないかって……」


返す言葉がなかった。

確かに史郎はあの時史郎は作戦の関係で自分の意思とは異なる言葉を吐いていた。

だがメイはその史郎の異常性に気が付いていたのだ。

それほど深く史郎の事を知っており、だからこそ史郎が怖かったのだ。


「でも良かった。今の九ノ枝くんはいつもの九ノ枝くん……」


そして数瞬史郎と話すだけで内面を悟るほど、

メイは深く史郎を知っているというわけだ。


「多分、これって私たちが全然しゃべったことがないからなのよ……


だからこれから沢山おしゃべりしようね……? 九ノ枝くん……」


眼尻に浮かんだ涙を拭いてメイは


「お互いを、よく知るために……!」


涙で震える声でそう言った。


「よろしくね九ノ枝くん……」

「あぁよろしく。雛櫛……!」



そしてこの日をもって史郎とメイはパートナーになった。


◆◆◆◆◆◆



それから数日後、

黒いねっとりした髪の男が校門をくぐる。


「ここ来るの数か月ぶりだな」


その姿を見て周囲の生徒がぎょっと身を固める。


木嶋義人が復学したのだ。


これにて第二章終了です。

ここまでお読み頂きありがとうございました!

……物語を書くのって難しいですね。

今後は注意しますのでどうかご容赦


第三章は少し期間を置いてから書き始めたいと思います。

(少し疲れたので笑 といっても割とすぐ書きだすきではいますが笑)

もし良かったら今後ともよろしくお願いいたします!

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