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第六十一話 最後の願い

 すでに、空は白くなりかけていた。焚き火の炎は消えかかり、やがてしばらくすると静かに炭の中へとその姿を隠した。雨は上がり、地面は水を含んで、さらに泥濘ぬかるみを増していた。

 鳥が鳴いていた。小鳥のような鳴き声だった。狼の遠吠とおぼえは聞こえなくなっていた。その代わりに、雨の音でかき消されていた近くの小川のせせらぎが耳に届いた。


 スカイブルーの長い髪に、ブラウンの瞳。女性のような顔つきであるが、男である。たくましいといった言葉よりは、美しいと言う言葉が当てはまるだろう。その少年は、ウィリシス・ウェイカーの話にき入っていたのだ。時間も忘れ、全ての感情を置き去りにして、その物語に耳をかたむけていた。


「これが...俺の知っている全てです。それが、俺とシュバイクの...父と母の物語だ。俺はこの話を、ある魔道書まどうしょを読んだ事で知った。それには俺の知りたい事、全てが記されていた。それには俺の知りたくない事も全てが記されていた。これらは全部、シュバイク、君に真実を伝えるためだったんだ。そのために、俺はこの十年を生きてきたと言っても過言かごんではない。だが、俺の役目はまだ終わってはいないんだ」


 そう言うと、ウィリシスは静かに立ち上がった。しかし、父と母の真実の物語を聞いた今、シュバイクは自分の中で渦巻うずまく感情に対処たいしょしきれなくなっていた。信じていたものが一瞬にしてくずちて、新たなる現実が一気に目の前へとみあがったのだ。

 消えてしまった炎を目に、そこを眺めながら、答えを出すことの出来ずにいる自分。そんなシュバイクに、ウィリシスはまだ何かを伝えようとしていたのだ。しかし、それを受け取れるほどの余裕など、もう微塵みじんもなかったのだ。


「嘘だ...嘘だ...これは夢だっ。これは現実なんかじゃないっ。信じるもんかっ...僕の父さんが、グレフォードに殺された?母さんは、僕を酒場に置き去りにしたまま、小さな村で死んだ?そんなの...絶対嘘だ...ハルムートが僕を、レリアンに育てさせるために、ウィリシスを捨てさせた?父親の記憶を消させた?誰が信じるかっ!こんなの嘘だっ!夢だっ!ウィリシスっ!お前は僕が創り出した幻覚げんかくだっ!」


 シュバイクは混乱こんらんしていた。与えられた情報を処理しきれずに、それを受け流す事もできずに、ただ抱え込む事しか出来なかったからである。そして、ふらついた足取りで、岩場から歩き出ると、木のみきへと向かって走りだした。そして、その樹皮じゅひへと、こぶしを思いっきり叩きつけたのである。


「うわあああああああああああああああああああああっっ!」


 シュバイクは、泣いていた。そのブラウンの瞳から、大粒の涙をこぼして。そして、叫んでいた。今まで出した事もないような、大きな声で。

 その姿は、ただただ、痛々いたいたしかった。しかし、それをウィリシスは止める事が出来なかった。この男もまた、真実を知った時、処理しきれない感情のうずに身を任せて、己の身体を痛めつめたからだった。そして、取り返しのつかない、大きなあやまちをおかしていた。

 拳を力任せに木のみちへと殴りつけるたび、赤い血がった。痛みを感じる度に、少しだけだが、心の痛みが楽になるような気がしたのだ。痛みを忘れるために、さらなる痛みを重ねたのである。

 それがどんなにもむなしい事か分かっていたはずなのに、そうせざる負えないほどに追い詰められていたのだ。


「うぅぅうぅぅぅ!ああああああっっくそおおおおおっっ!」


 ぐしゃぐしゃになった顔には、怒りや憎しみ、そして苛立いらだちの下に、悲しみと苦しみが隠れていた。飛び散り続ける赤い血が、顔へとついてもなお、気にすることなく木を殴り続けたのである。

 拳の痛みに満足出来なくなったのか、シュバイクはその頭を木のみきへとたたきつけ始めた。ひたいが切り裂かれ、大量の血が流れ落ちていく。そんな男を見て、ウィリシスはやっとの思いで、身体を前に動かしたのである。


「やめろ...シュバイクッ!」


 十年前は四歳の年の差しかなかった二人が、今は十四歳もの差になっていた。顔の半分にぼろ布を巻きつけた男は、シュバイクの背に立つと、そのまま相手の身体の前面に手を回し込んだ。そして、頭と木の間に自分の右手を入れたのである。


はなせぇっ!僕にさわるなぁっ!」


 シュバイクは、自分が一番信用していたはずの人物に牙を向いた。本来ならば、その相手はもっと違う者だったはずである。それは、親へと歯向かう思春期ししゅんきの子供のようなもなのだった。しかし、そんな相手が居なかったシュバイクには、ウィリシスへとその怒りと苛立いらだちをぶつけるしか、手立てだてがなかったのだ。


「もういい...シュバイク、君は十分に苦しんでいる。これ以上、自分を傷つけるな。もし、まだ足りないというならば、俺を殴れ。俺を痛めつけろ。君がそうして気が済むならば、俺は何だって喜んで受け入れよう。お前は、俺にとって唯一の家族。そのものなのだから」


 ウィリシスの言葉は、シュバイクを守護しゅごする騎士のものではなかった。それは、大切な弟のような存在を必死に守ろうとする、兄のそれと同じだった。いや、それ以上だったのかも知れない。この十年という長き時が、ウィリシスをシュバイクの父親のような存在へと成長させていたのだ。


「うぅぅぅぅぅ......!何でだっ!僕は馬鹿だっ!親のかたきとも知らずに、僕はハルムートやグレフォードの近くで生きてきたんだ...何も知らずに...何て馬鹿なんだ!くそぉっ!くそぉっ!殺してやりたい!あいつ等、全員殺してやりたい!皆殺しにしてやりたいっ!」


 シュバイクの怒りと憎しみは、とどまる事がなかった。それどころか、さらに勢いをもってあふれ出してきたのだ。ここまで感情を大きくさらけ出したのを、ウィリシスでさえも見た事がなかった。

 十年以上も前に、ハギャン・オルガナウスと言う守護隊長しゅごたいちょうである騎士と、訓練としょうして戦った後だった。次の日に、シュバイクがベッドの上で見せた、僅かな感情のほころび。あのほころびが、抱えていた心の闇の一端いったんでしかなかったのだと、今、初めて思い知らされたのだった。

 ブラウンの瞳は赤く充血じゅうけつしており、そこから涙がこぼれ続けていく。鼻水も流れ落ちて、もう、涙とのさかいが判らなくなってしまったほどだ。


「シュバイク、聞くんだ。お前なら、奴等を殺す事が出来る。全てを変える事が出来るんだ。それが、お前に与えられた、特別な力なんだ」


 ウィリシスの不意の言葉が、平静へいせいさを失ったシュバイクの心を落ち着かせた。


「殺す事が...できる...?全てを...かえられる...?」


 今のシュバイクにとって、夢のような言葉であった。しかし、それがどういう意味なのかは、まだわからなかったのである。


「お前が眠りについていた十年で、世界は大きく変わった。クレムナント王国は、水中都市国家スウィフランドの支配国となり、今の王国の王は奴の孫にあたるナセテム様だ。そして、王国の領土は帝国に大きくけずり取られ、お前が知っていた頃の半分以下しか今はもうない。民は圧制あっせいに苦しみ、繰り広げられる他国との戦いで、多くの者達が死に続けている。これも全ては、お前がその特別な力を覚醒かくせいするのに、早すぎたからなんだ」


 ウィリシスは辛い現実を、シュバイクへとさらたたけるように話した。相手の気持ちをさっするならば、もっと時間をかけて伝えるべき事だったのかも知れない。


「そんな.....」


 衝撃しょうげきが大きすぎた。そして、情報が多すぎたのだ。第二王子であったナセテムが、現在の王であるという事実。さらには、独立国として、権勢けんせいほこっていた王国が、今は同盟国であったはずの支配下になったという現実。そして、ナセテムの圧制により、民は苦しみ、戦いで死に続けているというのだ。それを、ウィリシスは、自分のせいだと言う。


「だが、聞いてくれ。そんな現実を、お前なら変えられるんだ。シュバイクなら、それら全てをくつがえす事が出来る!だから、希望を持て!まだ、お前の戦いは始まってもいない!」


 ウィリシスはそう言いながら、シュバイクの正面へと向き直った。その右目の銀褐色ぎんかっしょくの瞳は、最後の希望にすがるようだった。そして、その希望とは、シュバイクそのものだったのである。


「どう言う事なんだ......教えてくれ、ウィリシス!」


 失われていたブラウンの瞳に、輝きが取り戻された。その瞳で真っ直ぐに相手をみやりがなら、問いかけたのだ。すると、ウィリシスは、シュバイクへと背を向けると、小川のせせらぎが聞こえてくる方へと向かって歩き出した。


「ついて来い、シュバイク」


 ただ、一言、そう言ったのである。茶色の布の服に身を包んだ男は、泥の地面を上手くブーツの底ですべり降りながら、坂を下っていった。


「ま、まってくれ!」


 シュバイクは、ぐしゃぐしゃになった顔を服のそでぬぐうと、その後を追っていった。

 ウィリシスが立っていたのは、小川のよこにある開けた場所だった。砂利に石が地面にはめれているような所だ。先ほどまでそそいでいた雨によって、川の幅は大きくなり、水の流れも強くなっていた。

 そこにライトイエローの髪に、薄汚れた服の男が右手に魔鉱剣まこうけんを持って、立っていたのである。その異様いような姿に、シュバイクは訳も判らずにいた。


「ウィ、ウィリシス!何なんだ!?」


 シュバイクは相手の直線状に立つと、問いかけた。すると、ウィリシスからは思いもよらない言葉が返ってきたのだ。


魔鉱剣まこうけんを抜け、シュバイク。俺と本気で戦うんだ」


 その銀褐色ぎんかっしょくの瞳には、確かに殺意さついが感じられた。


「な、何を言っているんだ!?ウィリシス、正気なのか!?僕らがここで戦っている場合なのか!?それが、僕の力と何の関係があるんだ!」


 相手の理解できない態度に、シュバイクは怒りを見せた。先ほどまでの出来事と相まってか、感情を隠す事はなかった。


「正気さ。シュバイク、お前のさっきの言葉が本心なら、俺と本気で戦って勝ってみせろ。そして、奴等を殺したいと願う、その気持ちが本当のものだと証明しょうめいしてみせろ!それも出来ないなら、結局、お前の言葉はただの負け犬の遠吠とおぼえだったんだっ!光の鎧エンライト・ミィ・ティーアスっ!」


 ウィリシスが呪文を唱えると、その身体は白い光に包まれた。そう言いながら、シュバイクへと向かって駆け出した。


「何でだよっ!意味わかんないよっ!くっ!光の鎧エンライト・ミィ・ティーアスっ」


 相手が呪文を唱えた事で、シュバイクもそれに対応せざる負えなかった。光の鎧とは、クレムナント王国の騎士達がもっとも得意とする魔法の一つである。この魔法に身を包むと、肉体の力が一気に強化されるのだ。常人じょうじんはるかに超える速度で、動く事も可能となる。


「いくぞっ、シュバイクッ!」


 ウィリシスが叫ぶと、その姿は消えた。そして、シュバイクも気づけば消えていた。

 何が起こっているのかは、わからない。ただ、金属が激しくぶつかり合う音が、誰もいないなずのその場所から周囲へと響き渡っていた。その音に驚き、木々の枝で翼を休めていた小鳥たちは飛び去っていく。

 

「くっ!速すぎるっ!」


 突如とつじょとして、シュバイクがその場に姿を現した。右手に握る剣を構えたまま、踏み込んだ足が地面を抉り取っていた。それは急激な速度から停止したかのような跡である。砂と石の大地に足がめり込み、その痕跡こんせきは数メートルほど手前から続いていたのだ。

 シュバイクは自分の周囲に動く何かを、目で追いかけているようだった。仕切りに視線を動かしては、身体の向きを変えて、剣の先を移動させる。だが、次の瞬間であった。


「うっ!」


 シュバイクの肩をさすっていった何かが、痛みを感じさせたのである。その肩を見ると、肉が裂けて血が流れ出ていた。そして次の瞬間には、左腕の肉が裂けた。

 次第にその身体には、傷が増えていく。次から次へと新たな裂傷れっしょうが、きざみ込まれていくのだ。敵の攻撃に反応できずに、シュバイクはただその場にたっているだけしか出来なかったのである。

 じわじわと追い詰められていく感覚は、恐怖きょうふ以外の何ものでもないだろう。相手はきっと、いとも簡単にシュバイクの息の根を止める事が出来るのだ。しかし、それをせずにあえて追い込んでいるのだ。そして、それを感じ取った時、シュバイクは己の持ちうる全ての魔力ハールを一点に集めた。


「ハァァァァァァツ!」


 シュバイクが叫んだ。その咆哮ほうこうが森に響き渡ると同時に、空へと向かって飛び上がった。集約しゅうやくされた魔力ハールは肉体の一部、あしへと注がれ、その力をもって一気に上へと跳躍ちょうやくしたのである。その高さ、約十メートル強。

 飛び上がったシュバイクの顔には、東の山から顔を出した朝日が照りつけた。その美しい光景を見ながら、覚悟を決めたのである。


「なるほど...そう言うことか。いいだろう、シュバイク。お前の誘いに乗ってやるっ!」


 小川の横に姿を現したウィリシスは、やはり、先ほどのシュバイクと同様に地面を足で抉り取っていた。恐らく、急激な速度から停止する際に、大地を踏み込んだからであろう。そして、頭上高く飛び上がったシュバイクを下から眺めると、ウィリシスもまた魔力ハールを脚へと集約させたのである。

 そして、次の瞬間には同じように飛び上がっていた。


「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


「らぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 シュバイクの身体はすでに、重力に引っ張られて落下し始めていた。そしてその勢いを持って、飛び上がってくるウィリシスを空でむかったのである。右手に握る魔鉱剣まこうけんに力をいれ、眼前に迫る敵へと向けて剣を振りぬく。ウィリシスもまた、落ちてくるシュバイクへと目掛けて剣を振りぬいた。

 そして、二人が一瞬の内に交差した時、互いの魔鉱剣に太陽の光が反射し、美しいきらめきを放った。


「ぐぅっ!」


 先に着地したのは、シュバイクの方だった。かろうじて体勢を保ち、足で大地を踏みしめる。しかし、その左のわき腹からは赤き血潮ちしおが流れ出ている。着地の衝撃と同時に、痛みが襲ってきたのだ。そして、シュバイクは自分が負けた事をさとったのである。


「よくやったな、シュバイク」


 一秒ほど送れて大地へと降り立った男は、平然とその場に立っていた。声のする方へとシュバイクが振り向くと、そこには晴れ渡った日の空のように、清々すがすがしい顔のウィリシスが居たのだ。久しぶりに見た、笑顔だった。


「やっぱり...僕の覚悟は中途半端ちゅうとはんぱだったと...ぐっ!...い、いうことですね...」


 いつものシュバイクに戻っていた。感情の高鳴たかなりに身をまかせて、我を失いかけていた先ほどの状態とは、かけ離れた顔つきである。


「何を言っているんだ?お前の一撃、見事だった。さすがな、シュバイク...ぐはっ!」


 ウィリシスは突如として、胸から大量の血飛沫ちしぶきらせながら倒れた。それは、シュバイクの斬撃が、相手の身体を引き裂いた証拠である。


「ウィ、ウィリシス兄さんっ!」


 シュバイクは魔鉱剣まこうけんを投げ捨てて、地面へと倒れこんだ男へ駆け寄った。自分の左わき腹からは血が流れ出ているにも関わらず、それを忘れているかのような動きだった。


「ぐふっ...シュバイク...やれば出来るじゃない...か」


 ウィリシスの身体は、流れ出る血の海におぼれていくようだった。傷口からあふれ出す大量の血液が、二人を包みこむように周囲へ広がっていく。


「そんな...何で...こんな事にっ。光よ、この者の傷をいやせっ!頼むから、いやしてくれっ!」


 シュバイクは治癒魔法ちゆまほうを唱えたが、すでに手遅れだった。出血の量が多すぎるのと、傷が深すぎたのだ。その傷をふさぐのでさえ、高度な技術を持つ治癒魔法の使い手でなければ無理である。そう、一瞬で判断出来るほどに、致命的ちめいてきな一撃だったのだ。


「やめろ...無駄なことは...するな。それよりも...聞くんだ、シュバイク。お前に、最後に頼みたいことが...あるんだ......」


血の気がなくなり、青白くなっていくウィリシスの顔はどこか安らいでいるように見えた。弱々しく吐き出される言葉に、シュバイクは涙を流しながら耳をかたむけた。


「何だい?何でもいってくれ!兄さんのためなら、何だってする!この命だって、捨てる事をいとわない!」


 シュバイクのブラウンの瞳には、黄金おうごんの輝きが見て取れた。ウィリシスは銀褐色の瞳から、一粒の涙をこぼしながら言った。


「お前は...やっと本当の力に目覚めるんだ...そして、お前の物語の出発点へと...戻ることになる...だから、お願いだ。俺は、お前のいない...うっ!と、時の中で大きなあやまちを...おかしてしまった...それを...繰り返させないで...くれ.....」


 ウィリシスはシュバイクに上半身を抱きかかえられながら、懸命に最後の力を振り絞っていたのである。


「何?何を?どんな過ちなんですかっ!?」


 シュバイクが問いかけると、ウィリシスは静かに答えた。


「俺は...自分の母と...父を...この手にかけてしまったんだ......だから、それを...絶対に...止めて...くれ......たの...む......」


 ウィリシスはそう言うと、事切れた。最後に言ったその言葉は、衝撃を受けるものだった。しかし、そんなことよりも、自分のために全てを投げ打ってくれたその男に、自分は何もする事が出来なかったと言う強い後悔があふれ出して来たのだ。


「ウィリシスッ!ウィリシスッ!ウィリシスッ!嫌だっ!死なないでくれっ!まだ何も、お礼も何も言えてないんだっ!何一つ、恩を返してもいないんだっ!僕には兄さんが必要なんだっ!ああああああぁぁぁぁぁっ!何でだぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 愛する者の亡骸なきがらを腕に抱き、天へと向かって叫んだ。それは己の運命をのろわざる負えないほどの、苦痛に満ちた表情だった。そしてその時、眠っていた本当の力が覚醒かくせいしたのである。

 シュバイクの背から突如として生えた大きな四本の翼は、純白の光に包まれていた。周囲にはその翼からった羽根が舞い、美しい空間を演出していた。シュバイクの身体から発した光は、天をつらき、そして世界をおおいこんだ。その力の余波よはは、十年前のものとは比べ物にならない。


 そして、その光が収まった時、二人の姿は跡形あとかたも無く消えていたのである。

第三章は、ここで終わりとなります。

ここまで読んで下さった方々、有難う御座います。


次回から、第四章へと入ります。

シュバイクの活躍と、世界の変化にご期待ください。

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