第7話 『この世の王』
大聖堂地下で史郎とメイが告白し合った数分後。
『すげぇ!!』
『どうなってんだこれ!?』
ネット上は全世界規模で驚きに包まれていた。
854 ノーネームの集い 01/25 23:45:14.75 okjf75d/522
おいお前らユーチューブ見ろ!!
スゲー事になってんぞ!!
856 ノーネームの集い 01/25 23:47:55.89 ikj875sa55
ハッ!? これマジなのかよ!?
861 ノーネームの集い 01/25 23:48:32.12 juh857sada55
めちゃくちゃ荒れてんじゃねーか!!
862 ノーネームの集い 01/25 23:48.35.55 kjwecm8fuj
これマジ映像かよ!?
864 ノーネームの集い 01/25 23:48.35.55 dsdvc4452f
てゆーかコイツ強すぎんだろ!!?
皆口々にその映像の凄まじさと史郎の強さに仰天していた。
話題が沸騰したのは掲示板だけではない。
他のSNSも大きく胎動し始める。
リチャード@richarrd たった今
おい皆! イギリアでマジやべーことになってんぞ!?!?
返信 45 拡散 12586 お気に入り 458
カムチャ@kamui 三分前
イギリアがガチでヤバイ!
返信 15 拡散 3524 お気に入り 35
エリク@kiuhs 五分前
どうなってんのこれ!?
返信 4 拡散 24 お気に入り 2
そしてその映像は史郎の出身国である日本でも話題に上がり
『おいおいマジでイギリア乗り込んでんぞ!?』
『てゆうかやるってのマジだったのかよ!?!?』
『おいめちゃくちゃ激しい戦闘になってんじゃねーか!?!?』
などと話題になっており、中でも
『てゆーか史郎強すぎんだろ!?!?』
史郎の戦闘性能に皆、度肝を抜かれていた。
だがそんなことになっているとは知らない史郎は
「おおおおおおおおおおおおおお!!!」
ケイエス大聖堂、最深部。
薄暗い空間で本気でテレキネシスを奮っていた。
「「「ああああああああああああああああああああ!!!」」」
それにより敵が地面のシミとなる。
「九ノ枝君ッ!!」
廊下の奥、史郎達の背後から駆けてくる敵を見つけメイが声を張り上げる。
その一言で合点承知。
史郎は振り向きざまに
「死ねッ!!」
と言いながら爆炎を放つ敵に対し
「フッ」
『ジャック』を行使。
廊下を駆け巡る炎を吹き散らし、
「何!?」
自身の炎撃を止められ瞠目している敵に現状持てる限り本気でテレキネシス。
それにより廊下の横の瓦礫が一気に爆散し
「ああああああああああああああ!!」
男を生き埋めにする。
そうしながら今度は真向かいから敵が来て
「九ノ枝君ッ今度は前方!!」
とメイが声を上げるがそんなことは史郎も承知。
即座にテレキネシスを起動。
廊下に大小二十以上の瓦礫を縦横無尽に駆け巡らせ、
「「グアアアアアアアアアアアアア!!!」」
敵を倒した。
そうして
「行こう……!」
「う、うん……!」
とメイの手を取り廊下を駆け、その後も
「「「あ゛あ゛あ゛あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」
テレキネシスで襲い掛かって来る敵を次々倒す。
そして二人が、地下の大空間。
大広間に出た時だ
「捕殺なさい! 私の神子達!!」
30メートルを超す天井を誇る地下空間。
その天井にまで迫る巨大な土くれのゴーレム数体が史郎達に襲い掛かる。
そして流石にこの光景には
「こ、九ノ枝君どうしよう……!」
とメイも身を固くするが、
この程度史郎には造作も無い。
身を強張らせるメイに
「大丈夫、掴まってて」
そう優しく声を掛けるとメイを抱きかかえ
「うわっ!」
といきなり抱き着かれたことに赤面するメイを横目に
「一気に倒すから」
跳躍。
そして一気に数十メートル跳躍し遥か天空。
天井付近のゴーレムの頭部のある高さまで来ると、
「『空断』」
いつぞや敵が使っていた技の模倣。
30メートル以上の三日月上の気体操作で真空刃を放ちゴーレムの頭部を両断する。
それにより巨大な質量が落ち轟音が鳴り響き土煙が上げる。
そうして史郎がゴーレムの一つの頭部を切り飛ばしているとそこにズオッと大気を裂き他のゴーレムの腕が襲ってくるが、それを史郎は気体操作の応用で肘や足の裏から空気を発し、空中旋回。空中で身を転じてやすやすと避け
「ちゃんと掴まってろよ!」
「う、うん!」
メイが力を籠めるのと同じく、史郎もメイを力強く抱きしめ、伸びてきたゴーレムの腕の先に着地。
同時に空いた右手に気体を凝縮した風刃を作り、一気に肩へ向かい駆けゴーレムを裁く。
ゴーレムの腕をスキーのように下り落ちその道中で腕を上下に真っ二つにする。
そしてそのまま胴体から足元へ。一気に切り飛ばす。
そして最後には史郎が切り崩したゴーレムの腕が史郎のテレキネシスで砂状の変化し
「『砂刃』」
そう呟くと同時、電動のこぎりのように鳴動する砂状のブレードが周囲に爆散。
「嘘でしょ……」
ゴーレムを一気に百以上に分割した。
瞬く間に自身の駒を倒された。その事実に
「くぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
ゴーレムを生み出した女は唸るが、そこで女も止まらない。
「ぬぅ!」
と唸り、ゴーレムを再度生成。
ゴゴゴゴッと地響きを鳴らしながら再度分散した肉体が合体し、巨大なゴーレムに置き換わろうとする。
だが史郎とて悠長に攻撃を許す気はない。
「させるかッ」
と史郎は即座に追撃しようとするが、その時だ
「待たせたぜぇぇ!!」
「良くやったメルカ!!」
「ここでぶっ潰すぞ!!」
と広間の奥の廊下から無数の敵が駆けて来て加勢に加わった。
その数、30名近い。
その余りに圧倒的な光景に
「九ノ枝君……!」
とメイは息を詰め、
確かに『本来ならば』絶望的な状況だ。
だが史郎にはまだまだ余力があり、『秘策』もある。
「……ッ」
史郎は天に浮かす、砂で覆われた姫川や怯えるメイを見て決心した。
出し惜しみするとき時じゃない。
『アレ』をやるしかない、と。
だからこそ史郎は決心し、呟いたのだ。
「『この世の王』、起動……ッ!」
と。
それは天地万物を統べると言っても過剰ではない能力連携の一つの到達点の発露。
それにより史郎からゴアッ!と尋常ではない圧が発散する。
「「「………………ッ!!!??」」」
史郎から沸き立つ熱のような圧に敵達は一様に目を見張った。
そして次の瞬間に事は起こった。
地下空間の映像がザザザッと『乱れ』たのだ。
「ッ!?」
その光景に敵の一人は目を見開いた。
それだけではない。
「なんだこれは!?」
「どうなっている!?」
地下の土の壁面の映像が乱れたかと思ったら暗転し、地下空間の背景が真っ黒に塗り潰されたのだ。
壁面・床・天井の至る所までが黒で塗り潰される。
息を潜めてその光景を見守っていると一面黒の世界に光が瞬いた。
そして現れたのは
「え……?」
恒星。
白く輝く星が現れると、周囲に惑星が旋回しだす。
そう、周囲にはプラネタリウムのような映像が流れ始めたのだ。
壁面を彗星が駆けぬけ、壁面の終わり、床に当たると跳ね返り、火花を散らし無数の破片に分かれる。
その美しい光の芸術に現状すら忘れて見入りかけるが、次の瞬間には一気に周囲が明転した。
そして現れたのは
「嘘でしょ……ッ?」
野原。
地下空間だというのに天井は青い空に覆われ太陽の光が差し込み、遥か彼方まで野原が続いて『見える』
そしてその光景に
「……ッ!?」
遅まきながらようやく敵達は起きている現象を理解した。
テレキネシスの最高位。
未だ史上数人しか到達していない
『光の操作』による『映像操作』だ。
それにより周囲の光景を切り替えているのだ。
しかし――
敵の女性は目を見張る。
ベルカイラ・ラーゼフォルンを倒した際、史郎は確かに『光の操作』を行っていた。
しかしそれはそこにいる女の能力を端に発したはず。
だからこそ、今九ノ枝史郎の横にいる女の能力こそ不明だが、史郎には本来『光の操作』は出来ない、だから『悪霊』に騙されるな。
そう事前に言われていた。
だがこれはどういうことだ。
女は宇宙、野原、雲海、と次々変わる光景に目を丸くする。
――確かにこの映像操作もまた、もしかするとそこに居る女による能力かもしれない。
しかしそれにしては余りにも大規模だ。
だからこそこれは――
この男は、史上数名しか到達していない――
「『光の操作』に、到達して……ッ!!」
信じたくない。
そんな思いから、口を突いて出てしまっていた。
そして女の顔が恐怖に彩られると
「ご名答……」
史郎は口角を吊り上げた。
◆◆◆
それはある意味、当然のことだった。
テレキネシスによる『光の操作』は『光の操作感覚』を得ることが困難のため手に入れることが出来ない。
しかし偶然にでも何でも『光の操作』に成功し感覚が残れば、その後『光の操作』を実現することは可能になる。
加えて史郎はことテレキネシスに関しては天才的な才能を有する。
だからこそベルカイラを倒して以降、
「うん??」
ある時光操舵の感覚が残っていることに気が付いた史郎が光操作を極めることなど至極容易であり――
そして『敵にあると思ったものを本当に現実化する』
史郎の個別能力『悪霊』と『光の操作』のシナジーは抜群だ。
だからこそこの能力連携『この世の王』は奇跡の様な性能を有しており、その異次元の可能性を理解しているからこそ
「行くぞッ……!」
史郎が熱く熱のこもった吐息と共に言うと
「…………ッ!!?」
周囲の敵達は自身に迫る危機を悟り固唾を呑んだ。
こうして史郎の無双劇は始まった。
◆◆◆
瓦礫が突っ込んでくる。
女は思った。
即座に女は身を屈め避けたが、なんという事だろう、それら瓦礫が物理法則を無視するレベルでピタリと自身の上空で一瞬で静止し、こちらに真っ逆さまに『落ちてくる』。
瞬間、(ヤバイッ)と思ったが『遅かった』。
彼女の『思い』で映像は『悪霊』を経由し物体化し本物の鋭利な瓦礫となり落下。
「ッ!?」
瞬時に彼女の命を絶った。
「アマル!!」
仲間の脱落にもう一人いた女性が悲鳴を上げるが、気が付くと『いつの間にか音もなく』、目の前に研ぎ澄まされた西洋剣が放たれていた。
「え?」
そしてその光景に『驚いてしまった』時点で、もう『遅い』。
映像は実態を成し、彼女の頭部に深く突き刺さる。
「クソコイツ!!」
「ゴミみてぇに殺しやがるッ!!」
秒殺で葬られる仲間。
それに怒り周囲の男たちが一気呵成に史郎に襲おうとするが
「ナッ!!??」
ギュンッとまるで空間が引き延ばされたかのように史郎と距離が開く。
一気に三倍以上の距離が開き、敵達は一様に目を見開くが、ようやくこの段階で起きたことに気が付く。
史郎が映像操作で両者の間の光景を、まるで空間が開いたように『見せ』、『悪霊』で実際に『空間を歪めたのだ』。
『距離が開いた』という思いを糧に空間を本当に空間を歪めたのだ。
つまり『悪霊』で本当に『空間』そのものを生み出してしまったのだ。
「……ッ」
その異様な性能に息を飲むが、その生まれたわずかな間に、『悪霊』により実際に距離が生まれ攻撃も届かなくなった遥か先から無数の光弾が瞬く。
そのどれだけが本当に熱量を宿す光線だったかは分からない。
しかしそのどれもが『本物』に見え、
そのどれもが本当に『実態を宿す』
「「「あああああああああああああああああああああああ!!!」」」
光線のどれもが即死級の威力の死線となり襲い掛かり、無数の仲間が息絶えた。
その光景に
「オオオオオオオオテメェェェェェェェェ!!!」
と仲間の一人が史郎に飛び掛かる。
だが、そこに
「お前もう死んでるぞ?」
そんな史郎の言葉がかかる。
「なに!?」
そのいきなりの言葉に男は眉を潜めたが、異変はすぐ起こった。
「嘘だろ!?」
飛び掛かっていた男の腕が『もうないのだ』
腕が消し飛ばされ剥き出しの肩から間欠泉のようにそこからブシュッと音を立てて血しぶきが飛び出しているのである。
そして男は思ってしまった。
本当に腕がいつの間にか切り落とされたと。
そして一瞬でも現実だと『思ってしまえば』、その妄想はその瞬間『現実化』する。
例え腕が映像で消されただけで『まだ本当は繋がったとしていても』だ。
瞬間、見えなくされた腕が本当に切り落とされ
「ああああああああああああああああああああああ!!!」
本当に走ってきた激痛に男は悲鳴を上げ、その光景を遠隔で見ていた仲間が息を呑んでいる時だ
「そして俺は今からお前の『首』を落とす」
冷徹な史郎の言葉が男に届き
「ヒッ!!」
男がその言葉を真実だと思い込んでしまった瞬間。
『悪霊』がその未来を『現実化』する。
瞬間、タンッと軽い音を立てて、男の首が刎ね飛んだ。
そして皆がその光景に戦々恐々としりごむが中に一人、勇猛果敢に立ち向かう者がいた。
男は言う。
「幻覚に騙されねばこんなものぉぉぉ!!」
と。しかし次の瞬間、
「なに!?」
男は目を剥いた。
ダァン!と音を立てて自身の右腕が刈り取られたのだ。
激痛が男を襲う。
しかし、意味が分からない。自分はまだ騙されていない。
そう思い自身の背後を見た時だ、
血を流し転がる自分の右腕と、断腕したと思しき血塗られた鋭利な刃物が落ちていた。
「ナッ……」
その光景を見て男は息を呑む。
そう、何も幻想に注意するだけで足りる訳ではないのだ。
史郎は映像を操れるのだから――
「お前!? 物体を隠すことも――」
男が自身の不手際を嘆いた時だ、
そこに史郎の言葉が届いた。
「で、今から何枚『不可視の刃が』アンタを襲うと思う?」
「……ッ!?」
それだけで十分だった。
男がその言葉の先を想像した瞬間。
『悪霊』で実体化した不可視の刃が男をみじん切りにした。
「くぅ!!」
圧倒的な史郎の戦闘性能に男たちは思わずたじろぐが、ここで史郎を殺さねばイギリアに加勢した以上、いつか自分たちは殺されてしまう。
だからこそ彼らに『逃げる』という選択肢はなく、彼らは不可視の刃で仲間がやられ一瞬立ち止まったが、次の瞬間には一斉に史郎に襲い掛かった。
対する史郎は『光の操作』と本物の瓦礫で成される瓦礫群を周囲に惑星のように旋回させ佇んでいた。
そのまるで太陽系の主たる恒星のような有様はまさに『この世の王』であり、
『この世の王』たる名を与えられた能力コンボはその後も火を噴いた。
ある時、一人の男に通常では考えられないほどの瓦礫が襲い掛かる。
実際に多くが『映像』だった。
しかし
「クソッ!!」
男が信じ込んだ瞬間、実態を宿し男を抉り飛ばした。
またある時は史郎から過大な光線が火を噴き、
「「「ああああああああああああああああああああ!!!!」」」
敵達を消し炭にした。
またある時は史郎は映像操作でテレポートを成し、敵の背後に回り込み、敵を殺害し、
またある時は逃げようとする敵の視界を映像操作。
今度は逆に手繰り寄せるように空間を縮めたように錯覚させ、ギュンッと敵を自身の手前まで水平移動させ、その恐怖の浮かぶ敵に拳を叩き込んだ。
また時には『閾値超え』していると『見せかけ』本当に『閾値超え』させた拳を振るい敵をふっ飛ばし、その後、そのまま地面に蹴りを叩き込み、同時に『映像操作』
ビキビキと地面に一気に蜘蛛の巣状の亀裂を入れたと見せかけ、本当に『亀裂を入れ』、新たに発生させた瓦礫をテレキネシス操作。
虚実の混じる瓦礫の暴風で多くの敵を殲滅し、最後には
「終わりだ」
『閾値超え』し光を放つ拳でゴーレムを倒し、そのまま操舵者をふっ飛ばし、この場の戦いに終止符を打った。
周囲は荒れ放題の酷い有様である。
その光景にメイは
「す、すごい……」
とただただ呆れることしかできず、
「行こう」
「うん」
二人は手を取ると出口目指して駆け出した。
そうして二人してしばらく走り中層まで来た時だ
「甘いわよ」
廊下の奥から一人のスラリとした体形の女が出て来て、爆炎を放った。
瞬間、史郎は『ジャック』し退けるが、現れた女の雰囲気から即座に察する。
(この女、相当強いな……)
史郎程の実力者になると相対するだけで敵の大体の力量を察せる。
その史郎の研ぎ澄まされた警戒心がアラートを鳴らしている。
この女は、相当強いと。
そうしてようやく出てきた今までとは一線を画す相手の登場に警戒を高めるが、その時だ
「ようやく追いついたわ」
史郎達の背後から声が届く。
そしてその声は良く知ったもので
「大丈夫、史郎? 話は分かっているから先に逃げて」
史郎は安堵の息を漏らした。
そして言う。
「ありがとう、任せたぞ。『ナナ』」
そう、現れたのは史郎のパートナー七姫ナナ。
ナナが窮地であろう史郎を守るために駆け付けたのだ。
だが普段と違う点があるとすれば、史郎が狙われたことに現在、深い怒りを讃えていること。
普段温厚なナナが史郎の命を狙った女に滅多に表さない怒りを露わにしており
「任されたわ史郎」
ようやく追いついたナナはゴキキッと手を鳴らし言うのだった。
「この女は、私が潰す……ッ!」
「フッ、言ってくれるじゃない……」
少女はニヤリと笑った。




