第三話
……どこまで話ししたかな? そう三輪っていう夫婦が引越してきて
それから101号室に住んでいた住人が死んだみたい。
”みたい”っていうのは101号室の住人の死体を誰も見ていないから。
ただ尋常で無いくらいの血が壁と床にあったらしくて、その光景を最初に見つけた人は
頭がおかしくなって自殺したんだって。
ある時買い物に出かけようとした三輪 朋子がハイツの廊下で
気味の悪い人とすれ違った時にこう言われたそうです。
「お腹の子供を堕ろしなさい」
後から知ったらしいんだけど、102号室の二又瀬さんという人だったって。
普段はめったに人前には姿をみせず何をしているかも周りは誰も知らくて。
そして三輪 朋子も妊娠してから更に霊感が強くなったみたいで
鏡の中から白い服を着た女性に睨まれたり、深夜息苦しくなって目を覚ましたら
頭が半分無くなった子供が自分の上に跨って首を絞めようとしてたんだって。
まぁ他には音楽を聴いてたらノイズまじりの女性の声で
”地獄に……堕ちろ……”
だって。あははは
とにかく尋常じゃないくらいの霊に纏わりつかれる様になったらしいです。
実は三輪 朋子の家は古いお寺でお父さんはお坊さんだったみたい。
三輪 信彦が挨拶に行ったら、すごい剣幕で塩まかれて
追い返されたみたい。”絶対に結婚は許さん”って言われたって。
だから駆け落ちしたそうです。
ふふ、流石にもう気づいたかも知れないけど
康平も良く知っているよね俺の名前。
そう、俺の名前は三輪 晃。
三輪 朋子が当時妊娠していたのが俺。
憑かれてるんです俺、生まれた時からなんかケタ外れのモノに。
あまりにケタ違いなんで、俺が生まれる前にあらゆるものが俺を殺そうとしたって。
ひどいでしょ。俺がなりたくてなった訳じゃないのに。
でも俺に憑いたモノ、俺は”君”って呼んでるんだけど
俺を守る力が強すぎて……、強すぎて直接誰も俺を殺せない。
だからみんな妊婦のおふくろを殺そうとして。
そしてみんな返り討ちにあったみたいです。
おふくろが霊感が強いのは千年以上昔の高名な修験者が守護霊で
おふくろに霊障を及ぼそうとした霊体はことごとく消滅させられったって。
あははは、あははは
可哀想ですね。消滅したんですよ。
その守護霊さんも”君”からおふくろを守る為に、結構がんばったらしいけど
俺が成長するにしたがって”君”の力がおふくろに与える影響が
強くなりすぎてちゃって。
だから防げなくなってきて”君”を倒そうとしたみたい。
やっぱり返り討ちにあったけど。
確か俺が三歳の頃だったかな?
千年も経た守護霊なんて霊格からいったら神に近いはずなのに。
その後はお坊さんだったおじいちゃんが俺を殺しにきたけど、やっぱり勝てなくて。
その頃からの記憶なら少しだけあるんだ。俺が寝てる間に結界? を張ったみたい。
そんなの自殺だよ。結界が破られたら全部自分に還るのに。
おじいちゃん、全身が引き裂かれてバラバラになっちゃったって。
あははは、あははは、あははは
みんな無念だっただろうな。
”君”には絶対に勝てないのに。
”君”が言ってたんだけど、裏野ハイツの下には井戸があるでしょ。
”君”はそこに居たんだって。ずっと、ずっと気が遠くなるくらいずっと前から。
晃が語る間も注連縄の漆黒に染まった紙垂は次々と千切れ落ちていった。その度に注連縄もどす黒く染められていき、もはや縄の色を残す箇所はわずかしかなかった。
ーーあ、あと紙垂が二つしか無い。
パアアン!!
その時、障子が勢いよく開いた。
「ふふ……見~つけた」