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第11話 最大無双

ナナが寝ちゃっている!



その衝撃の事実を知ると同時、史郎は思い出していた。

連日、ナナが寝る間を惜しんでバラエティの研究をしていると言っていたのを。


だから、信じがたいことだが、ナナはこの正念場の舞台で睡魔に耐えられず眠ってしまったのだ。

ナナは3階の廊下で立ちながらスヤスヤと幸せそうな顔で眠っていた。


あの女……


そうだ。

このナナ、ウルトラ馬鹿なのだ。

そんなナナを信じていい、わけがない。


史郎が後悔するのと数瞬の時を置かずして、史郎に攻撃の雨が襲い掛かった。

史郎はとっさに『地面』にテレキネシスをかけた――


◆◆◆


「「「あぁ――――!」」」


史郎に攻撃が襲い掛かるのを見て多くの生徒が言葉にならない悲鳴を上げた。

だが直後、彼らは目を見張った。


「え――」


史郎を中心に校庭が火山のように一気に盛り上がったからだ。


◆◆◆


「……ハ?」


遠距離攻撃部隊の一人だった男は目の前の光景に目を点にしていた。

なぜなら――


ドォォォォォォォォォン!! という地鳴りのような音と共に地面が隆起し、日が遮るほど盛り上がった土砂が自身に襲い掛かってきたからである。


突如生まれた30メートル近い土石流が、波を打って自身に迫る――


「「「「うおわあああああああああああああああああああああああああああああああ」」」」


直後、土砂に巻き込まれた仲間の断末魔の叫びが響いた。


◆◆◆


周囲の人間がまるごと土砂に巻き込まれる。

だが当然死んではいない。

そしてこの土砂攻撃で敵の攻撃を一撃で打ち落として見せた史郎。

多くの敵はその姿を見て身を固まらせていた。

聖野ですら、だ。

しかし多くの敵の中には欠片も怯まない者もいた。

それが『谷戸』であった。


「やはりお前はイレギュラーだな……!」

「はや……ッ!」


谷戸はすでに史郎の顔面に拳を振りかぶっていた。

先ほどまでは谷戸は校庭の奥にいたはず。

それが今、目の前で拳をふるっているのだ。


史郎はその移動速度に素直に驚嘆していた。

しかし、


「いてェェェェェェ!!」


谷戸は史郎に振るった自身の手を引っ込めた。

余りにも史郎が『固かった』のである。

目を剥く敵に史郎は言った。


「――『テレキネシスバースト』」


その一言で谷戸は息を呑んだ。

史郎はテレキネシス能力者だと知られている。

つまりこの肉体の固さは何がしかのテレキネシスの応用だと判断したのである。


「チィ!」


即座に谷戸は距離を取った。

谷戸は校庭の外周のポールの『上』に視線を移す。

そしてそこに吸い込まれるように一直線に体が推移する。

谷戸の能力は『視点移動』。

視線を向けた先に高速移動する移動能力である。

ポールの上、つまりは地上30メートル位に即座に移動する谷戸。

ここまで逃げればとりあえず追っては来られないはずと息を落ち着ける、が、


「なにぃ!?」


史郎が凄まじい速度で校庭をかけ、その余力でもってガカカッと一歩・二歩・三歩と一気にポールを駆けのぼり始めた。

早い――、すでに三歩目でポールの中腹を突破している。

身の危険を感じ、たまらず『視線移動』を発動。

目指すは校庭を挟んで反対側の大地。

谷戸はすぐさま飛び去った。

しかし『視線移動』で飛び立った直後、ダァン!と史郎がポールを蹴って追跡し


「捕まえた」

「嘘だろッ!?」


移動道半ばの空中で史郎に首根っこを掴まれ、強引に地面に投げられた。

ヤバい――、身の危険を感じ、きりもみに揉まれながら即能力を発動。

地面に激突する手前で地平の反対側に視線をやり、校庭を低空で横切るように推移移動。

ズザザッとなんとか地面に着地した。

そして史郎はどこだと視線を上げた瞬間、


史郎の拳がこれでもかと顔面に深々突き刺さり、谷戸をふっ飛ばした。


――強すぎる……!


谷戸は憎々しげに唇と歪めながら吹っ飛ばされ、地面にごろごろと転がると気絶した。


早くもボスを倒された。

その事実に谷戸組は混乱に陥る。

しかしそこをすかさず復帰した聖野が統率した。

マイクをかなぐり捨てて叫ぶ。


「何をしているんだ!? 遠隔攻撃B班行け!!」


「「「お、おおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」


聖野の指示で思い出したように史郎に攻撃を向ける複数の男達。

どうやら遠隔攻撃班は塹壕にいた者だけではないようだ。


ドドドドドドドドドドド! と炎・雷・水球などは飛来し、史郎に『直撃』した。


しかし――


「効かないな」


煙が晴れると無傷の史郎が現れた。


「な、なぜ……!?」


攻撃を飛ばした誰もが唖然とした表情で固まる。

そしてすぐに辿り着く。

これが先ほど谷戸に言っていた『テレキネシスバースト』

その神髄だと。

テレキネシスを肉体に負荷し肉体を超強化しているのだ、と。

しかし実際の所は違う。

史郎が行っているのはただの『肉体強化』である。

『テレキネシスバースト』は自分が念動力者だと知られているため言った口から出まかせである。

オリジナル能力者は『個別能力』の他にスタンダードで『テレキネシス』と『肉体強化』を扱える。

そして史郎程の能力者が『テレキネシス』と『肉体強化』を使用すれば、

例え相手がこのレベルなら何百人いようと


負けるわけがなかった。



そこからは史郎の圧倒的な蹂躙が始まった。



史郎が遠距離攻撃部隊に襲い掛かれば、いかなる攻撃も意に介さず複数の能力者を一瞬のうちで無力化する。

その場にいた十数名の能力者は首筋に重い一撃を受け昏倒した。


肉体強化の能力者も同様だ。


「なら俺ならどうだぁ!!」


獣人変化で腕がクマのように変化した相手の攻撃も受けるも史郎は無傷。

驚き目を剥く相手の手を掴むと、そのままぶん回し


「「「うわああああああああああああああああああああああ」」」


遠心力をかけてぶん投げ、周りの能力者も丸ごとなぎ倒した。


そして


「なら数で押すのよ!!」


と数十名が束でかかってくるのを、


史郎は手前の大地に『力』を送り操作。

大地を無理やり捲り上げ、それを円を描くように操作し


「「「ああああああああああああああああああああ!!!」」」


襲い掛かる数十名の能力者に瓦礫の雨を浴びせ無力化する。

そしてそれを見て固まりだした集団に対し、


史郎は突っ込んだ。


そこからは乱戦である。


「うわ!」

「うぼ!」

「あぐふ!」

「おっふ!」


すぐさま集団の中で悲鳴が乱発する。

しかし倒れた後には史郎は不在。

もはや黒い影にしか見えない速度で縦横無尽に動き回り、次々と敵を無力化していく。

それはまるで砂場の山を崩すかのよう。

いともたやすく無力化していく。

校庭には次々と力尽きた者がつみあがる。


「う、うそだろ……!」


それを信じられないものを見るように聖野は眺めていた。

自身が考えていた作戦が、陣形がみるみるうちに瓦解していく。

まるで今までの自分の労をあざ笑うかのように。

自分の存在価値を否定するように。


いつしか聖野は周囲に指示を出すことも出来なくなっていた。


それがきっかけで今まで以上の速度で仲間はやられ、

ほんの数分もしないうちに、校庭で無事に立っているのは爆炎能力を有する大野と聖野だけとなっていた。


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


そして大野が突進。

得意の爆炎能力で史郎を襲うが、


「無駄」


爆炎の奥から史郎が悠々と現れ、瞠目する大野の腹に強化した拳を叩き込み、無力化した。



結果、残すは聖野、ただ一人。



もう聖野の兵は誰一人残っていない。



聖野がゴクリと生唾を飲み込むと、対する史郎が言った。


「なぁ、お前、相手の覇気から敵の『脅威度』って奴を割り出すんだよなぁ」


と。


そして史郎は牙を剥いたのだ。



このすべての問題の原因。

聖野の心を『折る』ために。



「なら……」



嗜虐性を帯びた瞳で



「俺の本気を見せてやる」



ゴアッ! と史郎の覇気が周囲に噴出した。



聖野の視界に映る

脅威度『191』

それで推移していた『脅威度』が一気に上昇していく。

一気にそれは『一万』を超え、『二万』を軽く飛び越し『三万』の域に到達する。

そしてとめどなく上昇していく『脅威度』


それを目の当たりにし、聖野の瞳が動揺で震える。


(嘘だろ……ッ!?)


既に『脅威度』は『六万』の域を超し、そこに見えない圧倒的脅威性でその数値をべらぼうに伸ばしていく。

そしてその覇気が


「……ッ!!」


全て『自分』に向けられる。

ビリビリとした圧。今にも消し炭にされそうなほどの圧だった。

そしてその数値が『十万』の大台を余裕で超えた時


「コイツは……ッ」


聖野の視界が真っ白な光で塗りつぶされる。


「化け、も……」


言い切る前に、聖野の瞳は上転。

泡を吹き、白目を剥き、


聖野はパタリと地面に倒れた。



「………………………………………………………………」



校舎からその様子を眺めていた生徒は思わず言葉を失っていた。

たった一人で130人の敵を倒し、

そして最後の一人は睨みを利かせるだけで倒してしまったのだ。

誰もがその事実を俄かには受け入れられず、黙っていた。


そんな彼らの瞳に校庭にいた史郎が右手を突き出すのが写りこむ。


史郎が拳を突き上げていたのだ。


それは学園の支配を取り戻した証。



「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」」」」」」」


それは万雷の拍手で迎えられた。



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