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第11話 『極光』

本日は2話投稿します。これは2話目です。

宜しくお願いします。


『極光』のグレイ・ハーヴェスト。


鈴木の正体がバレる以前より鈴木康彦のお付として常に鈴木に寄り添っていた人物であり、幾人もの鈴木の死角を屠ってきた人物だ。

有する個別は『光の操作』、その名を『(フォトン)』。


光を操りあらゆる映像を切り替え、時に光線を打ち込み敵を圧倒する能力。


正直、珍しいは珍しいが、目も丸くするほど特別な能力ではない。


彼の実力を世に知らしめた要因は他にある。


それは――彼の二つ名にもなった能力


「『極光(きょっこう)』!!」


「うおッ!!?」


苛烈な光の粒子を史郎は瓦礫で受け止めた。

しかし瓦礫は光の海に飲まれ消える。

そして光線は史郎の頬を掠め奥の壁に衝突。

大穴を開けた。


「……ッ!?」


黒炭と共にやすやすと壁を切り取ったその威力に史郎は息を詰めた。


彼の名の世に知らしめたのはこの光の粒子線。

『極光』の威力の高さである。


そう、このグレイ・ハーヴェストの特徴それは有する『(フォトン)』の出力が高すぎることである。

その圧倒的な光線『極光』がそのまま彼の二つ名になった。


そしてそのような力を有する彼の戦闘スタイルはその徹底した光線能力で圧倒することで


「『極光』ッ!!」

「クッ!」


史郎は飛来する光線を瓦礫で受け止めながら顔を歪めた。


だからこそ彼の有する個別能力『(フォトン)』と史郎の有する『この世の王(ジ・アスロン)』の相性は最悪だ。


なぜなら


「残念だったな九ノ枝!? 俺の個別『光の操作』の前には貴様の生半可な光の操作は通じないぞッ! なぜなら『個別』において一日の長があるからな!!」


と言うように、個別能力が『光の操作』であるグレイは光の操作において史郎よりも一歩も二歩も先んじているからであり、それにより


「フッ! その瓦礫、偽物(フェイク)か……!」


史郎の映像操作を個別に付随する能力で看破。

史郎の『この世の王(ジ・アスロン)』が通じないのである。


「チッ!」


史郎はやすやすと映像を看破しこちらに突っ込んでくるグレイに舌打ちをした。


そして光による『映像操作』が効かないならば戦法を切り替えるしかない。

ならば、と史郎は力を溜め


「フッ!」


光を凝縮し極光と似たテレキネシスによる光線を吐き出した。

だが


「甘いッ!! 『極光』ッ!!」


史郎の光線よりも何十倍も太さのある光線『極光』で塗り潰され、寸での所で光線を避けながら史郎は臍を噛んだ。



正直、作戦会議の段階から嫌な敵が一人いるな、とは思っていた。

それがグレイ・ハーヴェスト、この男である。


なぜならこの男には『この世の王(ジ・アスロン)』が一切通じないし、


史郎は先のベルカイラとの戦闘で『映像操作』を用い勝利したことで痛感していた。


ヒトは目に頼りすぎていると。


映像を操作し強敵に打ち勝ったことで、正確無比な光の操作が如何に凶悪な能力か痛感していた。

しかも幻覚能力ならば原因看破で攻略可能だが、物理現象による映像操作はそうもいかないのである。


だからこそ『この世の王(ジ・アスロン)』という能力連携を得て強化された史郎にとってグレイ・ハーヴェストは最も強敵だ。

そう認識していた。

そして戦闘自体も、


案の定そのように推移していた。


「どうした九ノ枝! この程度か!!」


グレイから無数の光線『極光』が何本も吐き出される。

それはいかなる干渉も許さずまっすぐ史郎へ。

史郎は跳躍しそれを躱した。

しかし


「読めてるぞ」


既にグレイも跳躍済み。空中に飛ぶ史郎の目の前に来ていて


「『極光』ッ!!」


胴体丸ごと潰すような光を放つ。

即座に史郎は瓦礫を操作し射線を潰すが、貫通。

強力な光線が史郎を捕らえた。

瞬時に肉体全体を強化。

『閾値超え』させ衝撃に耐える史郎。

しかし大きなダメージが入り、そのまま地面に肉体を転がす。

そこに


「潰れろ!! 『極光』ッ!!」


すかさずグレイが迫っていて極光を放つ。

今度は跳躍し躱す。

そしてやられてばかりではない。

史郎の操る瓦礫が丸ごとグレイに殺到した。

しかし無数の瓦礫がグレイに迫る寸前、グレイの体が光に包まれる。

そして次の瞬間には放射状に無数の旋光が迸る。


それにより史郎の操る瓦礫はもれなく消滅。

どころか無数の旋光がメイに向かうが


「ッ!!」


それを史郎は目にも止まらぬ高速テレキネシスで瓦礫を操作し防ぎきる。

そうして史郎は決心した。


この戦いの方針を。


まずこれまでの戦いで確信を得られたことがいくつかある。


それはまず第一に自分のテレキネシスによる『光の操作』はグレイの個別能力による『光の操作』に敵わない、という事実。


そして第二が、どうやら『テレキネシス』においては自分に分があるという事実である。


事前情報によるとグレイは個別能力『(フォトン)』も強力だが、テレキネシスも肉体強化も超一線級の実力の保有者だと聞いていた。


だがテレキネシスにおいては、やはり、史郎の方に分があるのだ。

なぜならグレイがテレキネシスを使ってこないからだ。


史郎がグレイの『フォトン』の前では光の操作は分が悪いと認識し、数回試した後、使用を止めたようにグレイも数回使用した後テレキネシスの操作を止めているのだ。

それは『ジャック』などの危険もあるからだろう。


超一線級のテレキネシス保有者ともされるグレイでさえ『神の見えざる巨大な手(フロムヘブン)』の異名すらとる史郎のテレキネシスの前には敵わないのだ。


ならばやりようもある。


なぜなら戦いとは常に自分の『強み』を相手に打ち付けるものなのだから。


グレイが自分の強みたる『(フォトン)』で史郎を圧倒しようとしているのと同様、


史郎も自分の強みたる『テレキネシス』で圧倒するのだ。


だからこそメイを瓦礫で守った直後、


「クッ!」


史郎は現状持てる限り全力でテレキネシスを使用。


周囲一帯、ありとあらゆるものが浮き始める。

テレキネシス圧が注入され地面がひび割れる。

空気すらビリビリと震動しだす。


そして圧倒的な圧を放ち始めた史郎は言うのだった。


「雛櫛下がってッ! 今からちょっと……」


歯を食いしばって。


「本気出す……ッ!!」


「面白い、受けて立とう」


グレイは薄く笑った。


そこからは激闘だった。



「フッ!」


史郎の操る無数のかまいたちがグレイを襲う。

グレイも自分で風を操作しなんとか身を守るが、テレキネシスにおいては史郎の方が上。


止めるので精いっぱいで、その隙に史郎は目の前に迫り、落ちていた棍棒状になった柄の先に瓦礫の付いたポールを振るう。


「クッ!」


それを即座にグレイは『極光』で舐め溶かすが、瞬間、史郎の拳が腹を打った。


「ぐふっ!」


苦悶の表情を浮かべるグレイ。

しかし彼もやられてばかりではなく、即座に彼の前に無数の光の玉が輝く。

そのビー玉状の光、全てが『極光』の種であり、瞬間、一気に光線が放たれた。


すぐに史郎も『光の操作』で防ごうとするが敵わない。

史郎の身に無数の火傷傷が生まれる。

ゴロゴロと地面を転がる史郎。

だが史郎が地面に手を付いた次の瞬間だ。


テレキネシスが地面に注入され、


「ナッ!?」


自身の直下から無数の小石が剛速球で跳ね返ってきてグレイは目を剥いた。

通常なら即死級の威力を誇る石の礫がグレイを襲う。

しかもそこで止まらない。


礫で宙に浮かされた時、轟音。

真横から壁を丸々くりぬいたかのような瓦礫が迫りグレイを弾き飛ばした。

そうして吹き飛ばされた先で即座にグレイは立ち上がるのだが、その際鼻腔にわずかな匂いが突き抜けた。

そしてそれに目を見開く。

この匂いは――


「可燃ガスだ」


そして史郎のその言葉に目を上げた瞬間、グレイの肉体を爆炎が包んだ。


そうしてグレイを焼きながら史郎はどうか倒されていてくれと願っていた。


史郎の行ったことは単純だ。

この戦いによって漏れ出していた大気中にガス臭の原因たるジメチルサルファイドをテレキネシスで凝縮。

グレイの鼻腔付近で漂わせ吸わせる。

それにより『自身の周囲に可燃性ガス』が満ちているとグレイに思い込ませ『悪霊(ゴースト)』を起動。

グレイの周囲に本当にガスを生み出し起爆したのだ。


視覚に頼らぬ『悪霊(ゴースト)』の応用だ。


だがグレイは案の定、この程度では止まらず、次の瞬間には爆炎の奥から光線が瞬いた。

それを史郎は岩で防ぐが、それを溶かし光線は史郎を襲った。


史郎は吹き飛ばされる。


そこからの戦いもまた激闘だった。

お互いに自身の手札を容赦なく晒す。


史郎は徹底的に瓦礫を操作し、グレイは徹底的に光を操作する。


グレイは光を操作しありとあらゆる映像を操作し史郎を騙し攻撃を入れようとするが


それは偽映像を史郎は物体を操り確かめ、その後反撃に出る。


両者の間には無数の攻撃の花が咲いた。


そうして余りにも強力な史郎のテレキネシスに苦虫を噛み潰し、


「ならばこれはどうだ!!!」


とこめかみの血管を浮かせ叫んだ時、終わりは訪れた。


次の瞬間、グレイの姿が『消えた』のだ。


それはつまり『光の操作』で自身の身を隠したということなのだろう。


そしてそれは


「……ッ!!」


実に厄介。

史郎は見えなくなったグレイに史郎の顔が青くなる。

そうして見えなくなったグレイを捜査する方法に頭を巡らせ始めるが

その瞬間、いくつか閃くものがあった。


そう、グレイの姿が見えなくなり臍を噛んだ自分と裏返しのように、奥の手で身を隠したグレイの心には今僅かな慢心が生まれているはずだ。


だからこそ、ここで一気にグレイに詰めよればグレイを沈めることも可能のはずだ。


そして、そこまで考えるといくつか方策は思いついた。


なぜなら史郎は最強のテレキネシスの使い手。

相手が見えなくても、攻撃することは可能なのだ。


瞬間、史郎のテレキネシスにより巨大な砂嵐が吹き荒れた。

それは『部屋全体』を覆う規模で有り


「クッ! 力技かよ!!」


砂嵐にふっ飛ばされ地面に叩きつけられグレイは叫んだ。

そしてそこに砂嵐の微妙な変化でグレイの居場所を悟った史郎が駆け寄り、

その見えないはずのグレイに拳を叩き込む。

そうしながら史郎は『目を瞑っており』、その姿を見た、史郎に殴られ宙を舞うグレイが


(コイツッ! 音だけでも感知できるのか!?)


と思ってしまった瞬間だ、『悪霊(ゴースト)』により史郎に驚異的な聴覚が付加され


宙を舞っていたグレイが『トンッ』と地面に着地した()()、史郎の脳内にグレイの姿が()()()()()()()


瞬間、不可視のグレイの顔面に『正確に』史郎の操る瓦礫が突っ込んだ。



史郎が行ったのは単純なことだ。


グレイは言っていた。


『残念だったな九ノ枝!? 俺の個別『光の操作』の前には貴様の生半可な光の操作は通じないぞッ! なぜなら『個別』において一日の長があるからな!!』


と。


そして史郎も『悪霊(ゴースト)』の使用においては一日の長がある。

それだけのことである。


例え相手に能力を知られていても、相手を騙す手段などいくらでも思いつくのだ。


それを使用し史郎はグレイ・ハーヴェストを撃破。


自身の個別を知る最強の敵を退けて見せたのである。


そうして史郎は


「行こうか」


メイの手を取り廊下を駆け



「やぁ、こんな所で偶然だね」


今回の黒幕・鈴木康彦とそのお付、数名の能力者に、遭遇したという訳である。

敵のボス、鈴木の有する個別は『相手が信用出来るか見極め』かつ『相手を信用させる』能力。


信用(トラスト)




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